WAN高速化の導入で失敗しない方法――システム構成編最適化から始まる、WAN高速化への道(1/3 ページ)

自社の要件に合致したWAN高速化製品を選んだら、いよいよ導入だ。ここでは、5つのシステム構成例を挙げて、それぞれの長所と短所を明らかにする。

» 2007年06月21日 07時30分 公開
[岩本直幸,ITmedia]

本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「最適化から始まる、WAN高速化への道」でご覧になれます。



岩本直幸(ネットマークス)


 今回は、WAN高速化装置の導入の重要なステップとなる、効果的な導入構成について事例を交えて解説しよう。

 ここでは、主要な導入構成として、

(1)両拠点インパス(In-Path)構成

(2)両拠点アウトオブパス(Out-Of-Path)構成

(3)センター側のみアウトオブパス構成(小規模拠点向けの構成)

(4)冗長回線用インパス構成

(5)非対称ネットワーク用インパス構成

という5つの構成を例にとる。

 まず、(1)の両拠点インパス構成の構成は、WAN高速化装置の導入では一般的な構成と言える。WANルータとスイッチの間に挟み込むように導入する。WAN高速化装置のコンセプトが「既存のネットワークや既存のアプリケーションに変更を加えずにアプリケーションの高速化を行うこと」であるため、インパス構成で導入するケースがほとんどだ。インパス構成であれば両拠点からの通信がそれぞれ高速化されるので、センター統合されていない環境であっても拠点間で使用されているアプリケーションを高速化することができる。インパス構成ができるWAN高速化装置に共通しているのが、バイパスカードの存在だ。

 バイパスカードには、1枚のカードにWAN側ポートとLAN側ポートという2種類のポートが用意されている。ルータとスイッチを結んでいるケーブルを外し、外したケーブルをWAN高速化装置のLAN側に差し替え、別途用意したクロスケーブルをWAN側ポートとルータ間で使用すれば、ちょうどルータとスイッチの間にWAN高速化装置が挟まる構成となり、装置がダウンした際にはルータとスイッチを物理的に直結することができる。つまり、WAN高速化装置が動作している場合にはブリッジとして動作し、装置がダウンした際にはルータとスイッチが直結される。この構成では、すべての通信がWAN高速化装置を通過するため、装置のQoS(サービス品質)機能を使うことでWAN帯域をコントロールすることができる。

図1 図1●インパス構成と論理インパス構成

 インパス構成に関しては、どのメーカーも対応してきており、導入構成を検討する上で最有力候補となる。この構成における導入時の注意点は、装置間のインタフェース設定に間違いがないかを確認することだ。具体的には、ルータとスイッチのSpeed/Duplexが100/fullの固定となっていた場合、当然ながらWAN高速化装置のSpeed/Duplexも固定にしなければならない。インタフェース設定の間違いによって性能が大幅に劣化することがあり、WAN高速化装置を導入しても効果が得られないケースも発生し得る。

 インパス構成のメリットは、導入が容易でWAN高速化装置の障害時にはバイパス機能により通信を継続させることができる点だ。逆にデメリットは、装置交換時に必ずネットワーク断が発生する点だろう。ちなみに、WAN高速化装置の故障時には高速化が行えなくなるため、装置の冗長構成を検討することもあるが、費用面を考慮すると、壊れても通信は継続するので冗長構成にはしないケースがほとんどだ。だが回線が非常に細く、装置故障時にキャッシュ効果を落としたくない場合には、インパス構成で冗長構成の可能な製品を検討したい。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