ジョブズ氏、タキシードで登場――カリスマが幻の次世代PCをアピール温故知新コラム(1/2 ページ)

世の中に登場して半世紀しか経たないコンピュータにも、歴史が動いた「瞬間」はいくつも挙げることができる。ここに紹介する「ビジュアル」もまさしくそのひとコマ――。

» 2007年10月24日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

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アップルを離れたカリスマ

 「私たちは次の10年間のコンピューティング・ニーズをとらえたパソコンを開発した」

 ステージにひとりスポットライトを浴びて立つタキシード姿のその男がこう言い放つと、2,500人を数えた聴衆から大きなどよめきの声が上がった。

 その男の名は、スティーブ・ジョブズ。米アップルコンピュータ社の創業メンバーで、世界中に根強いファンを持つ「Macintosh」を生み出し、さらに最近では携帯音楽プレイヤー「iPod」でデジタル家電市場に新風を巻き起こすなど、常に時代の先端を走って革新的な商品を世の中に送り出してきたパソコン界のカリスマのひとりである。ここで紹介する写真は、そんなジョブズ氏が1980年代半ばからおよそ10年間、アップルを離れていた時期に推し進めていた一大プロジェクトの、日本でのキックオフ・イベントのひとコマである。

タキシード姿で自ら「NeXT」を実演

 時は1989年7月10日。東京ディズニーランドに隣接する千葉県浦安市の東京ベイNKホールでそのイベントは開催された。主催は、当時ジョブズ氏がCEO(最高経営責任者)を務めていた米ネクスト・コンピュータ・システムズ社(NCS)と、日本市場の事業展開で同社と独占パートナー契約を結んだキヤノンの両社。アップルを離れたジョブズ氏が心血を注いで開発したネクスト社の新製品「NeXT」が日本で初めて披露され、しかもそのプレゼンテーションをジョブズ氏自らが2時間にわたって行うとあって、会場は招待客や業界関係者でぎっしりと埋め尽くされた。

 いよいよイベント開始。まず驚かされたのは、ジョブズ氏がタキシード姿で登場したことだ。当時すでにパソコン界のカリスマ的存在だった同氏は、ジーンズを履いたカジュアルな格好がトレードマークだっただけに、筆者も思わず目を疑った。しかもこれがまたよく似合っている。もともとハリウッドスターを彷彿とさせるハンサムな顔立ちで背丈もスラリと高いので、何とも見栄えがいい。ステージにひとりスポットライトを浴びて立つジョブズ氏を見ていると、何かのショーを観ている気分になった。それが演出だったのだろう。

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