携帯電話のLinuxをめぐるトレンド(2/2 ページ)

» 2007年09月21日 07時00分 公開
[Murry-Shohat,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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 携帯電話市場では、消費者がコンテンツにお金を出してくれる。また、企業は社員が手にする携帯電話のアプリケーションに対してセキュアなコンテンツ配信を行う必要がある。こうしたトレンドは、機能的であると同時にTreoやBlackBerryよりも安価でiPhoneよりもセキュアな製品の必要性を示している。世界中の3500万台を超えるモバイル機器にMobilinuxを採用したと公言するのは、MontaVista Softwareである。同社CEOのトム・ケリー氏は「Linuxはモバイル機器で急成長しているが、その理由として確固たる信頼性と素晴らしい柔軟性、そしてLinuxによる開発サイクルの加速が挙げられる」と話す。モバイル機器でのLinuxの利用、またはその検討が、Linuxの容量、メモリ使用量、グラフィック、マルチメディア、ネットワーク接続、セキュリティといった各種ソフトウェアを生み出す開発者たちの環境の急速な発展を受けた結果であることに異論はない。

 この市場はまさしく、自らの手でルールを変えられればゲームに勝てる、というものだ。AppleのiPhoneがコンシューマー市場に与えた影響は大きいが、iPhoneに企業のCIO(最高情報責任者)を満足させるために必要なセキュリティ機能がない限り、企業に対してはそれほどの影響力はない。その発売前から、アナリストたちはiPhoneを“セキュリティチームにとっては悪夢のような存在”と呼んでいたほどである。

 しかし、Linuxはコア部分、すなわちカーネルが無償で提供されている上に、Linux Foundationのような団体の庇護下でセキュアなオペレーティングシステムとして格別に優れた管理を受けているため、消費者向け製品に向いている。また、オープンソースの開発環境ではプロトコルスタックに自由にアクセスできるため、企業はネットワークを流れる双方向の情報のすべてを保護する方法を考案できる。

 こうした大旋風はいつまで吹き荒れるのだろうか。確かにAppleはiPhoneに関する取り組みを徐々に拡大して評判を集めているかもしれないが、Linuxの領域における多くの開発ではそれ以前からずっと一触即発の状態が続いている。例えば、MotorolaはLinuxベースの携帯電話とスマートフォンの発売を数年前からアジアおよび欧州市場で開始している。LIPSやLiMoのような団体が生まれたのも2000年ごろのことである。これから消費者の前には、従来の販売チャネルであるAT&T、Verizon、Sprint、T-Mobileをはじめとする競合キャリアを通じて多くの新製品が現れそうだ。もちろん、その物量はLinuxにとっては大きな障壁になる。しかし、Linuxは、ABI Researchが予測するように、2012年までにモバイル市場の約3分の1を占める準備を整えている。また、このことは消費者市場全体でのLinuxの普及にとって好ましい前兆といえる。

gPhoneのうわさ

 おそらく想定し得る最も興味深いうわさは、Googleが携帯電話事業への参入準備を進めており、gPhoneと呼ばれるLinuxベースのデバイスの供給元として台湾のOEM業者HTCと契約を結んでいるというものだろう。なお、HTCは何年も前からWindows Mobile OSベースの携帯電話に関してMicrosoftとパートナーの関係にある。

 また、GoogleがLinux携帯電話のプロトコルスタックの提供を予定しているとのうわさもある。もちろん、Googleからのコメントはない。評論家たちは検索連動型広告のテクノロジーを有するGoogleの周知の状況に何度も言及している。しかし、このうわさはビジネスモデルまで具体的に説明するものであり、gPhone向けのコンテンツ配信には広告を組み合わせたロバストなモバイル検索機能が含まれるため、gPhoneの価格は低く抑えられるだろうとしている。広告に支えられたGoogleのビジネスモデルによってインターネットはお金の動く場所になったが、そうした広告がコンテンツに関係していてそれほど目障りでないことから消費者はそうした状況を実際に容認している。では、シャツのポケットやハンドバッグに入っている携帯電話の場合はどうだろう。iPhoneやRAZR2 V8が399ドルに加えて2年間の通信契約の費用が掛かるのに対し、同等機能のgPhoneが99ドルで販売されたとしたら、どちらを選ぶだろうか。

 そうしたうわさを裏付けるかのように、7月にGoogleは、米連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commision)がさらなる競争と消費者の選択肢の拡大を求める要件を採用すれば、無線周波数帯の取得を狙う可能性があると発表した。Googleはそのプレスリリースの中でアプリケーション、デバイス、サービス、ネットワークに対する4つの“オープン”を掲げ、ライセンス条件としてこの4つを要件とするようにFCCに働きかけた。また、そのとおりになれば、提供される周波数帯の競売に最低でも46億ドルの入札額を提示すると公言している。しかも、これはモバイル機器で利用される無線周波数帯である。Googleは携帯電話キャリアになるのだろうか。実に興味深い話だ。


Murry Shohatはカリフォルニア州サンタローザを拠点に活動するフリーランスジャーナリスト。1997年、電子機器の設計自動化に使われるオープンソースソフトウェアの取材を皮切りにLinuxに関する執筆に携わる。2000年にはEmbedded Linux Consortiumの創立に協力、2005年半ばまで同組織のエグゼクティブディレクターを務めた。


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