半導体フォトマスク製造で活躍するブレードサーバ大日本印刷電子デバイス事業部

半導体のフォトマスク製造を行う大日本印刷電子デバイス事業部は2007年5月、京都工場の生産管理システムを更新した。そのハードウェアプラットフォームには、伊藤忠テクノソリューションズの提案したブレードサーバを選択し、将来的には埼玉・上福岡工場との間での災害対策を見据えているという。

» 2007年10月15日 10時00分 公開
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 大日本印刷(DNP)は印刷技術を応用し、半導体の製造に欠かせないフォトマスクを生産する工場を持つ数少ない日本企業だ。半導体の微細化が進む中、その原版となるフォトマスクにも精密で複雑な製造手法と検査及び修正作業が必要となる。また、製品ライフサイクルの短縮化による好調な半導体需要に対応するには1年365日間、工場を稼働し続ける必要もある。

 フォトマスクの製造を担うDNP電子デバイス事業部は、2007年5月京都工場を皮切りに5年ぶりに生産管理システム「Phoenix」を更新した。そのハードウェアプラットフォームには、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の提案したブレードサーバを選択。将来的には工場間での災害対策(DR)まで見据えているという。

 新システムへの更新を担当したDNP電子デバイス事業部製造第1本部IT設計部の川神威氏は「フォトマスクの生産管理システムには停止しないシステムが求められる。カットオーバーから5カ月ほどたったが、特に問題も起こっていない。安定稼働に満足している」と話す。

フォトマスク製造の工程管理の難しさ

photo 大日本印刷電子デバイス事業部製造第1本部IT設計部の川神威氏

 今回更新されたPhoenixは、フォトマスク製造の工程管理を担う生産管理システムだ。フォトマスクは、半導体製造に使用する回路図を焼き込んだガラス板のこと。印刷でいうところの刷版、写真でのネガフィルムに相当するものだ。半導体メーカーは、このフォトマスクをステッパーと呼ばれる機械で縮小投影し、円盤状のシリコン・ウェハに回路図を焼き付け、プロセッサやメモリといった半導体製品を製造している。これがなくては半導体を製造できない極めて重要な要素がフォトマスクなのだ。

 DNPが行っているのは、回路図からフォトマスクを作成する作業。川神氏によると、フォトマスク製造は、写真とほぼ同様に「露光」「プロセス(現像・エッチング)」「検査」の工程に分けられる。だが、大きな違いは検査工程の複雑さにあるという。ITシステムがなければ、これを効率的に管理するのは難しく、「Phoenixも当初はこの検査工程のみを管理するシステムだったが、段階的な機能拡張により生産工程全般を管理するシステムになった」(川神氏)というほどだ。

 検査工程では、顧客企業から提供された元の回路図データとでき上がったフォトマスクが一致しているかどうかを厳密に確認する。基本的な作業は、検査機などにより自動化されているが、最終的な欠陥判定は熟練した人が確認しなければならないほど精密になる。

 「先端品に用いるフォトマスクは製造が難しく、欠陥があったら、そのまま廃棄というわけにはいかない。人間が修正を施すことで問題なく仕上がるような軽微な欠陥であれば、修正工程に回すことになる」(川神氏)

 ここで、当初の作業工程にはなかった「修正」という新たな工程が追加され、全体のスケジュールを組み直す必要が出てくる。そのため、欠陥に応じた修正フローで個別に対応しなければならないわけだ。

 何しろ、DNPに発注する半導体メーカーにとっては、まずフォトマスクがないことには半導体製造が開始でない。昨今の製品ライフサイクルの短縮傾向も影響してか、同社への発注では「短い場合は納期が20時間後という注文もある」というほど、納期もシビアだ。

CTCが提案したブレードサーバを選択

 1年中ラインを止められないというDNPのフォトマスク製造工場は、埼玉・上福岡工場と京都工場、川崎工場、北上工場、相模原工場の5個所ある。新システムは、まず京都工場に設置された。「規模的には上福岡工場の方が大きいが、システム更新のタイミングが先に来たことや、規模が小さい分更新作業が容易に行えるため」と川神氏は言う。

 これまでのPhoenixシステムは5年前に導入された。しかし、5年が経過したことで保守面でも性能面でも不安が出てきた。タワー型とラックマウント型のサーバを組み合わせ、Linux上で「Oracle 9i」を利用していたが、今回の更新では、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と日本ヒューレット・パッカード(HP)の共同提案を採用。6基のサーバブレード「HP ProLiant BL460c」を搭載したブレードシステム「HP BladeSystem c-Class」を利用した。

 「ブレードの採用を考えたのは、何より省スペースであること。サーバは工場内のマシンルームに設置されるため、スペースをとらない方が都合がいい。また、サーバルームの排熱余力も限界に近づいているので、省電力であることも魅力だった」と、川神氏は選択の理由を説明する。また、競合機種も検討したが、バックアップシステムが魅力的で、もともとDNP社内で評価の高かったストレージと同じHP製品を提案したCTCの提案力も高く評価したという。

 「京都工場ではIT担当者は兼務で1人しかいない。何があってもすぐに対応できるというワンストップな状況にするためシステム全体をHP製品にまとめたいと考えていた。当社の別システムでもCTCにお願いしているものは多いが、その提案力は非常に優れているものがある」(川神氏)。

image 京都工場のPhoenixシステム構成図

 京都工場の6基のブレードサーバの構成は、DBサーバ、DBバックアップサーバ、Webサーバ、アプリケーションサーバ、ファイルサーバ、予備機(DBサーバ以外のサーバ用)という構成になっている。予備機が用意されていることからも分かるとおり、DBサーバおよびほかの用途のサーバのどれかに障害が起こった場合には代替処理が行なわれる。これにはHPのRDP(Rapid Deployment Pack)を利用しているという。365日の稼働が工場の生産能力を左右することにもなるため、可用性の確保は大きなテーマの1つだ。

 また、川神氏は運用管理の視点からも新システムを評価していると話す。「実際に運用してみると、障害は滅多に起こらない。問題はごくまれに発生する障害に適切に対処できるかどうかだ。このとき滅多に使わない運用管理ツールを利用することになるが、それでも直感的に理解できるインタフェースが提供されていることは大きな魅力だ」

 実際の運用現場ならではのユニークな視点からの評価と言えるだろう。

 今後、DNPでは、京都でのシステム移行が成功裏に完了したことを受け、よりシステム規模を拡大した形で上福岡工場のシステムを更新するという。この更新では、合わせて上福岡−京都間での災害対策システムを導入することも計画しているという。ブレードの機能をより一層活用するかたちのシステムになる予定だ。


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提供:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年11月14日