神童たちはソフトウェアで教育をこう変える――Imagine Cup 2007ファイナルImagine Cup 2007 Report(1/2 ページ)

Imagine Cup 2007のソフトウェアデザイン部門は、いよいよファイナリストが決定し、それらのチームによるプレゼンテーションが行われた。彼らは現状の教育の何を憂い、何を変えようとしたのか。

» 2007年08月10日 11時57分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 昨年のファイナリストで第2ラウンドに進めたのは中国だけ、しかも、その中国ですらファイナリストには残れないという厳しい現実――Imagine Cup 2007のソフトウェアデザイン部門は、まさに大波乱といった様相だ。

 第2ラウンドに進んだ12チームだが、翌日の夕方、ソウル市内で開催されたディナーショーの終盤で再び緊張の瞬間を味わうことになった。Microsoftアカデミックリレーションズのグローバルディレクター、ジョー・ウィルソン氏が、ファイナリスト6チームを発表する。

 「アイルランド、オーストリア、韓国、タイ、セルビア、……ジャマイカ!」

 わき上がる歓声、その中でもホスト国である韓国が呼ばれたときはひときわ大きな歓声が上がった。

韓国チームの女性、ノリノリである ソフトウェアデザイン部門のファイナリストたち。ジャマイカチームの着るTシャツには「Jamaica Inside」の文字が

 そして次の日、この6チームによる最終ラウンドが開催された。これまでのラウンドと大きく違うのは、優に500人は収容できるであろう大きなホールで、多人数を前にプレゼンテーションしなければならない点だ。

アイルランド

 最初に登場したのはアイルランド。教育というテーマに対する彼らのソリューションは手話の学習に関するもの。両手につけたグローブを目印に手のモーションキャプチャーを行い、それを手話学習用のプログラムに渡すことで手話を学ぶというもの。アルファベットなど幾つかの学習用パッケージを用意するビジネスモデルを説いていた。

手の動きをキャプチャーしやすくするために、赤と緑のグローブを装着し、画面下部のインストラクターの指示に沿って手話の学習をしているところ

 アイデア自体は、OpenCVを使って画像の物体認識を行う延長線上にあると言え、それほど目新しさは感じないところだが、体全体のモーションキャプチャーを行い、それをプログラムに渡して活用するなどロードマップも示していた。教育というテーマでなければ、さらに広がりがありそうなソリューションではある。逆に言えば、今回のテーマと若干ずれているようにも感じる点が惜しいように感じる。

セルビア

 セルビアは、「DRIVEON」というドライビングシミュレーターを公開した。今回の教育というテーマに対して、小中高、そして大学などを想定したソリューションが多く発表された中で、セルビアのこのソリューションは、教育という枠組みの中でドライバーの運転技術や交通規則を学ぶという別の視点を取り入れたという意味で新鮮味がある。

3面のマルチスクリーンに表示したシミュレータ。左でオペレーターが市内のシミュレーション状況をコントロールしている。将来的には、360度のマルチスクリーンを用いたシミュレータやMicrosoft Virtual Earth 3Dと連携する案も示された

 同ソリューションの特徴は、ドライブ時のさまざまな要素の徹底再現を可能にしたAI型のシミュレーションテクノロジーが取り入れられていることだ。道路を走る車の台数や挙動はもちろん、路面の状況などもオペレーターが容易に変更できるようになっており、ドライバーにとって危険な状況を容易に再現できる。また、複数のシミュレーターの一元管理にも対応し、効率の良い運用が可能であるとも話す。

韓国

 続いて壇上に上がったのは韓国。「目も見えない、耳も聞こえないとき、どう学べばいいか」という問題を解決するために韓国が考えたソリューションは、視聴覚複合障害者のための指点字コミュニケーションシステム「FINGER CODE」だった。

「FINGER CODE」を紹介する韓国チーム

 指点字とは、視覚障害者の使用する6点点字を人の両手の人差し指、中指、薬指に割り付けたもので、文字コードを入力速度や内容の正確さなどで有用なものとして知られているもの。

 指点字コミュニケーションシステム自体は実は珍しいものではない。韓国チームの発表に似たものは日本でもIPAの先進的情報処理技術開発促進事業で2001年度にリポートされている。これと大きく違うのは、入出力方式として指点字は使用するが、それらは音声に変換して相手に届けることができる点であろうか。その逆も可能で、相手の声を指点字のコードに変換、両手に装着したグローブにバイブレーションとして伝えることで、テキストだけでなく音声でコミュニケーションを図ることができるのが最大の特徴となる。

指点字の入出力を行うためのグローブを装着し、チャットをしているところ。指点字での入力はSpeech APIを経由して音声として出力することもできる

 実際の視聴覚複合障害者が同ソリューションを用いた際の映像も紹介。映像の中で名前を聞かれた彼が、指点字でそれを理解し、名前を述べた後、この方の親族と思われる子供たちの顔から笑顔がこぼれるシーンが映し出されると、多くの観衆から拍手があがっていた。

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