「顧客の成功事例がSalesforce.comの優位性の証し」Dreamforce 07 Report

Salesforce.comのジョージ・フー氏は、大規模採用においても、インハウス方式ではなくSaas方式に優位性があると説く。

» 2007年09月28日 00時30分 公開
[谷川耕一,ITmedia]

 Dreamfore 2007で、Salesforce.comは新たに2つのアプリケーションを追加すると発表した。その1つであるSalesforce.com contentは、従来のサービスと異なり、ユーザーがサーバ側に非構造データを数多く登録することになる。この新しいアプリケーションの提供で、用意するシステムインフラに変化はあったのだろうか。CMO(Chief Marketing Officer)のジョージ・フー氏は、このアプリケーションの搭載を戦略として考えた際に、その点については十分に考慮したと言う。

ジョージ・フー氏 Salesforce.com CMO(Chief Marketing Officer)のジョージ・フー氏

 「システムインフラの性能については、何ら問題はない。ストレージの能力についても同様だ。当然ながらキャパシティは増やすことになるが、時間の経過とともにストレージのコストも下げていくことができると考えている。顧客には、なるべくたくさんのコンテンツをSalesforce.comに入れて管理してほしいと考えている」(フー氏)

 contentアプリケーション用のストレージ領域追加ライセンスについてはまだ発表していないが、サービスを提供するまでには明らかにするという。すでに計画は出来上がっているが、現段階では最終的に確定していないためだ。

 次々と新しい機能を発表しているのだが、顧客が意外にもSalesforce.comの新機能を知らずにいることにショックを受けている、とオープニングのキーノートセッションでCEOのマーク・ベニオフ氏が言っていた。フー氏にこのことを指摘すると、それを解消していくには今までと異なるアプローチが必要だと言う。

 「新機能を理解してもらうためには、顧客への教育を充実させる必要がある。顧客はSalesforce.comに対して情熱的ではあるが、みな忙しく時間がないのが現状だ。Dreamforceのような大規模なイベントを行うことは最も効果的な方法の1つであり重要だが、参加できない人もいる。情報を伝える新しい方法は、さまざまなものを考えている。大都市を回るシティーツアーも始めている」(フー氏)

 シティーツアーの対象には、東京も入っている。2007年11月2日には東京で初の大規模な顧客向けイベントを開催し、多数のデモンストレーションも紹介できるだろうとのことだ。

コミュニティーの意見を尊重した活動を行う

 プラットフォームの戦略として新たに立ち上げたForce.comだが、この普及も重要な要素だ。Salesforce.comにはブランドがたくさんあり、どこにリソースを投入すべきかにはいつも頭を悩ませるとフー氏は言う。初期のころは、Salesforce.comそのものの認知度を上げることに注力してきた。Force.comは、従来のSalesforce.comを理解している人にとっては分かりやすいものと考えているという。

 「SaaSという言葉自体まだ新しいものなので、あせる必要はないと考えている。まずはSalesforce.com自体をもっと知ってもらう必要がある。PaaSはその後に来るものだ。SFAだけではなくなったので、会社の名前を変えるのかという質問をよく受けるが、SaaS=Salesforce.comというのが今は定着してきているし、この名前は気に入っている。ただし、企業名についてもコミュニティーの意見は尊重する。来年になってForce.comという名前のほうが良いという意見が多ければ、もしかしたらそのときには変えるかもしれない」(フー氏)

 どのような新機能を開発していくのかといったことだけでなく、企業のブランドイメージさえもコミュニティーの意見を大事にする。大規模な広告戦略などを行わずに口コミ的なマーケティング活動を重視するSalesforce.comの姿は、これだけの企業規模となった現状でも変化はないようだ。

 Idea Exchangeのような取り組みは他社もまだやっているところはなく、今後もコミュニティーの意見を参考に新しいものをどんどん取り入れていくとフー氏は言う。それが、競合他社に対する優位性につながると考えているのだ。

 また、SaaSのサービスは初期導入コストが安いことに注目されがちだが、コスト面よりも実際にSaaSを導入して成果が出ていることが重要だという。大規模なユーザー数の場合にはライセンスを購入する従来型のアプリケーションのほうがコストメリットが高いのではという意見もあるが、実際に数万という大規模なユーザー数で導入している企業の成功例を見れば、SaaS型の優位性は高いとフー氏は言う。

 「従来型のCRMアプリケーションの成功率は35%程度しかないとも聞く。われわれの成功率は、100%とまでは行かないもののはるかに高いものだ。例えば他社のアプリケーションを購入し導入しても、購入したユーザーライセンス数のうちどれくらいの人数が利用しているだろうか。Salesforce.comのサービスは、99%以上の利用率となっている」(フー氏)

 SaaS型のCRMアプリケーションについても、絶対の自信があるという。こういった状況もふまえた上で、現状の最大のライバル企業はどこかと尋ねると、正直に言って特定の1社がライバルということはないと答える。プラットフォームのビジネスという面では幾つかの競合が考えれるが、Salesforce.comというアプリケーションもプラットフォームも提供している企業はまだない。ただし、競合が現れることについては、業界が活性化し顧客の関心も高まるため歓迎すべきことだと言う。「われわれのライバルがどこかは、むしろここに大勢参加している顧客に聞いてもらったほうが良いかもしれない」とフー氏は言うのだった。

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