未来を見据えるBEAシステムズ(2/2 ページ)

» 2007年09月15日 07時00分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK
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――「DataPower」などのような製品のことを言っているのですか。

レビー氏 ええ、そうです。おもしろい話をしましょうか。IT業界には、すでに前からあった名前を何かに与え、それを刷新する傾向があります。BIが良い例で、5年前のBIと現在のBIとでは、まったく同じものを意味しているわけではないのです。

 わたしからすると、アプライアンス界は、メインフレームから分散コンピューティングに移行した際にわれわれが直面したのと同じ問題を繰り返しているように見えます。分散コンピュータと言えば最初は、比較的普通のオペレーティングシステムを搭載し、しかしながら非常に特殊なソフトウェアセットを稼働させるコンピュータを意味していました。まず始めにデータを入力するのです。それは、アプライアンスと呼んで良いものでした。動きは遅いし、サイズも大きいのですが、確かにアプライアンスだったのです。特定のビジネスタスクを実行するために、特殊なハードウェアとソフトウェアを組み合わせたコンピュータだったわけです。今日のアプライアンスは、そのサイズを小さくしただけのものです。ということは、次はこれを高速化するのが命題になるのでしょう。

 分散コンピューティングへ移行したときもそうでしたが、データソースからバックエンドへ、そして再び元の場所に戻ってくる旧式のトランザクションには、いらつかされるばかりでした。プロセスが冗長すぎたのです。そこでわれわれは、ソフトウェアの一部分を分散環境へ移し、アプリケーションを「貯金」するような形を取ったのです。これは、個人的にはアプライアンスと言ってよいと思いますが、いわゆる分散型プラットフォームと同じもので、末端部分でいろいろな処理ができるよう、機能を追加してあります。さらに、CICSのバッチプロセスとして完了するデータ入力からビジネスプロセスを切り離して、ローカルのデータだけをリアルタイムもしくは半リアルタイムで処理できるようにし、ビジネスプロセスをバッチに移動させる形態を採りました。

 いずれは、ESB(Enterprise Service Bus)を実装する、ローカライズされたSOA(Service-Oriented Architecture)アプライアンスが登場するに違いないと思っています。

――それもハードウェアの話ですよね。

レビー氏 はい。現在は詳細にカスタマイズされたハードウェア/ソフトウェア型のアプライアンスが求められています。こうした状況を見るに、Linuxは一般的なアプライアンスOSとして、興味深い方向に少しずつ進化しているなと思うわけです。わたしが家で使っている「Tivo」も、Linuxベースです。Linuxが稼働している消費者家電は、ほかにもたくさんあります。Linuxが効率的に動作するようカスタマイズされていながら、これまでとは異なるバージョンのソフトウェアを利用できるハードウェアがあってもよいのではないでしょうか。わたしたちも昔は、WebLogicをLinux対応にするにはコストがかかりすぎるだとか、小型仕様にしてモバイル用にするのは無理だなどと言っていました。

 おそらくはLinuxが稼働するSOA対応アプライアンスの重要性は、今後ますます大きくなるでしょう。すでに存在しているXML変換機器を、単にカスタマイズしたものとは違います。これは、Cisco Systemsのルータと同じような種類の製品ですよね。Ciscoのルータは、立派なアプライアンスです。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた機器で、スイッチング以外の仕事をしないのですから。プログラムをすることができるので、コンピュータではありますが、機能はたった1つだけです。そうではなくて、エッジに導入し、サービスバスやデータ転送を高速化できる、より包括的な機器のことを言っているのです。末端でリアルタイム処理を実行し、ESBと通信することの可能な、ローカライズされたメモリ上データベースのようなものを想像しています。

 そうした予感を抱いているのとは別に、われわれのESBを連携型アプローチに対応させていかなければならないとも感じています。接続が確立されているときでも、そうでないときでも、処理が始まる前に各ESBが統合的なESBとの通信方法を特定できるように、われわれのESBを連携対応型にする必要があるのです。

 Googleがアプリケーション向けの技術を開発した際にも、これと同じ問題に突き当たったようです。常に接続状態を維持するアプリケーションを開発するのは、それほど難しくありません。難しいのは、接続と非接続をうまく切り替えられるアプリケーションの開発です。

――BEAはハードウェア事業に乗り出そうとしているということですか。あるいは、提携を考えているとか。

レビー氏 BEAはハードウェア事業に参入するのかと聞かれれば、その可能性は低いと答えざるを得ないですね。パートナーシップについては、もちろん検討しています。ハードウェアを専門とする優れた企業はいくらでもあるのですから。そもそもBEAは、CiscoやIntelなどのハードウェアベンダーとすでに提携しています。

――Microsoftも「Zune」や「Xbox」を擁して、ハードウェア分野に足を踏み入れていますね。

レビー氏 ええ、確かに。彼らの経験や、「iPod」や「iTunes」などの開発販売におけるAppleの対応には、学ぶところが多々あります。

 独自のプラットフォームを持っているという点で、彼らの戦略はわれわれのそれと似通っています。BEAは、企業のプラットフォームになりたいのです。プラットフォームは、どこに位置づけたら良いのでしょうか。われわれは、流行のテクノロジー開発に取り組んでいるわけではありません。テクノロジーを活用し、多くのユーザーがサポートするプラットフォームを生み出して、エコシステム内のなるべく多くの要素とそうした技術を結びつける、土台作りがわれわれの仕事です。

