プロセス思考が世界の主流になりつつある中、なぜ日本はBPMに乗り遅れたのか。諸説あるものの、日本の企業文化にはプロセスがなじまないという見方が有力だ。プロセス組織にしている例が極めて少ないのも事実。BPR熱狂時代も、日本は他国よりかなり遅れて始めた経緯があった。
「日本の取り組みが遅れたのは、保守的な企業風土が影響していると思われる。BPMへの取り組みには、合理的であれば(他社に関係なく)やってみようという考え方が必要であり、業界横並びを好む典型的日本企業では難しい」と分析するのは、日本ユニシスのビジネス・イノベーション・オフィスで統括パートナーを務める日沖博道氏だ。日沖氏は、同社のBPMコンサルティングユニットを率いる立場にある。
日本では、小集団のカイゼン活動などが企業文化として定着しているが、プロセスの切り口ではない場合も多く、必ずしも全社指導で行われているわけでもない。それに対し、BPMは組織横断のプロジェクトで実行することが大前提となる。日沖氏が、「トップダウンの強い意志が無ければ本格的なBPMは成功しない」と指摘するように、強力な決定権を持つ欧米の経営者に比べ、合意形成を重んじる日本での浸透が遅れたのもうなずける。欧米の企業では、全事業にわたってビジネスプロセスの見直しが行われており、大手企業を中心にかなりの効果を上げている。既に数サイクルを実施し、検証して更なる改善フェーズに進んでいる企業も多いという。
普及の背景には、ERP導入比率の高さも大きく関係しているようだ。ERPパッケージを入れ、それを基盤として業務をプロセスの見方で変えていく。ユーザー企業は自社のプロセスをどのように変えたいのかをリクエストし、それに合わせてパッケージベンダー側も改善し、相乗効果が上がっていく。
一方、ERPパッケージの導入率が低い日本では、専門パッケージによって分断されたシステムからつなごうとしている例が多いという。
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