Googleのワイヤレス市場参入――可能性に色めくネットワーク機器プロバイダー各社(2/2 ページ)

» 2007年09月28日 09時09分 公開
[Paula Musich,eWEEK]
eWEEK
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 「Googleが望むようなモデルをサポートするには帯域のサイズが不十分だ」と指摘するのは、Nortelで顧客開拓を担当するアラン・プリチャード副社長だ。「家庭で得られるのと同等のスピードを求めるのであれば、上下に20MHz幅のチャネルが必要であり、この競売にかけられる上下12MHz幅では不十分だ。FCCはこの競売で4G(第4世代)サービスを望んでいると言うが、この帯域の絶対的なサイズという点については、問題が整理されるまでもう少し待つ必要がある」。

 さらにFCCでは、同帯域の12MHz部分を必要に応じて公共安全用のトラフィックとして、商用帯域の加入者よりも優先させて利用可能にするよう要求している。

 「公共安全用帯域のライセンシーと商用のDブロックの関係を明確化する必要がある」とNortelのホードリー氏は語る。

 また、700MHz帯の低帯域部分では、隣接周波数との干渉という問題も懸念される。

 Ericssonのヘーレン氏によると、こういった問題に加え、新しいネットワークを構築するに当たってのチャレンジとしては、中継基地サイトの選定、中継塔などの施設の建設、高品質を実現するためのネットワークのチューニングなどがあるという。

 これらに対処するには、「豊富なノウハウと高い能力が必要だ」(同氏)という。

 こういった問題はあるものの、Googleがパートナーとして選ぶ可能性のあるワイヤレス機器ベンダーの候補の範囲はかなり広い。大方の観測筋は、大手機器プロバイダーではNortel、Alcatel-Lucent、Siemens、Ericssonといったベンダーが名乗りを上げるだろうとの見方で一致している。「これらはすべて、GSMおよびCDMAベースのモバイル事業者のネットワークを提供している企業だ。彼らはいずれもGoogleにコネがない」とBurton Groupのパスモア氏は話す。もう1社の大手プレーヤーであるMotorolaは、700MHz帯で豊富な経験を持っている。

 しかしGoogleは、小規模で先進的な新興企業を選ぶ可能性もある。そういった新興企業の1社であるVanuは、同一のアンテナ上でGSMとCDMAのどちらでも動作することができ、市販のハードウェア上で動作する低価格のソフトウェアベースの無線技術を提供している。

 Vanuの技術で注目されるのは、その柔軟性である。Burton Groupでのディサバト氏によると、同社の技術は、携帯端末の種類にかかわらずシームレスなローミングを可能にするという。「Googleがこのことを知れば、関心を示し、開発担当者に話を聞きに行くだろう。この技術が優秀であることが分かれば、彼らは大手ベンダーとは手を組まないかもしれない」とディサバト氏は話す。「Google社内の誰かがこの記事を読んで、『われわれが狙っていたことがなぜ分かったのだろう』とか『これはすごいアイデアだ。ぜひ検討してみよう』などと言うかもしれない」。

 あるいはGoogleは、既存のワイヤレスネットワーク事業者とパートナーを組み、既存の中継基地を活用し、そのインフラの上にかぶせる形で新たなネットワークを構築するという方法を選択する可能性もある。Ericssonのヘーレン氏によると、その場合はネットワーク構築のコストを抑制できるという。

 IDCでワイヤレス/モバイルインフラを担当するリサーチマネジャー、ゴドフリー・チュア氏によると、Googleがどのベンダーを選ぶにせよ、パートナーを組むのが得意な企業であることが条件だという。

 「そのベンダーは、ワイヤレスネットワークの構築で非常に大きな役割を果たすことになるだろう。これは非常に複雑で、困難に満ちた事業だ」とチュア氏は話す。しかしNortel、Alcatel-Lucent、Ericssonなど主要ベンダーの多くは、専門サービスに力を入れており、彼らの顧客であるサービスプロバイダーのためにネットワークを運用している。

 「このモデルは、Googleがネットワークを構築するのに採用すると予想される。Googleはベンダーに小切手を渡し、ベンダーがネットワークを計画・構築し、それを運用する一方で、Googleはマーケティングおよびネットワーク用のアプリケーションの開発に専念するという形だ」(チュア氏)

 ヘーレン氏によると、こういったネットワークの構築でパートナーを組むということに関しては、Ericssonに分があるという。「当社は2万7000人のサービス担当者を抱えており、ほかの低周波数帯域のネットワークをスクラッチから構築した経験もある」と同氏は自慢する。

 「われわれはオーストラリアのTelstra向けに、850MHz帯のHSDPA(High-Speed Downlink Packet Access)ネットワークを10カ月足らずで構築した経験がある。このネットワークは人口の98%をカバーするものだ。当社にはツールとプロセスと方法論がそろっている。この3要素がカギだ。差別化を図り、競争力を高め、運用コストを下げつつ十分な利益を確保できるようにするには、これら3つの分野で秀でていなければならない」とヘーレン氏は話す。

 どのような結果になるにせよ、ベンダー各社がGoogleの気を引こうと必死になるのは間違いない。

 「これから、各社はこぞってGoogleに近づきになろうとするだろう。ランチやディナーでにぎやかになりそうだ」(チュア氏)

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