企業が抱える3すくみの状態を解消する秘策とはエンタープライズ2.0を導入せよ

先日開催されたあるセミナーで、中内学園の福井誠氏は、企業は現在抱えている問題を解決するためにエンタープライズ2.0を導入すべきだと主張した。

» 2007年07月22日 19時07分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 最近エンタープライズ2.0という言葉を耳にしたことがある人も多いだろう。しかし、人や企業によって意味のとらえ方が異なるなど、その言葉にはティム・オライリーによるWeb 2.0の定義のような明確なものはまだ存在しない。

 中内学園流通科学研究所の福井誠氏は、先日コクヨが主催した「SaaSがワークスタイルに与える影響」と題したセミナーで、エンタープライズ2.0の役割と効果について講演した。同氏はエンタープライズ2.0について「Web 2.0のサービスや技術を導入して社員一人ひとりがパフォーマンスを発揮できる環境をつくり、企業を活性化させるという全体的な動き」と述べ、企業が成長することと目的を達成することの意味合いを強め、独自に定義してみせた。

image 「エンタープライズ2.0はWeb 2.0のコンセプトを企業に導入することといわれるが、そんな単純な話ではない」と説明する福井氏

 現在、企業の中でどういう問題が起きているのか。それを見出すために同氏は、マネジメント層、IT部門、ユーザーの3つの立場を考える必要があると話す。具体的には、マネジメント層は内部統制などのミッションを遂行するため、制度に縛られた後ろ向きの投資をせざるを得ない。また、IT部門はシステムに対するユーザーからの要求に答えようとする一方で、マネジメント層からレガシーシステムを運用するよう要求されるというジレンマを抱えている。そして、ユーザーは既存のシステムという貧しい環境に置かれているにもかかわらず、マネジメント層から創造性を発揮するよう求められている。福井氏はこのように述べ、「企業内は3すくみの状態にある」と指摘した。

image 企業内では各立場にある人が効果的に役割を果たせず、それぞれの間で流動性が失われているという

 「この問題を解決するためにエンタープライズ2.0を導入すべきではないか」と福井氏は続けた。例えば、企業内における情報共有の土台を築くために社内SNSやWikiなどを有効活用すれば、IT部門はユーザーの要求を取り入れた環境を構築できる。また、企業のエンドユーザーは仕事で蓄積した情報を基にさまざまなことを発案し、マネジメント層に提案できる。マネジメント層はビジネスプロセスをトップダウンでIT部門に提示したり、ユーザーから拾い上げたデータを有効活用できる。こうして3すくみの問題は解消できるというのである。

 福井氏の主張は、それぞれの立場の間で風通しを良くし、意思疎通の循環を生むことが企業の活性化につながるということ。「エンタープライズ2.0の導入は経営の視点で見ると分かりやすい。3者間の循環を実現する情報共有こそエンタープライズ2.0の役割ではないか」(福井氏)。

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