内なる闘志こそ行動力の源――長年練り上げてきた発想を伝える空中分解しない「シャドーワーク」の極意(1/2 ページ)

シャドーワークを実践し続ける人物に話を聞いた。その中には細かな気配りや人心掌握のテクニックが垣間見える。しかし彼ら動かしているのは「想い」である。

» 2007年08月10日 07時00分 公開
[大西高弘,アイティセレクト編集部]

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「GR BLOG」成功のポイントとは?

 企業内のフォーマルな組織やプロジェクトではなく、それらに縛られないインフォーマルな集団の独自活動をシャドーワークと呼ぶ。シャドーワークを推進するタイプの社員は社内外ともにバランスの取れた連携ができるプロデューサー型のワークスタイルを身に付けている人。しかし、そのスタイルは一朝一夕に身に付くものではない。経営側もシャドーワークを積極的に受け入れる傾向が強まっている現在、プロデューサー型のワークスタイルを身に付けた人材はこれまで以上に求められるようになったが、スタイルを真似ることだけに腐心しても思ったような結果は生まれない。キーポイントになるのは、狭い範疇の損得勘定を超えた、製品やサービスなど自分たちの仕事に対する想いなのだ。参照記事

 リコーの野口智弘氏は、同社のパーソナルマルチメディアカンパニーICS事業部で商品企画グループのリーダーという肩書きを持つ。野口氏は単行本「シャドーワーク」にも登場している。リコーが2005年9月に発表し、現在も多くの愛好家から注目されているデジタルカメラ「GR DIGITAL」のプロモーションのために立ち上げた「GR BLOG」が取り上げられている。

 「GR BLOG」は05年8月末に公開されたと同時に大きな反響を呼び、ビジネスブログの成功例としても注目された。まだ製品そのものが発売される前に、トラックバック受信制限数を超えてしまう事態になったのだ。

 この成功の影に野口氏を中心としたプロジェクトチームがあったわけだが、このプロジェクトチームは社内の正式な手続きの下に発足したものではなく、まさにシャドーワークとしての動きだった。

GR BLOG

プログが目的ではなかった

 「私自身、ブログについての知識が豊富にあったわけでもなかった。ICS事業部の中で『GR DIGITAL』のプロモーションをどうするかという話になった時、ブログを活用することはできないかという意見が出て、検討してみようということになった。ただ、当初は外部のプロダクションに協力してもらって作ることになるのかなという漠然としたイメージしかなかったんです。そこにたまたま、リコーの広報チームがブログのビジネス活用を検討しているという情報が入って、そのワーキンググループと何かできないか、というミーティングを重ねることになっていきました」と野口氏は語る。

リコー パーソナルマルチメディアカンパニーICS事業部 商品企画グループ リーダー 野口智弘氏

 その後、野口氏のグループと広報チームのワーキンググループは一つのチームにまとまって行き、「GR BLOG」の立ち上げまで進むことになるのだが、そもそも現在のところもブログを運営するチームは正式な辞令によって組織されたものではないという。

 「もちろん、各人の上司には最初から事情を話しているし、定期的に連絡をしてどういう状況になっているのか報告もしています。それはやはり私の役目だと思いますから。ただ、報告をしているから、説明をしているからというだけで社内の調整がうまく行ったわけではないと思います。ブログ活用の検討段階から今日に至るまで、このチームが続けられてきたのは、やはり、関係者全員が『GR DIGITAL』という製品そのものの魅力を伝えたいという気持ちがあったからです」と野口氏は語る。

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