「W-ZERO3でユビキタスと経費節減」、欲張りすぎて撃沈?システム管理の“ここがヘンだよ”(3/3 ページ)

» 2007年07月24日 07時00分 公開
[池田冬彦,ITmedia]
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機械を買っただけで命題はクリアしない

 W-ZERO3を導入して半年。その潜在能力はまだ生かされているとは言えない。「これで本当に会社のコストダウンにつながるのだろうか?」「電話経費削減がメインならW-ZERO3[es]の方が電話として使いやすい。機械をどう使いこなして真の投資効果につなげるか、といった議論がないことこそ問題なのでは?」「ただ買って社員に与えるだけではダメ」という声が上がってきた。

 情報システム部門ではこれをきっかけに、これからのIT政策の中核部門として何をなすべきかを考え始めている。社内IT環境がどのようなリスクにさらされているのか。その中で、ベストソリューションは何なのか。昨今のコンプライアンスの要求を満たしつつ、最も現場のパフォーマンスを上げるソリューションは何か。考えることは山ほどある。

 もはやこれは、情報システム部だけの手には負えない問題だ。大前提となるのは、経営トップ/総務部門、情報システム部門、そして現場とのコミュニケーションだ。経費削減を強引に推し進めようとしても、現状を無視したトップダウンでは効果が薄い。これからの企業ITの理想像を三位一体でつくり上げ、どうしたら本当の投資効果が出せるのかを検討していくべきだろう。

総括:A社に期待されるアクション

・本当にトップダウンが有効だったのか?

経営トップ・総務/情シス/現場の三位一体で業務改革のためのIT推進という視点で社内横断的なパイプをつくるのが理想。まずは情報システム部門主導で、現場、経営層とのコミュニケーションのチャンネルを、現実的な方策の中で徐々に固めていく。

・当初の狙いに最適な端末やシステムだったのか?

その動きとともに、機器選定、ソフトウェア、ネットワークサービスなどを吟味し、電話コストを減らすというミッションを実現するキラーデバイスが何かを選定する。

・パイロット導入の方法は正しかったのか?

おざなりのパイロット導入ではなく、現場ワークフローを十分に理解した上で、社員のアクティビティをも含む効果計測を厳密に行い、次なる布石へとつなげていく。現状の導入実績については、本導入ではなくパイロット導入によるものと位置づけ、現場、経営層との連絡を密にしてしっかりとプロジェクトを進めていく。

・社員へのアプローチは十分か?

社員のPCスキルの向上策をベースに、新システムのフォロー体制を計画的に行うことが必要。命題は、PCに詳しい社員への負荷をいかに軽減するかということ。同時に今後は、コンプライアンスにかかる十分な社内教育体制が求められる。また、社員のITスキルを勘案し、専用メニューのつくり込みやアプリケーションのインストールなども行う。


 こうした課題の検討は、今後のIT戦略をつくる上で絶好のチャンスである。現場では、そんな気運も高まりつつある。社内で一番IT化が遅れていた営業部門は今、ようやく大きなIT化の波にさらされようとしている。いわば、現状のW-ZERO3をパイロット導入と位置づけ、徹底的にダメ出しをし、IT支援による理想のワークフローをつくり上げる第一歩だ。それにかかる作業は、情報システム部がIT推進の要として機能するための第一歩でもあり、今後のシステム情報部門の地位向上にもつながると言えるだろう。

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