“俊敏性”にフォーカスするMS

企業に求められるのは俊敏性だとMSのマグリア上級副社長はいう。彼はバック・トゥ・ザ・フューチャーでその言葉を体現した。

» 2007年06月06日 12時30分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 フロリダ州オーランドで開催の第15回年次「Microsoft TechEd」カンファレンスは、Microsoftでサーバ/ツール部門のボブ・マグリア上級副社長が言うところの「People-Ready BusinessのためのダイナミックIT」に向けた同社の戦略に関する説明でキックオフした。

 しかしマグリア氏は最初に、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の1シーンをライブで再演してみせなければならなかった。同氏はドク(映画での配役はクリストファー・ロイド)を演じ、タイムマシンに改造したデロリアンを壇上で運転したのだ。

 マグリア氏はキーノートスピーチの中で、グローバルな競争やコンプライアンス(法令順守)要求など、ITプロフェッショナルが直面しているチャレンジについて述べた。またITプロフェッショナルは、モバイルデバイスやSaaS(サービスとしてのソフトウェア)などの新しい技術やコンピューティング手法を利用する方法を模索していると指摘した。

 しかしマグリア氏によると、よりダイナミックになることを目指している企業にとって必要なのはアジリティ(俊敏性)だという。

 Gartnerの副社長兼上級アナリスト、トム・ビットマン氏によると、アジリティ改善のニーズを促している要因は3つあるという――コネクティビティがくまなく浸透したこと、期待される応答時間が短縮していること、そしてリレーションシップがオンライン化・短命化していることである。

 ビットマン氏は、アジリティとは「物事の変化を感じ、その変化に効率的・効果的に対応する能力である」と説明する。

 また、アジリティを実現するには、技術だけでなく企業文化とプロセスも必要であるという。

 ビットマン氏は、今日でもIT予算の70%が現状を維持するために支出されていると指摘する。「そして複雑性がアジリティを阻んでいる」と同氏。

 「アジリティは、接続された世界におけるビジネスの主要な差別化要因になるだろう」ビットマン氏は話す。そして俊敏な企業と俊敏でない企業との間の差は拡大しつつあるという。

 「企業には可変コストモデルが必要だ」とビットマン氏は話す。このコストモデルは、使用量に基づいたコスト、ならびにサービス品質とサービスレベル保証を考慮に入れたものでなければならないという。

 さらにビットマン氏によると、アジリティを高めたいと考えている企業では、何らかのIT成熟度モデルを利用することが重要だという。同氏は、多くの企業でアジリティ改善の取り組みの妨げになっている要因も列挙した。Gartnerの調査によると、29%の企業が、アジリティとダイナミック性の改善に向けた取り組みに影響を与える主要な要因が技術的な問題であると考えている。26%の企業はプロセスを主要な要因だとしており、25%の企業は文化的/組織的な問題、20%は「そのほかの要因」を挙げている。

 ビットマン氏は、カーネギー・メロン大学ソフトウェアエンジニアリング研究所で開発されたCapability Maturity Model(CMM)for Softwareは「すべての成熟度モデルの元祖」であるとしながらも、ハイテクによって変化しているIT分野には不十分だとしている。

 企業はアジリティを達成するために修正可能な主要な要因すべてに目を向けなければならないという。「すべてに注目する必要がある。プロセスだけではなく、技術と企業文化の問題でもあるからだ。ITをコストセンターから投資センターに変えなければならない」とビットマン氏は語る。

 「リアルタイムインフラに向かって進んでいる企業は、コストの大幅な削減、サービス品質の改善、そして最も重要なメリットとして、ビジネスの差別化要因となるアジリティの面で大きな付加価値を実現している」(同氏)

 次にマグリア氏が、アプリケーション開発、サーバ、エンタープライズセキュリティ、クライアント管理といった分野でMicrosoftが送り出そうとしている新たな技術革新の波について説明した。

 MicrosoftはSQL Serverの次期リリースの名前を明らかにした。これまで「SQL Server "Katmai"」のコードネームで呼ばれてきた同製品は、「Microsoft SQL Server 2008」という名前になる。また、最初のSQL Server 2008 Community Technology Previewのリリース予定も発表された。

 さらにMicrosoftは、Visual Studioの次期バージョンを「Visual Studio 2008」(従来のコードネームは「Orcas」)という名前にしたことも明らかにした。Visual Studio 2008のβ2は今夏にリリースされる見込み。これには、開発者がVisual Studio IDE(統合開発環境)上で独自のカスタムツールを作成・配布することを可能にする新機能「Visual Studio Shell」が含まれる。

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