SOAベースの次期IT戦略でさらなる成長を目指すエンタープライズSOAで次世代ITシステムの構築に挑むオリンパス

SAP導入に成功したオリンパスが次に求めたのは、戦略的な事業変化に強いシステムの姿だ。業務プロセスの変更やデータの統合管理へ柔軟に対応できるシステムを実現するため、SOAをベースとしたIT戦略を選択、そしてSAP ERP導入に豊富な経験を持つ東洋ビジネスエンジニアリングの協力を得て検証プロジェクトを進め、その指針を明確にすることでさらなる飛躍を試みる。

» 2007年06月18日 10時00分 公開
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最新のSOA技術が次期IT戦略を担う

 オリンパスの2002年経営基本計画で掲げられた、全社的なSAP ERP導入は予定通りに実現できた。そして、4年間に渡るこのプロジェクトで得たノウハウや経験から、次期IT戦略の姿も徐々に見えてくる。それは「経営の期待に応える変化対応力とスピード感のあるIT」であり、その実現のために「システムの統合化と構造化」というキーワードが2006年中期経営基本計画に盛り込まれた。

 激しい事業環境の変化にも柔軟に対応できる力。ERPやほかのシステムの統合。海外拠点との密接な連携。これらを現実にするため、次期IT戦略では場当たり的に作ったシステムではなく、構造化・統合化されたシステムが求められる。

 そのようなシステムをどう構築していけばよいのか? 重要となるのが、SOA的な考え方の徹底だ。オリンパスのERP導入プロジェクトでは、修理サービスに関してはゼロから業務プロセスを構築したことで、かなりSOA的な思想に基づいていると言える。しかし、そのほかのシステムに関してはSOAが徹底されているとは言い難い。このようなシステムは、業務プロセスの変更を迫られたときに柔軟な対応ができない可能性が高い。

 また、オリンパスでは海外拠点でもERPの導入を進めているが、この連携も課題だ。現在のところ、海外拠点とのデータやり取りはバッチで行っているが、これでは経営状況をリアルタイムに把握できない。

 アドオンを増やすのではなく、もっと最新のSOA関連技術を活用すべきだ。そう考えたオリンパス IT改革推進部部長の北村正仁氏は、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)に協力を求めた。B-EN-GはSAPの最新技術に精通しており、SAP NetWeaver(以下、NetWeaver)上でのシステム構築にも豊富なノウハウの蓄積がある。NetWeaverを利用することで、オリンパスが次期IT戦略で目指す目標をどの程度達成できるか、検証することになった。

 検証する項目は、大きく2つに分けられる。1つは業務プロセスの変更に対する対応力、もう1つがマスターデータの統合管理だ。前者では、プロセス変更があった場合にも、快適な操作性を提供できることが求められる。つまり、操作性、変化対応力、マスターデータ統合管理という3つのシナリオについて検証が行われることになった。そして、得られた検証結果を今後のシステムの全体設計に反映しようというのである。検証はSAP ERP 6.0だけでなく、旧バージョンのSAP R/3 4.6Cも含むという一般的なシチュエーションを想定して行われた。

Webサービスを呼び出すことで変化に強く快適なUIを構築

 まず最初の操作性の検証では、WebDynproによる受注登録機能の実装がなされた。データの入力時に項目を自動提案したり、コード検索やエラーの登録前チェックを行えるようにする。一般的に、高い操作性を実現しようとした場合、よりクライアントサイドに近いところでユーザーインタフェースを作り込むことが多い。WebAS上にエラーチェックのロジックやデータベースを持ったWebアプリケーションを作り込む形だ。

Photo 東洋ビジネスエンジニアリング 執行役員 ソリューション事業本部 副事業本部長兼営業本部長 古田英樹氏

 しかし、ここに問題があった。B-EN-Gのソリューション事業本部で営業本部長を務める古田英樹氏によれば、このように作り込んでしまうと、業務プロセスに変更があった際に、Webアプリケーションを作り直さなければならなくなってしまうという。

浅井 そうした問題を踏まえて、今回の検証ではどのような仕組みを取ったのか?

古田 検証プロジェクトでは、WebDynproで作ったWebアプリケーションから、WebサービスとしてERP 6.0の機能を呼び出すようにしました。受注データのチェックなどもすべてERP 6.0の機能を使い、WebAS上にはデータベースも保持しません。その結果、見た目はWebアプリケーションを作り込んだ場合と同じですが、本質的な変化対応力という観点から見ると、圧倒的に優れたものに仕上がりました。

浅井 しかし、Webサービスでエラーチェックなどの機能を実装するとなると、動作速度に問題はなかったか?

