「iPhoneとXboxとラスベガス」から企業が学べること

誰もが「バージョン1」に飛びついたiPhone、Xboxの信頼性問題に10億ドルの答えを出したMicrosoft、ゆで上がったラスベガス――企業はそこから何を学べるだろうか。

» 2007年07月17日 07時00分 公開
[Eric Lundquist,eWEEK]
eWEEK

 企業コンピューティングのB2Bの世界を、何かと騒がしい家電の世界に結びつけて考えるのは時に拡大解釈にも見える。だが今のように、企業のIT幹部がほかのハイテク分野の浮かれ騒ぎから驚くほど多くのことを学べるときもある。

 例えばiPhone。企業コンピューティングに不変の法則はあまりないが、「バージョン1は買わない」は、多くの傷跡だらけの企業IT幹部が心に刻んでいる法則だ。バージョン1を買えば、顧客ではなくベンダーのマーケティング・研究開発部門の延長になってしまう。AppleのiPhoneでは今まさにそれが起きている。

 LISA、Newton、Pippinを覚えていない人たちが、iPhoneのために並び、キャリアに加入した。わたしはiPhoneが気に入っている。画期的な製品だ。次のバージョンでは、Appleに本体を送ってバッテリーを換えてもらうのではなく、自分で交換できるようになるだろう。それに次のバージョンでは、AppleとAT&Tは今の苦痛なほどに遅いネットワーク(わたしなら今のEDGEよりもモデムに賭ける)の代わりに、3Gネットワークに対応してくれるだろう。2年間1社のキャリアに縛り付けられるのではなく、キャリアを変更できるようになるだろうし、Wi-Fi接続を使った通話もできるようになるだろう。

 iPhoneとAppleを褒めたたえるメールを送ってくる前に、もう一度言わせてくれ。iPhoneが向かっている方向は気に入っている。ただ、iPhoneに500ドル、サービスプランに(一番安くて)毎月60ドルを払う前に、年末商戦ごろに出てくるバージョン2を待った方がいいと思う。

 行列と言えば、皆さんに思い出させるつもりはないが、Xboxの行列に並んだときに場所を譲った話を2005年11月に書いたことがある。まだ答えの出ていない信頼性の問題――特に新しい液冷技術の使い方について――があると思ったからだった。Microsoftは7月5日に、Xboxの信頼性の問題に10億ドルの答えを出した。Microsoftの大失態を報じたMTVのニュースにはこう書かれている。「何カ月もわたって消費者からXbox 360の故障に関する苦情が寄せられた結果、Microsoftは7月5日、これまでに販売したすべてのXbox 360の保証期間を延長し、最も報告の多い不具合、いわゆる「死のレッドリング」を完全に修理することを発表した。同社は、この新しい方針により10億5000万〜11億5000万ドルの費用が発生するとしている」。ただ1つ残念なのは、「死のレッドリング」という表現を作り出したのがわたしではなかったことだ。

 ブログを見て回ると、Xboxを冷やすためのありとあらゆる試みが見つかるだろう。冷たいタオルで包むとか。古典的だが、二日酔いを和らげてくれる氷枕はどうだろうか? いずれにしても、10億ドルはMicrosoftにとって大したことじゃない。

 ここで企業が学ぶべき教訓は、研究段階で機能しても、市場で導入されたときに大きな不具合が出る技術には気をつけろということだ。例えば2倍のパワーと半分のコストを約束した素晴らしい技術が機能しない――いくらつぎ込んでも、何人が動かそうと努力しても――と真っ先に気づく人間にはなりたくないものだ。ベンダーは失敗したことを認めたがらない。ソフトウェアでは、過去のミスを修正した別のバージョンのソフトを売ろうとすることで失敗を認める。新しい技術を導入する前に、独自に新しいシステムや新技術を試験導入して徹底的に調べることには価値がある。

 そしてラスベガス。ラスベガスが企業コンピューティングとどう関係あるんだろうか?すべてのコンピューティングプロジェクトはサイコロを振るようなものだと言う人もいるだろうが、わたしが考えているのは、最近STRIP(ラスベガスの目抜き通り)を襲った華氏115度(摂氏46度)の熱波のことだ。地球温暖化は現実のものではないかもしれない――わたしがこの問題を取り上げるたびに、多くの人はそう言う。だが115度にもなれば、人々は涼しくしようと多額のお金を投じるだろう。115度という記録を見て、サーバがメルトダウンして会社がメルトダウンする前に、サーバルームを再編成する方法を探すことを思い出そう。

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