スマートフォンは日本企業に根付くのか? ――HTC Nipponに聞く(前編)ITトレンドの“眼”(2/2 ページ)

» 2007年09月18日 06時00分 公開
[三浦優子,ITmedia]
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 ただし、HTCとして日本の法人市場での成果を問うべきタイミングはまだ先のことになりそうだ。情報端末に興味がある個人や情報システム部門の担当者へのアピールはまだ始まったばかり。

 「私自身は、まだ今年はスマートフォンの存在を告知していく時期だと捉えています」と豊田マネジャーも指摘する。

 さらに、スマートフォンが本当に市場に根付いていくのか、導入後も長く使い続けていかれる機器となるのかという疑問もある。

 携帯情報端末としてはスマートフォンの先輩であるPDAも、現在のスマートフォン同様、大きな注目を集めた。実際に企業向けソリューション用に導入した企業もたくさんある。だが、そのほとんどが長いこと使われることなく、消えていってしまった。もちろん、現在でも利用している企業もあるだろうが、当初期待されていたような浸透はしなかった。

 今回、スマートフォンも同じ運命を辿ることになりはしないのだろうか?その疑問に対し、豊田マネジャーは、「あくまでも私見だが」としながら次のように説明した。

 「PDAは完全にPCのサブセットと考えられていました。しかも、データをシンクロするためにはネットワーク経由でなければデータ同期ができなかったのです。ところが、スマートフォンは通信機能を装備しています。企業の情報システム、サーバとダイレクトに情報をやりとりできる。こうした端末としての機能の高さが、PDAとの大きな差となっているように思います」

 もちろん、PDAも外付けでモデムを装備し、通信機能を装備することも不可能ではない。だが、外付けのモデムを利用するためには設定を行うことも必要となるし、スマートフォンと比べると端末のサイズも大きくなってしまう。

 スマートフォンがPDAのようにいつの間にかなくなっていく事態が起こらないかどうかは、今後の動向を見守らなければならないが、手軽でありながら、高機能という点ではスマートフォンが一枚上手であることは間違いない。

 それを実証するような事例も登場した。住宅設備機器の保守・管理を行うINAXメンテナンスが、サービスエンジニアが業務に使用する端末をPDAから「hTc Z」に変更したのだ。

 実は約1年半前、筆者は自宅のトイレをINAXメンテナンスのサービスエンジニアに修理してもらった経験がある。その際、エンジニアの方のかばんから出てきたのが、「PDA+外付けモデム+小型プリンタ」。単体で見れば小さなPDAも、それだけ外付け機器が加わるとそれなりの大きさであったのを覚えている。

 これがhTcZに変更されたことで、小型プリンタは必要ではあるものの、ずいぶんサイズダウンしたであろう。

 システム開発においても、アイエニウェア・ソリューションズの組み込みRDBMS「SQL Anywhere」および基幹データベースと同期するコンポーネント「Mobile Link」を採用し、定義設定を行うだけで新システムの稼働条件設定、不安定な通信環境でもデータの同期を行える安定性、DBやテーブル定義の変更などにも対応したそうだ。その結果、短期間に新システム構築が可能となり、作業現場で顧客情報の確認や作業費用の請求書発行までが実現した。代金回収までのリードタイムが1週間から3日になった。

 「携帯電話ではなく情報端末としてアピールしている」というHTC製スマートフォンの特性がよく表れた事例である。

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