WiMAXか、次世代PHSか? 次世代無線サービスの行方(2/2 ページ)

» 2007年09月08日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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 9月3日にWiMAXの標準化推進団体WiMAXフォーラムが主催した説明会の特別講演で、日本総合研究所の新保豊理事・主任研究員はBWAで想定される事柄を紹介している。

 新保氏によれば、どの通信方式が認められされ、どの事業者が免許を取得するのかの2点に市場の関心が集約されるという。

 まず通信方式では、WiMAXは先に挙げたように国際標準化が着々と進んでおり、モバイルWiMAXも10月の世界無線通信会議で第3世代通信方式の1つに集約される形で標準化される見通しとなった。

新保氏

 次世代PHSは国内主導で開発が行われてきたために国際的な規格という訴求力が弱いものの、「日本発の技術として関係者の間では世界に訴求したいという強い思いがある」(新保氏)という。特に中国は、1億以上のPHSユーザーがいるだけに、次世代PHSが中国で採用されれば世界からの注目度は高まる。「だがそのような保証はない」と新保氏。

 i-burstとFLASH-OFDMは、WiMAXに比べると賛同を示す企業団体が少ないことから、今回の免許交付では採用が厳しいと見られている。このためWiMAXと次世代PHSが有力視される。

 WiMAXは賛同する企業・団体が数多く、国内外で実証実験が進められ、商用レベルでのサービス品質を確保したといわれる。一方で、新たにサービスエリアを確保しなければならないという課題もあり、WiMAXで参入を表明する事業者グループの多くが、既存の携帯電話の基地局などを活用して早期に確保できるだろうと説明する。

 次世代PHSは、ウィルコムが既存のPHS基地局を利用するとしており、現在と同等のサービスエリアをWiMAXよりも早期に実現できる見通しだ。また、実証実験も順調に進められている。しかし、免許条件にある“国際的”な規格という面からみると、WiMAXよりも海外からの賛同が少ないことは否めない。「全国向けの2つの免許が、技術競争を想定してWiMAXと次世代PHSになるのか、それとも国際対応を考えてWiMAXだけとなるのかが最大の焦点」(新保氏)。

 仮に免許が2つともWiMAXになった場合、WiMAX派のどの陣営に免許が交付されるのかが次の焦点となる。

 この点について新保氏は3つのシナリオが想定されるという。1つ目のシナリオは、現在の携帯電話向け周波数の割り当てが少ないソフトバンクモバイルとイー・アクセスのグループが最有力だというものだ。携帯電話加入者数を見ても、両者によるグループはNTTドコモやKDDIに比べて少ないことから、携帯電話を含めた公平な競争環境を実現させるために、ソフトバンクモバイルとイー・アクセスのグループに交付先に有力候補だと新保氏は説明する。

 2つ目のシナリオは、ソフトバンクモバイルとイー・アクセスのグループに免許が交付された場合に、残る1つの免許をNTTドコモおよびアッカのグループとKDDIのグループが争うというものだ。この場合、携帯電話市場の競合関係からKDDIグループはNTTドコモとアッカのグループに対抗するためソフトバンクモバイルとイー・アクセスのグループに接近する可能性があるという。

 3つ目のシナリオは、これら3つの主要なグループの希望を満たすことを総務省が検討し、今回開放される周波数帯(2545〜2630MHz、干渉を避けるガードバンドを含む)に隣接する周波数帯も一部開放して、将来的に3グループが利用できるようにするというものだ。

 この隣接する帯域では、低い方の周波数帯をNTTドコモが衛星電話サービス「ワイドスター」として利用する。高い方の周波数帯は、モバイル放送の「モバHO!」サービスとして利用されている。ワイドスターの電波免許期限は10月27日まで、モバイル放送は2008年10月31日までとなっており、新保氏は将来的に2つの隣接帯域をBWA向けに再編する可能性があると指摘する。

 ただし、ワイドスターは契約数が2万2000件ほどながら企業や自治体を中心に利用され、緊急災害時の通信インフラともなっている。モバHO!は2004年秋に始まったばかり新しい有料放送メディアだが、加入数は公開されておらず、将来性については不明な部分が多い。再編に当たっては「経済的価値を十分に検討するべき」と、新保氏は付け加えた。

 今回の免許交付においては、BWAがWiMAXと次世代PHSによる2種類のサービスとして、もしくはWiMAXサービスが2つの事業者から提供される形が有力だとみられる。

 また、地上テレビ放送のデジタル化完了後は、VHF帯や700MH帯、900MHz帯で電波利用の再編が検討されている。将来の再編でこれらの周波数帯がBWA向けに開放された場合には、今回の免許を得られなかった事業者グループにも再び参入の道が開く可能性がある。

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