――サービスとしてのソフトウェア(SaaS)と呼ばれる潮流については、どう考えていますか。

レビー氏 SaaSは、技術にかかわる見通しやビジネスモデルなどとは別物として話を進めましょう。ビジネスモデルとしてのSaaSは、すでにその能力をいかんなく発揮しています。SaaSは、アプリケーションプロバイダー(ASP)の後継技術のようなものです。

 SaaSが成功した要因は2つあります。1つ目は、ブロードバンドの普及です。2つ目の要因は、最も日常的な会社の資産を、会ったこともないが信頼できるだれかの手に預けるという考えが受け入れられるようになった現状にあります。Salesforceの好調ぶりを見れば、それが真実だと分かるでしょう。

 もしもBEAの顧客が彼ら自身のサービスをSaaS形式で提供したいと思ったら、プラットフォームはどのように変わるのでしょうか。それは技術革新なのかと言えば、厳密にはそうではありませんが、WebLogicを、SaaSビジネスモデルの中で消費されうるJavaアプリケーションの開発に対応させるための、必然的な進化ととらえることはできます。

 外部からの利用が簡単なコンポジットアプリケーションを作成できるSOAは、こうしたケースでは大いに役立つでしょう。また、時代がコンポジットアプリケーションへ動いたときにも、それらを配信するSaaSビジネスモデルの構築に大いなる恩恵をもたらすと思われます。

 BEAが独自のSaaSを提供する可能性は、ある程度はあると言っておきましょう。WSIP(WebLogic Session Initiation Protocol)関連かもしれませんし、電気通信関連かもしれません。とはいえ、われわれはあくまでもプラットフォーム企業です。BEAの製品をSaaSとして提供するつもりはないのです。われわれの顧客がサービスをSaaS提供するためのプラットフォームを提供するのが、BEAの使命です。

――すなわち、BEAは縁の下の力持ちというわけですね。

レビー氏 どちらかと言えば、そうです。中小企業(SMB)などが属する中間市場では、SAPやOracleもSaaSモデルを選択した方が有利だと考えているのではないかと思ってきました。Oracle製品であれ、Microsoft製品であれ、SAP製品であれ、アプリケーションの大規模な導入が進まない理由の1つは、それがあまりにも複雑で、一から自分でやらなければならないからです。大多数の企業には、そんな複雑な作業を成し遂げる力はありません。だからこそ、Salesforceは成功したのです。どういった販売アプリケーションやCRMアプリケーションを買えばよいのか、あるいは作ればよいのか心配しなくてもよい、月に50ドル支払うだけで悩みは消えるというのは、実に魅力的なオファーですよね。

 BEAがSAPやOracleと同じ道をたどることになるのかどうかは、わたしにはわかりません。われわれは、土台を作ることをいちばんに考えています。一方で、彼らは例えばPeopleSoftソフトウェアを購入してマシンにインストールしてもらう代わりに、PeopleSoftソフトウェアのメカニズムをSaaSモデルを用いて配信し、それに対するアクセスを買ってもらうことに主眼を置いているのです。

――競合社には無くて、BEAにある競争上の優位点とは何ですか。ユーザーはBEAのどこに魅力を感じているのでしょうか。

レビー氏 まず第一に、製品を実際に市場へ送り出している点でしょう。顧客が今すぐに何かを導入したいと思ったとき、そこにはわれわれの製品があります。話をするだけの一部の競合社とは、そこが異なっています。必ず役に立つ製品を提供することに、われわれは邁進しているのです。

 また、トレンドの移り変わりを予測し、ビジネスの新規開拓を助けてくれる新たな製品を試してみようとする場合は、包括的で完全なプラットフォームが必要になります。BEAは、そのプラットフォームを持っています。完全性を備えているということです。

――BEAが、コンシューマー技術がエンタープライズ分野とリンクするようになり、影響すら与えていると認識したように、コンシューマ中心のWeb 2.0企業も、成長のためにはエンタープライズ分野に注力すべきだと考え始めているようです。これに関してはどう思いますか。

レビー氏 CTOオフィスの責任者としての見解を述べます。まずはこれから2年ほどの間に、Yahooに代表されるいわゆるインターネット企業が、BEAやIBM、Computer Associates、Symantecなどの本格的なエンタープライズ向けアプリケーションを開発している企業から、幹部クラスの人材を雇用する動きが見られるでしょう。これは、利益が得られるであろうエンタープライズ分野への参入が必須事項であると、彼らが気づいたことの証でもあります。

 何名のユーザーを「Facebook」にログインさせられるかといった次元から、コラボレーションの一環として社員全員が使用するFacebookのようなものを作れるかといった次元へ、レベルが上がったのです。

 純然たるコンシューマー製品あるいはエンタープライズ製品というものは、存在していないと考えています。9時5時で働いているすべての消費者は、その間は企業に属しているわけですから。

――企業におけるITの役割を拡大していくための策は何かありますか。

レビー氏 今日のビジネスアプリケーションは、ITによって実現されています。またITは、ビジネスイノベーションの立役者にもなれると思っています。ITはビジネスマンに、アプリケーションを動かすツールだけでなく、BEAが提供しているような社会的な要素を与えることができます。ITはこうした社会的な要素を介して、組織内の人々が互いの意思疎通を図るのを助けているのです。企業の中に存在している専門知識を活用できるようになれば、驚くほどすばらしいことが起こるのだと、だれもが実感できるでしょう。

 われわれがシステムのアジリティを高め、さまざまなものを実現できるようにしたことで、これまで考えもしなかったような分野において、新しく有望なビジネスモデルがすさまじい勢いで次々に生まれています。モーツァルトにシンセサイザーをプレゼントしてみた――今はちょうどそんな雰囲気なのではないかと思います。

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