「金」だけではないIT幹部の引き留め方策

IT幹部の転職理由は給与よりもむしろ、職場環境にあるようだ。

» 2007年06月29日 11時18分 公開
[Deborah Perelman,eWEEK]
eWEEK

 企業にとって、IT幹部を引き留めることは、IT担当社員を補充するのが難しいのと同じくらい難しいことが分かった。

 しかし、幹部らは(現金などの)好待遇を求めるよりも、企業のファイアウォールの向こう側でのさらなる充実を望んでいる。

 「お金だけでは職場での幸せは得られない。幹部らは、自分の仕事が有意義だと思え、専門的なコンピテンシーを強化でき、昇進の機会やチャレンジを見つけられる環境を好む」と幹部スカウト会社ExecuNetの創設者でCEOのデイブ・オプトン氏は言う。

 同氏は、ExecuNetの調査で、幹部が会社から会社へと渡り歩く「ラバーシーリング」の証拠が示されたと語る。

 同社の15回目の年次報告書「Job Market Intelligence」によると、入社からわずか14カ月で興奮が薄れ、不満が出てくるという。調査回答者の35%は、新しい仕事に就いてから早くて10カ月で心が離れたように感じると答えた。

 「長期雇用の時代ははるか遠い昔だ」(オプトン氏)

 リクルーターや求職者には朗報だが、雇用主には厄介だ。

 「幹部がおよそ35カ月しかとどまらず、しかも14カ月後に幻滅するのであれば、平均で1年半あまりで、彼らはもっといい仕事のことを考え始め、新たな機会を受け入れるようになる」とオプトン氏。

 優秀な人材を引き留めておきたい企業は、給与以外の要因に目を向けるべきだ。

 幹部の39%は、仕事を辞める主な理由として「自身の成長」あるいはその欠如を挙げている。13.2%は昇進の機会が限られていること、12.9%はチャレンジがないこと挙げ、6.5%はもっと経営責任のある仕事がしたかったからとしている。

 20%のケースで、文化的なミスマッチや上司とそりが合わないなど、職場の雰囲気が倦怠の理由として挙がった。19%は、特にストレスや仕事と生活のバランスの点で、望んでいたライフスタイルと違っていたと答えた。

 しかし、給与の不満を挙げたのはわずか9%だった。

 ExecuNetの幹部キャリア管理・ネットワーキングサービス担当副社長ローリン・フランゾニ氏は、幹部は安定を期待することから、一生涯の安定を避ける方へ移ってきたと話す。

 「幹部職を見てみると、IBMがレイオフに走る前の時代の安定から、1990年代の不安定、今の機動性へと進んでいるのが分かる。今は、資格を持った上級幹部は、自分が自身のキャリアを支配しており、自分に最も有意義な機会を選べると分かっている」(同氏)

 今回の報告書は、2149人の幹部と350人以上のヘッドハンティング会社や企業の人材リクルーターを対象に行われた。

 回答者の26%は、CEO、COO(最高執行責任者)、共同経営者あるいは会長の肩書きを持っていた。20%はそのほかの最高責任者あるいは上級副社長、28%は副社長、26%は取締役だった。約60%が高等教育の学位を持ち、平均年齢は48.5歳、平均年収(給与・賞与含む)は22万1000ドル。

 2007年に幹部が同じ会社にとどまった期間は平均で3.4年、2005年の3.6年よりも短くなっている。同じ業界にとどまっている期間は、2007年は4.4年、2005年の5年から減少している。1つの職にとどまった期間は、2007年は平均で2.9年と、2.8年だった2005年よりもわずかに上昇している。

 1社に在職した期間は平均で3年超だったという。

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