「日本が世界に発信する教育」――ICTアクセシビリティ、アジアへ

マイクロソフトと東京大学が共同で開発したICT教育のカリキュラムが、アジアの教育指導者や政府機関に公開される。

» 2007年09月07日 00時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 9月6日、東京大学先端科学技術研究センターで、マイクロソフトが東京大学先端科学技術研究センターと推進してきた、ICTアクセシビリティへの取り組みの記者発表会が行われた。マイクロソフトと東京大学が共同で開発したICT教育のカリキュラムを、アジアの教育指導者や政府機関に公開するという。

 発表されたのは、ICTアクセシビリティカリキュラムの「CARE」。アクセシビリティは、障害者や高齢者などを含むあらゆる人が製品やサービスを利用しやすい環境を整備することを示す。CAREは、東京大学とマイクロソフトが共同開発した障害者向けのICTカリキュラムで、身体的、精神的な障害で読み書きが困難な子どもや学生にPC活用の機会を提供することを目的としたもの。学生や教師を支援するマイクロソフトPiL(Partners in Language Program)の一環として展開される。

 CAREカリキュラムは、テクノロジーが障害者にどのようにとらえられているか、感じられるかを教育指導者に経験してもらうという観点から作られている。手が不自由でマウスを使えない人が、どのようにPCを利用するかを疑似体験できるカリキュラムなどが組まれている。

 「例えば、手のふるえが止まらない子どものキーボード操作は、われわれが想定する以上に難しい。1つの文章を打ち込むのにとても苦労する。かたや、現場の教師や支援者は、そのような子どもに従来通りのIT教育を施してしまう。正しい教育が行われないことは、ITやPCから子どもを遠ざけてしまう」――東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍特任教授は、障害を持った子どもを取り巻くIT教育の現状を説明した。

image 中邑賢龍氏

 マイクロソフトの公共インダストリー統括本部、プログラム&マーケティング部の滝田裕三氏によると「WindowsやIE(Internet Explorer)には、障害に配慮したPCの設定ができる機能がある。しかし、ほとんど使われていないのが現状だ」という。例えば、キーボードを押してからPCがキー入力を認識するまでの時間を設定し、入力ミスの多い子どもの誤入力を防ぐ「フィルタキー」などの機能がある。

 ICTアクセシビリティ活動の布石はそこにあった。「みんなが使うWindowsの中にそのようなプログラムが入っていることを認識してもらいたかった」(滝田氏)

image 滝田裕三氏

 これらの背景を基に、日本ではすでに、43回のICTアクセシビリティ活動が行われ、特別支援学校や特別学級の教師などを中心に、計802名の受講生を集めた。日本におけるこれらの草の根的な活動が、ICTアクセシビリティカリキュラムを世界へ広げる原動力となった。

 「CAREはお金がかからず、簡単、そして効果が約束されたカリキュラム。この取り組みが世界に広がるのはとてもうれしい。これからも分かりやすいコンテンツを作っていきたい」(中邑氏)

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