「最大400倍」を可能にする4つの要素最適化から始まる、WAN高速化への道(1/2 ページ)

WAN高速化といっても、アプリケーションすべてのパフォーマンスが一様に改善されるわけではない。それぞれどこまでの高速化が期待できるのか。

» 2007年06月05日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]

本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「最適化から始まる、WAN高速化への道」でご覧になれます。


 前回述べたように、WAN高速化ソリューションが登場し、注目を浴びるようになったのはここ1、2年のことである。最近になって市場が立ち上がり始めたため、国内ではこれからといったところだ。しかし、WAN高速化ソリューションと呼ばれる製品はすでに数多く出回っている。これらは大きく2つに分類される。

 まず、特定のアプリケーションのパフォーマンスの改善を目的とした製品群がある。

 特にCIFS(Common Internet File System)を対象にしたものは「WAFS(Wide Area File Service)」と呼ばれる。次が、TCP通信全体のパフォーマンスを改善する目的のTCP最適化製品だ。FTPやHTTPなど複数のプロトコルが対象となるが、最近ではTCP最適化製品がWAFSの機能を内包している場合もあるため、ここでは、便宜上1つの分類とする。高速化したいWANの拠点間が明確に決まっている場合で、両拠点に製品を対向に置いて導入されることが多い(一部のベンダーでは、拠点側に製品を設置せずクライアントに専用ソフトウェアをインストールするものもある)。

 もう1つの分類は、アプリケーションフロントエンド(AFE)と呼ばれるもの。

 こちらは、サーバ負荷分散装置(ロードバランサ)から発展してしたものととらえることもできる。TCP最適化製品のように対向配置型でなく、本社やセンター側のサーバの前段に設置し、TCP最適化製品と同様の働きをする製品だ。ECサイトなど不特定多数のアクセスにおいて、サーバ群のパフォーマンス改善を図ることを主な目的としている。負荷分散機能に加え、SSLアクセラレーション機能など、さまざまなな機能をサポートする製品もある。本オンライン・ムックでは、前者のTCP最適化製品が解説の中心となるが、後者についても本オンライン・ムックのコラムで紹介する予定である。

図1 図1●ワールドワイドでのWAN最適化ソリューションの市場規模。2009年までに約600億円強ほどになるという

 調査会社のIDCでは、ワールドワイドでのWAN高速化/最適化ソリューションの市場規模は、2009年までに約600億円強ほどになり、今後かなり大きなマーケットになっていくと予想している(図1)。しかし、日本国内では高速なブロードバンド回線が普及していることもあって、WAN高速化ソリューションの認知はまだ遅れている。世界市場と同様のペースで拡大するかどうかは現在のところ不透明だ。

 だが前述のように、企業を取り巻く環境の変化によって、より高速なWAN環境が求められていることは明らかだ。企業システムの統合化や事業継続性(BC)などの観点からもそのニーズが顕在化してきており、ベンダーサイドもユーザーの期待の高まりを肌で感じているようだ。

 F5ネットワークスの武堂貴宏氏(シニアプロダクトマーケティングマネージャー)は「拠点間での最適化通信をするという意味では、1つの市場として立ち上がると考えている。ファイルサーバの集約化、データセンターへのリソース統合など、拠点間と本社の間で帯域をきっちり使うという用途が増えていくだろう。さらに成長していくのはリモートバックアップ分野で、そこで製品としての強みをどこまで発揮できるかがポイント」と話す。

 また、業務アプリケーションには、MS ExchangeやNotes/Domino、Oracleデータベース、ERPなど、さまざまなものが利用されている。製品にこれらのアプリケーションの特性をどのくらい落とし込めるかという点も、WAN高速化ソリューションのマーケット拡大を占う1つの指標になるだろう。

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