通信・ITが融合する新しいビジネスモデルの創造に向け、世界的なソフトウェア開発拠点として知られるアイルランドのリーダー企業が欧米の先端サービスを紹介した。
アイルランドは、インドや中国に並ぶ世界的なソフトウェア開発拠点の1つとして知られ、数多くのIT企業が同国に拠点を構える。このほどアイルランド政府商務省が主催する「通信とITの融合セミナー」が東京都内で開催され、同国の通信・IT分野を代表する企業5社が集い、欧米の通信業界で展開する先端のビジネスモデルを紹介した。
冒頭の基調講演には金沢工業大学専任教授の殿村真一氏(ヘッドストロング・ジャパン代表取締役)が登壇し、ネットワークビジネスの環境変化と将来性について紹介した。
近年はコンテンツ配信やSaaSに代表されるネットワーク型のビジネスモデルが広がりつつある。殿村氏は「10年前に発案されたモデルが、ネットワークインフラなどの周辺環境の整備が進んだことで続々と実現している」と述べ、AppleやSalesforce.comのビジネスモデル例にビジネスモデルの変化を説明した。
「Appleが提案する(ネットワークで購入した楽曲を楽しむ)ライフスタイルやSaleforceの業務アプリケーションをオンデマンドで効率的に提供するスタイルが、製品量販型の旧来のビジネスモデルに取って代わる新たな流れを創造している」(殿村氏)
殿村氏は、ビジネス環境の変化を捉えて業界全体に影響力を持つことのできた企業が新しいビジネスモデルを浸透させると話す。
国内に通信ビジネスではNTTグループやKDDIなどが構築を進める次世代ネットワーク(NGN)によって有線と無線を統合するサービスモデルが検討されている。殿村氏は、「通信とITの融合では従来の形にとらわれないビジネスモデルで業界に影響力を与える新しい企業が登場するだろう」と話し、ビジネスモデルの創造に必要なネットワーク制御やコマース、顧客管理といった事業基盤の重要性を呼びかけた。
eコマースサービスを提供するValista日本支社長の野澤裕氏は、複数の異業種企業が参加したユーザーサービスの実現を提案する。
同社のコマースサービスを利用するフランステレコムグループは、グループ企業だけでなくグループ以外のプロバイダーや決済サービス会社などが参加できるコマース基盤を利用している。この基盤を利用して、ユーザーにはフランステレコムグループ限定されないサービス(ポイント制度など)を提供でき、ユーザーが購入したコンテンツなどの代金を関係各社へのスムーズに分配する仕組みも可能になっているという。
野澤氏は、国内でも通信事業者と異業種企業が参加するユーザーサービスが提供されているが、(ユーザーがサービスを利用できる企業が)限定された内容が多いと話す。「数多くの異業種企業が参加するユーザーサービスが、いまだ具体像が見えづらいNGNのサービスモデルを明らかにしていくだろう」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.