トップを当てにしないIT導入企業にはびこる間違いだらけのIT経営(1/2 ページ)

IT導入の成功の条件の1つに「トップの適切な関与」がある。しかし現実にはその条件がいつも満たされるとは限らない。

» 2007年07月26日 10時46分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト編集部]

組織を疲弊させるエネルギーの無駄づかい

 企業のIT導入を成功させるための条件が、幾つかある。しかしそれらは、必須なのだろうか。もしかすると、それらは望んでも最初から無理な話であり、しかも建前の議論に過ぎないのではないだろうか。こう考えたとき、実態に合わせて考え、行動することも必要かもしれない。

 すなわち「成功の条件」を頭から当てにしないで、成功へ持っていく方法だってあるのではないか、ということだ。その方が成功の条件を整えるための無駄なエネルギーを必要としないし、スピードアップもできるかもしれない。少しの間考えてみたい。今回は、「トップの適切な関与」を取り上げる。経営のトップがITに適切にかかわることは、導入成功の必須条件であることには変りはない。しかし、現実にはそうもいかないケースが山ほどある。

トップの関与は吉か凶か実例に見るかかわり方

 IT導入を成功させるためには「トップの適切な関与」が必須であることは、随所で洪水のごとく説かれている。筆者自身も、その重要性を機会あるごとに終始一貫主張してきた。

 確かに、IT導入に際してトップが大きな関心を持って適切な関与をすれば、システム導入プロジェクトに社内から最適メンバーが否応なしに供出されるだろうし、社内の意識改革もスムーズに進み、仮に新しい業務のやり方に抵抗する勢力がいたとしても力ずくでつぶすことができるだろう。またシステム構築側がユーザーの意見を十分に聞かざるを得ないだろうし、そして業務改革も徹底して行うことができるはずだ。さらに何よりも、トップが適切に関与することによって、IT導入に戦略的に取り組むことができる。

 逆にトップが思い込みによる間違った関与や、細部に入りすぎた関与など不適切な関与をすると、あるいはまったく無関心で関与を避けると、IT導入は大体失敗する。

 事実、トップが積極的に適切な関与をした結果IT導入に成功した例は見られる。ある中堅商社は10数年前多額の有利子負債を抱えて経営危機にあった。社長が陣頭指揮で、業務プロセスやシステムを詳細に見直し、会計・販売・物流・営業のシステムを再構築し、経営を立て直したのは好例である。

 一方、トップが無関心だったためにIT導入に失敗した例は、枚挙に暇がない。

 また、トップが細部にわたって的を外れた関与をしたために失敗した例も少なくない。これは古い話だが代表的な例として、ある食品会社の例がある。物流情報システム構築を目指した同社は、社長の意向が強過ぎてユーザー意見を取り入れず、またバッチ処理で十分用をなすのに、社長の意向でデータの即時性を求め過ぎてコンピュータ容量を増大させ、システム導入の大幅遅延と投資金額の大幅増を招いた。

 いずれのケースも雑誌に紹介されるような、代表例だが、これに類した身近な例は数え切れないほどある。

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