コラム
» 2007年08月16日 06時16分 UPDATE

Imagine Cup 2007 Report:学生が至福の時間をすごすための1つの方法――Imagine Cup 2007総括 (1/2)

Imagine Cup 2007が閉幕した。Imagine Cupに参加することは今の時代あまり注目されないことかもしれない。しかしそこには日常生活では味わうことが難しいある種の興奮が眠っている。

[西尾泰三,ITmedia]

 既報のとおり、Imagine Cup 2007ソフトウェアデザイン部門はタイ代表の優勝で幕を閉じた(関連記事参照)。それまでの大波乱な展開からすると、ファイナリストの順位は拍子抜けするほど妥当な順位であった。

DSC_0355.jpg 優勝したタイ代表チームにトロフィーが進呈。手渡しているのはMicrosoftのトム・クルーズことMicrosoftアカデミックリレーションズのグローバルディレクター、ジョー・ウィルソン氏。余談だが、本大会における彼のノリノリぶりは一見の価値がある。ぜひ来年のImagine Cupに参加してその目で彼を見てほしい

Imagine Cupの参加は学生に何をもたらすか?

 全世界の学生を対象とした技術コンテストであるImagine Cup。似たような技術コンテストとしては、Google主催の「Google Code Jam」、ACM(Association for Computing Machinery)主催の「ACM/ICPC」など幾つも開催されている。

 Imagine Cupは回を重ねるごとにコンテストそのものの質も高まってきた。第1回大会のように、ソフトウェアデザイン部門でビデオテープを送ってきただけのチームが優勝する、といったようなこともなくなった。

 しかし残念ながら、Imagine Cupは日本国内において、それほど盛り上がっている印象を受けない。それはなぜなのか。関係者への取材を通してそれがおぼろげながら見えてきた。

Imagine Cupへの参加を阻む2つの壁

 1つには、これが参加者にとって長期間の取り組みになることが挙げられる。今回の日本代表チームも、チームとして結成されたのが2006年10月ごろ、国内の代表決定戦が2007年3月、そして世界大会となるImagine Cup 2007が開催されるのが2007年8月と、実に1年近くにわたってこれに取り組んできた。フルタイムではないとは言え、学生たちの負担は決して軽くない。

 大学院生などであれば、所属する研究室の協力体制も大きく影響しよう。今回の日本代表チームは同じ大学ではあれど、所属する研究室はそれぞれ異なる(坂本さん、丸山さんは同じ研究室)。「(演習の一環として)いわば公認として扱われていた3月のStudent Dayまではともかく、後期の演習が3月で終了すると、研究室としてはそこに力を割くことをよしとしない空気もあり、肩身の狭い思いもした」とこぼすメンバーもいた。

 そしてもう1つ挙げるとすれば、参加条件にもなっているMicrosoft製品(もしくはテクノロジー)の利用である。Imagine Cup 2007では、「.NET Framework 2.0または.NET Framework 3.0を使用すること」「開発にはVisual Studio(Express Editionも可)を使用すること」が必須条件となっていた。この縛りが学生たちにとって最初の高い敷居となっていることは想像に難くない。自由な発想・アイデアを求めながら、その実装では制限があることに違和感を感じる。

DSC_0341.jpg 苦しさの先に得た喜びも大きいのもまた事実。Web開発部門で優勝したフランス代表チーム

視線の先に何を見るか

 こうした壁はあれど、目線をはるか先に向けている方にとっては、有用なコンテストであることは付け加えておく必要があるだろう。昨年のインド大会から取り入れられた支援プログラム「Imagine Cup Innovation Accelerator Program」の存在だ。

 同プログラムは、MicrosoftとImagine Cupのスポンサーでもある英British Telecommunications(BT)が共同で企画したもので、ソフトウェアデザイン部門から6チーム(ファイナリストから3チーム、そのほかの参加チームから3チーム)を選び、商業化のための支援をするというものだ。

 昨年同プログラムに選ばれた6チームのうち、優勝したイタリアチームは同プログラム終了後になぜかフリーズしたものの、ほかのチームについては、政府やベンチャーキャピタルからの資金援助を受け、商業化に向けて現在も活動している。現時点でいずれもIPOには至っていないが、すでに起業したケースもある。

 それがドイツチームが起業したTrailblazersであったり、Imagine Cup 2005のソフトウェアデザイン部門で優勝したロシアチームのメンバーが設立したMusigyであったりする(なぜ同プロプラム導入以前のチームが加わることができたのかは不明だが)。

 つまり、アイデアをアイデアのままで終わらせず、起業まで見据えているのなら、Imagine Cupはほかの技術コンテストよりはるかに有用なものになり得る。無論、Imagine Cupに出ることで一定の目的を達したと考える者と、Imagine Cupは自分たちのアイデアを世に送り出す過程に存在する1イベントに過ぎないと考える者で差が出てくるのは想像に難くない。

 昨年、同プログラムが発表された際、MicrosoftとBTの青田買いではないかと不安を覚えたが、見聞した範囲の結果論で語るなら、国内でImagine Cupの参加者がマイクロソフトに入社したという話は聞かないし、本大会で審査員を務めていたBTのケビン・ニコルズ氏も「リクルートしたり、雇用したケースはない」と語ってくれた。

DSC_0332.jpg 将来に結びつこうがつくまいが、「楽しむ」という気持ちは大事である。写真の彼女たちはインタフェースデザイン部門で優勝したオーストリア代表チーム。キュート&ワイルドの美女たちだ

 こうして考えてみると、Imagine Cupに対する日本の学生の注目度が低いのは、世界を変え得るアイデアを世に送り出そうという思いが欠如しているためではないのかと思わざるを得ない。もちろん努力すれば必ず達成できるたぐいのものではない。しかし、ファイナリストに残るチームを見ると、すべからくそうした努力をしているのではないかと思う。

 こうした見方に対し、「イノベーションを金に換算するかのごとき議論はどうか」「大会という場で優劣を第3者が決めるというスタイルはイノベーションを阻害してはいないのか」という意見もある。事実、今回のソフトウェアデザイン部門1つ取っても、ファイナリストには残らなかったものの、すばらしいアイデアを持ったチームは幾つも目にした。

 しかし、これは実に愚かな意見である。そもそもなぜこのコンテストのみの“二者択一”で考える必要があるのか。むしろ問題とすべきは、Imagine Cupのソフトウェア部門に参加したチームのうち、発表したソリューションの開発をフリーズさせてしまうケースが多く見られることではないだろうか。昨年の日本代表チームが発表したソフトウェアの開発は現在、完全に沈黙しているし、今年の日本代表チームも、今回発表したソリューションの開発はここで終了となる旨の発言をしている。イノベーションの進化が止まってしまうという意味において、これほどもったいないことはない。

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