いまなぜグリッド・コンピューティングなのか?――IBMのアラン・ガネック氏に聞く(2/3 ページ)

» 2007年07月25日 07時00分 公開
[米田聡,アイティセレクト]

 しかし、グリッド・コンピューティングを実際に使ってみると、これはエンタープライズにも応用できる、ということが分かってきました。一方、90年代に入ると、エンタープライズ分野でもコミュニティーと協力して研究・開発を進めていこうという動きがでてきました。まさに、グリッド・コンピューティングがビジネスの分野に広がり始める、よい時期になったのだと思います。

――グリッド・コンピューティングで、高い信頼性を持つシステムが構築できるのはなぜでしょうか?

ガネック システムに変更が施されたとき、それがシステムダウンの原因になるということが往々にしてあります。しかし、要求される処理能力が急速に拡大を続けているためシステムに変更を加えないわけにはいきません。

 一枚岩的なシステムでは、もはや現在の状況には対応できません。そこで、グリッドを用いて、柔軟に拡張できるシステムに注目が集まっているのです。

 IBMはWebSphereを用いたグリッド・インフラストラクチャーはアプリケーションの拡大に柔軟に対応でき、また問題が発生したときに自動的に対応できるオートノミック・コンピューティングの技術を用いることで、高可用性を実現しています。

――グリッド・コンピューティングには利点がある一方で、開発の困難さや、信頼性検証の難しさといった問題もあります。IBMはこれらの問題に対して、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

ガネック 開発環境に関してわれわれは、1社だけが独占的にコントロールするような物であってはならないと考えています。開発コミュニティーを構成する開発者やベンダー、研究者、大学などが一丸となって開発環境を提供していかなければなりません。

 そこで、IBMはEclipse.orgというプロジェクトをスタートさせました。ご存じのようにEclipseはもともとIBMの開発環境でしたが、現在はオープンな開発環境のスタンダードに成長しています。

 さらにIBMは、開発ツールとしてRational(SOAのための総合設計・開発ツール、品質管理ソリューション)を持っています。また、ランタイム環境として「WebSphere」という製品があり、さらに分散型管理ツールTivoli(オートノミック・コンピューティングの技術を応用した分散型システム管理ソリューション)を擁しています。それがわれわれの強みだと考えています。

――グリッド・コンピューティングと仮想化を応用して運用コストを劇的に削減させた金融機関の例が紹介されました。仮想化とグリッド・コンピューティングを用いる利点はどこにあるのでしょうか?

ガネック 例に挙げた金融機関では何千ものUNIXオペレーティングシステムで稼働するパソコンが導入されていましたが、利用率が低く、管理が複雑という問題がありました。

 「仮想化」の技術を使うことによって複数のワークロードを1台のサーバに割り当てることが可能になります。いままで複数のパソコンで対応していたワークロードを1台のサーバに集約できますから、結果としてCPU利用率を上げることができます。また、不必要なタスクを見つけ出すことも容易になりました。

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