古田 一般的には、Webサービスを呼び出すとレスポンスが悪くなると言われています。ところが、われわれも驚いたことに、Webサービスの呼び出しを使っても体感できるほどの動作速度の違いはありませんでした。

SAP NetWeaver Exchange Infrastructureを使って、柔軟なプロセス制御を実現

 次の変化対応力の検証では、SAP NetWeaver Exchange Infrastructure(以下、XI)が大きな役割を果たした。まず、2つのコンポーネント間で単にデータを受け渡すのではなく、XIを用いてプロセス連携を行ったのである。

Photo 東洋ビジネスエンジニアリング コンサルタント ソリューション事業本部 コンサルティング3部 立川隆浩氏

古田 シナリオでは、本社で受注データを入力した場合、在庫がなければ工場に発注するという想定で実装を行いました。入力データが来ると、それをXIが発注データとして自動生成し、もう片方のサービスに受注データとして入れるのです。

 さらに、XIを用いることで、業務プロセスを柔軟に組み替えることが可能になる。従来であれば、ワークフローはアプリケーション内に書き込んでしまうのが普通だったが、これだと変更があるたびに、アプリケーションの大幅な修正が必要になる。一方、XIにプロセスの制御を任せるとどうなるか? B -EN-Gのソリューション事業本部でコンサルティングを担当する立川隆浩氏によれば、例えば与信、受注登録、在庫引当という機能をそれぞれサービスとしてまとめておき、XIから呼び出すことができるようになるという。

立川 受注時に与信をかける業務もあれば、出荷時にかける業務もあります。XIのプロセス制御で並び方を変えるだけで、お客様のバリエーションに対応できるわけです。

 オリンパスBPIプロジェクトの修理サービスシステム(前編参照)では、ERPの機能を細かく分割して、実際の業務に割り当てていった。今回は、こうして分割された機能をある程度の固まりとしてXI上で組み合わせて、プロセスとして汎用的に呼び出せるようにしたと言える。こうすることで、業務プロセスの順番が入れ替わったり、追加があった場合でも柔軟に対応できるようになり、開発の手間が大きく減らせたという。

SAP NetWeaver Master Data Managementによる先進的なマスターデータの統合管理に挑戦

 3つ目の検証シナリオ、マスターデータの統合管理ではSAP NetWeaver Master Data Management(以下、MDM)が使われた。MDMの主な役割は、マスターデータの「同期」「変換」「統合」だが、すべてのマスターデータの統合にチャレンジしたのである。

浅井 このチャレンジはかなり先進的で、成功した先行事例もまだほとんどないのでは?

立川 結果としては、現段階ではMDMによるマスターデータの完全な統合は難しいという結論になりました。ERP側の品目マスターには莫大な数の項目があり、それぞれの項目間には密接な相互関係性があります。ある項目が特定の値を取ると、別の項目の取り得る値が制限されるといった関係です。通常はERPにカスタマイズを行っているため、項目間の関係はさらに複雑になっています。完全なマスターデータ統合を行うには、こうしたERP側で行われている品目チェックと同等の機能をMDM上に構築する必要があるのですが、作業量が膨大になりすぎて構築しきれなかったのです。

 もっとも、この検証は理想型を目指したものであり、現時点でもMDMのメリットを享受している事例には事欠かない。汎用性の高いマスターをMDMで管理し、それを個々のERPに渡すということを実践している企業もある。例えば、150カ国で事業を展開する石油メジャーのシェブロンは、100種類の人事属性情報をMDM上で管理しているが、細かな給与データなどはERP側で持つようにしているそうだ。

顧客視点にプロセスを作っていける時代がついに到来

Photo オリンパス コーポレートセンター IT統括本部 IT改革推進部 IT基盤技術部 部長 北村正仁氏

 上記3つの検証プロジェクトで得られた結果は、オリンパスの今後のシステム構築に反映されていく予定になっている。WebDynproによるユーザーインタフェースについては、すでに受注登録の画面などに取り込まれているという。

北村 EA(Enterprise Architecture)やSOAという言葉に、何か特別なものという印象を持たれる方は多いと思います。しかし、私の理解では当たり前のことをきちんとやるだけのこと。顧客視点で業務プロセスを見直し、システムを作ろうとすれば自ずとそうなっていくものなのです。モジュールを組み合わせて、理想的なプロセスを作っていける技術がようやく当たり前の時代になってきました。

企業紹介:東洋ビジネスエンジニアリング株式会社(B-EN-G)

東洋ビジネスエンジニアリング株式会社は、企業経営および情報通信システムのコンサルティング、システム開発・販売を中心に事業を展開。SAP ERPの導入には定評がある。2006年10月、同社はエンタープライズSOAコンピテンスセンターを設立。SAPジャパンのエンタープライズSOA推進室と緊密な協力関係を結び、これまで培ったノウハウを用いて、顧客のビジネス支援解決を行っている。

http://www.to-be.co.jp/


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提供:SAPジャパン株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年7月18日