作業環境を改善せよ さもなくば日本のエンジニアは壊滅する!遅れた日本のソフトウェア開発 その原因はここにあり!?(2/3 ページ)

» 2007年09月05日 09時00分 公開
[高橋寿一,ITmedia]

 だからといって、仕事をサボっていたわけではない。働くときは働いた。なんせ、マイクロソフトでは自分の策定したスケジュール通りにコーディングが進まないと、「即クビ」になりかねない。マネジャーも、部下のアウトプットは適切にチェックしていた。

 日本企業の営業担当者は、会社にいないことが多い。営業の管理職は、部下の売上高だけを見ているといった具合だ。では、日本のソフトウェア会社の開発部門の管理職はどうだろうか。部下の書いているソースコードの進ちょくはチェックせず、スケジュール管理もしない。挙句の果てには、ムダな会議にばかり出ている。部下からそう思われてはいないだろうか。

 部下のアウトプットや生産性のチェックに真剣になれなければ、エンジニア一人ひとりに個室を割り当てたり、うまいメシを食わせて効率よく仕事をしてもらおうなどという発想には、なかなか行きつかないものである。

 「ピープルウエア」(日経BP社)の著者、トム・デマルコ氏は「適切な作業環境(電話を転送したり、あるいは電話の呼び出し音を消したり、作業スペースの個室のドアを閉めることができ、不要な“割り込み”をシャットアウトできる環境)で働くプログラマーの生産性は、普通のオフィス環境下にあるプログラマーより2.6倍も高い」と言う。

 ソフトウェアエンジニアの生産性の良しあしというのは、ほかの業種のそれに比べると大きな差がある。マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏は、優秀なエンジニアは普通のエンジニアの100倍の生産性を誇ると言っていたという。ほかにも、デマルコ氏を含め、米国の多くの著名なソフトウェア工学者が、優秀なエンジニアの生産性は「(通常の)10倍以上になる」と言っている。

 このような考えから判断すると、高い生産性を誇る人を採用し高稼働率で働かせることは、ソフトウェア企業にとって大きなメリットになる。逆に、生産性の低いエンジニアを抱えることは著しいデメリットになる。

 「ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?」(青土社)には、「間違った不採用はよくないが、それが直接、会社にとって損失になるかというとそうではない。だが、間違った採用は会社にダメージを与えることになり、そこから回復するにはかなりの時間がかかる」と書かれている。もっともなことではないだろうか。

プロジェクトは小さい方がうまくいく!?

 ここで、個室を割り当てずにオフィスコストを抑え、採用と開発の担当マネジャーに無頓着な人材を配置しているA社と、エンジニアの能力を最大限引き出せるようにオフィスを設計し、有能な担当マネジャーをそろえているB社で、アウトプットを計算して比較してみたい。

 デマルコ氏の生産性を単純に換算すると、A社における一人当たりの生産性を1とした場合、B社のそれは、

2.6(オフィス効率、前述参照)×10(優秀なエンジニアの能率、前述参照)=26

となる。

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