大手か? ニッチか? 第3の選択肢を提供する日本インフォアInterview(1/3 ページ)

SAPとOracleが覇権を争うアプリケーション市場にInforは、ユニークな買収戦略とSOA戦略を展開し、風穴を開けようとしている。3月中旬、日本法人の社長に就任した村上智氏に話を聞いた。

» 2007年06月11日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

ここ数年、Oracleが積極的な買収攻勢によって、エンタープライズアプリケーションの雄であるSAPを追い上げている。この市場は、覇権を争う大手ベンダー2社と専門性の高い大勢のニッチベンダーに二極化が進んでいるかのようだが、中堅の製造業に顧客基盤を築くInfor Global Solutionsは、ユニークな買収戦略とSOA戦略を展開し、風穴を開けようとしている。3月中旬、日本法人の社長に就任した村上智氏に話を聞いた。

村上氏は富士通、タンデム、コンパック、EMCで一貫して営業畑を歩いたあと、2003年からピープルソフトと、その買収に伴い日本オラクルインフォメーションシステムズでエンタープライズアプリケーション事業を統括した

ITmedia 3月中旬の社長就任ということで、まだ日も浅いのですが、顧客と接する中で彼らが何を求めているのか見えてきましたか。

村上 インフォアは、中堅の製造業を中心とした世界の7万社にパッケージソリューションを提供しており、この日本市場においても保守契約社数は1000を超えています。しかも、大半は中核業務にインフォアのパッケージを採用しており、SAPやオラクルといった競合に遜色のない強固な顧客基盤があると言っていいでしょう。

 ご存じのように世界は単一市場化しています。そのため、日本の製造業もグローバル化を積極的に進めていますが、その一方で差別化を生むコアの機能は国内の拠点に残したいとも考えています。

 こうした中、われわれの顧客企業は、中堅といえどもグローバルサプライチェーンの構築に迫られています。幸い、それを実現できるパッケージソリューションというのは、そもそもそれほどあるわけではありません。インフォアであれば、顧客の要求を満たし、ソリューションの導入やサポートもグローバルで展開できると考えています。

ITmedia グローバル化も課題ですが、日本の企業もいよいよ日本版SOX法への対応を迫られています。

村上 日本版SOX法(金融商品取引法)への対応だけを見ると、大きなリスクが存在し、それを統制する重要なキーコントロールを割り出すための「文書化」が大半なわけですが、それで終わるわけではありません。監査は毎年、繰り返し行われるわけで、そのデータが生まれている製造現場の業務プロセスを考えなければなりません。

 また、製造現場には、短納期化、在庫回転率の改善、原価率の低減といった基本的なテーマがありますが、最近では「安全」に関する法規制にも企業は目を配らなければならなくなっています。安全性に対する消費者の信頼を裏切ったために、企業の存立そのものが危うくなるケースが相次いだからです。

 インフォアのパッケージソリューションは、グローバル製品として、こうした領域も視野に入れて製品化されています。このあたりも、本来持っている価値を日本市場でも訴求していきたいと考えています。

買収アプリも機能強化は止めない

ITmedia ERPだけを見ても、MAPICS(マピックス)やSSAグローバルのBPCS(ビーピックス)、そしてその傘下のBaan(バーン)といった、さまざまな製造業向けERPを買収によって獲得しています。インフォアの戦略について教えてください。

村上 買収を不安と感じる日本の顧客も多いかもしれませんが、われわれは既存の製品の機能強化を止めることはありません。新しいコードを書いてスイート製品を出荷する予定もありません。SOA(サービス指向アーキテクチャー)のアプローチによって統合を図りながら、個々の製品を発展させていくのがインフォアの戦略です。

 不安ではなく、ソフトウェアの購入先の財務基盤がより良くなり、さらにSOA基盤でシステムが柔軟になると考えてください。元々はEXE Technologiesの倉庫管理システムだったEXceed(エクシード)の顧客が、同じSOA基盤の上でERPを導入・連携できるようになります。

 インフォアは、SOAアプローチによってポートフォリオを拡充する買収戦略を取った最初のベンダーです。2002年から、その戦略に基づき、顧客のために必要と思われる買収を小刻みに継続してきました。もちろん、一貫して中堅の製造業をターゲットにしていることに変わりはありません。

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