水平分業化時代のコマース基盤を目指す、Valista

eコマースサービスのValistaがモバイルビジネスの水平分業化を見据えて日本市場での展開を強化する。日本支社のトップに就任した野澤裕氏に同社の狙いを聞いた。

» 2007年05月28日 06時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 アイルランドに本拠を置くValistaは、携帯電話キャリアやISP向けに電子決済や顧客ロイヤリティ(ポイント)管理、収益分配に関する各種サービスを提供する。主な提供先は、米AOLや英Vodafone、仏France Telecomなどの欧米が中心で、国内ではNTTドコモやタイトーにサービスを提供している。

Valista日本支社の野澤裕氏

 「垂直統合型の日本のモバイルビジネスが変わろうとしている。当社のeコマースサービスを通じて、異業種の企業同士がつながるバリューチェーンを実現したい」――このほど同社日本支社長に就任した野澤裕氏は、同社の狙いについてこのように話す。

 日本は、キャリア1社でインフラから通信、サービスを含めてその仕組みの大半を提供する垂直統合型に近いビジネスモデル。モバイルコンテンツを例に見ると、ユーザーへの課金や決済手段、また事業者間での収益分配は、キャリア各社が独自に構築した仕組みを利用するケースが中心だ。

 野澤氏は、「定額制などでARPUの低下が続いてキャリア各社はコンテンツ収入に注力している。近い将来には、通信とコンテンツの収入割合が逆転すると思われるが、現在の仕組みでは無理がある」という。

 ユーザーがコンテンツに支払う代金は、キャリアが通話料金などと合わせて徴収し、後からキャリアがコンテンツプロバイダー(CP)へ支払う。基本的には1カ月ごとの徴収になるため、CPが収入を計上できるのは、ユーザーが購入しただいぶ後になる。

 キャリアが提供するeコマース基盤では、CPが独自に行うことが難しいユーザーの与信や認証、決済、アフターサービスが代行されるものの、CPはリアルタイムに収益を確定させることが難しい。また、異業種の企業と連携したポイントの相互利用のように、ユーザーサービスを展開する場合にはキャリアの動向に左右される。

 「異業種交流も進んでいるが、キャリア主導で数社が連携するケースが大半。さらにマルチな連携を実現するには、安全なサービスや商取引を行うことができるオペレーション基盤が必要だ」(野澤氏)

Valistaが展開を目指すeコマースのオペレーションプラットフォーム

 Valistaの狙うeコマースのオペレーション基盤では、さまざまな企業が連携を行うことで、顧客資産の相互活用や新たなサービス開発が可能になるという。エンドユーザーにとっても、サービスの幅広い利用や支払い方法の多様化など、メリットが生まれると野澤氏は説明している。

 総務省が主催する「モバイルビジネス研究会」やWiMAXなどの次世代無線サービスでは、垂直統合型の今の携帯電話ビジネスとは異なる水平分業型のビジネスモデルの可能性が議論されている。水平分業化が進めば、これまでモバイルビジネスと関連の薄かったさまざまな企業に参入の可能性が広がり、モバイルだけにとどまらないサービスがさらに広がるとみられる。

 野澤氏は、「今後は通信事業者やプロバイダー、放送事業者、小売、流通、さらには金融まで、さまざまな業種の連携がますます深まる。モバイルを中心にさまざまな業種がオープンに連携できるeコマース基盤を実現させていきたい」と話している。

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