「丸井のエポスカード」を支える高信頼システムの秘密とは?止まらない、という絶対価値

カード事業を支えるシステムは、ミッションクリティカルな分野の代表格である。24時間365日の稼働とリアルタイム処理が求められ、たとえサーバを更新する際にも基本的には停止が許されない。「エポス(EPOS)カード」を提供するマルイグループでは、その要件を満たすため、HP Integrity NonStopサーバをシステムの中核や関連機能部分に採用している。

» 2007年10月25日 10時00分 公開
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 若い世代を中心に広く親しまれている「赤いカード」の丸井は、1960年に日本で最初のクレジットカードを発行した。2004年に丸井はカード事業を分社化し、連結子会社のマルイカードが設立された。さらに2006年には、カード名および会社名を「エポスカード」と改め、同時にビザ・インターナショナルと提携し、VISAカードとしての機能も兼ね備えるようになっている。

 エポスカードを支えるシステム基盤に関しては、同じくマルイグループのエムアンドシーシステム(以下、M&C)が構築や運用を担当している。同社は、エポスカードのみならずマルイグループ各社のシステム基盤を支えている情報システムサービス企業だ。M&C ネットワーク開発本部 ネットワーク開発部の3人に、エポスカードを支えるミッションクリティカルシステムの構築・運用について語ってもらった。

顧客と接するための2つのシステムにNonStopサーバを採用

photo 株式会社エムアンドシーシステム ネットワーク開発本部 ネットワーク開発部 部長 久田幸史氏

 現在のエポスカードのシステムは分社化に先立つ2003年に構想をスタート、2004年に運用を開始したものだ。このとき、サービス面から24時間365日のシステム稼働が不可欠となるため、HP Integrity NonStopサーバ(以下、NonStopサーバ)が採用された。

 ネットワーク開発部の久田幸史部長は、「NonStopサーバは、まず、お客様のカードの利用状況を確認する(与信)機能と決済機能に使用しています。

また、NonStopサーバはもともと対外的な接続に適したサーバですから、他のクレジットカード会社や信用情報機関への接続機能にも使っています」と説明する。つまり、「顧客向けサービス機能」「対外的接続機能」の部分をNonStopサーバが担っているというわけだ。

 一方、エポスカードに関連するシステムでは、もう一つの「顧客向け」にもNonStopサーバが用いられているという。

 「Auto Call System、略してACSと呼んでいる債権回収の独自アプリケーションのシステムです。お客様に向けた機能であることは同じですが、ACSはお支払のご案内を行うコールセンター業務で用いられています」(久田氏)


photo NonStopサーバを採用した2つのシステム ※クリックすると画像を拡大表示します

カード業務の基幹を支える「24時間サーバ」の運用実態

 では、まず与信・決済業務でのNonStopサーバの使われ方をみてみよう。

 最も代表的な用途は、利用時の与信機能だ。クレジットやキャッシングのリクエストに対し、カードの限度額などの情報からシステムが瞬時に判断を下すオンライン処理である。

 このシステムでは、当初から24時間サービス提供が求められていた。最初は、24時間のキャッシングを実現するためだった。そこで、24時間サービスの部分をNonStopサーバで処理するようにした。それゆえ、M&Cの社内では、このNonStopサーバを「24時間サーバ」とも呼んでいるそうだ。

photo 株式会社エムアンドシーシステム ネットワーク開発本部 ネットワーク開発部 ネットワーク開発2担当
課長 小西光人氏

 「近年ではコンビニATMなどが増加し、24時間のキャッシングサービスが強く求められています。そこで、他のサービスに先んじて、まずキャッシングから24時間対応を進めることにしたのです。やはり、NonStopサーバの一番の良さといえば『止まらない』ことです。ハードウェアは各コンポーネントのレベルで多重化されており、非常にすぐれた耐障害性を備えています。また、当社では、それ以前から通信系の機能などでNonStopサーバを使っていたことがあり、その実績からも24時間サーバとして安心して使えるものと確信していました」と、ネットワーク開発部 ネットワーク開発2担当の小西光人課長は説明する。

 採用されたのは、当時NonStopサーバの最新モデルだった「HP NonStopサーバ S7800」。NonStopサーバは通常は1システムでも非常に優れた高可用性を実現するが、丸井では原則としてシステムを二重化することで可用性を確保するポリシーの元、2システムの冗長構成を採用した。当初は1システムあたり6CPU構成としたが、2006年3月の次期顧客システム本番稼動に伴う業務の拡大に備えて8CPUへとリソースが強化された。

 先に説明したように、エポスカードのシステムは構想から構築まで1年あまりで本稼働を迎えている。金融系の処理を担う重要なシステムながら、構築やリソース強化などは迅速に行われていると言えよう。

 「機種決定からサービス開始までは半年というスピード開発でしたが、導入の際のHPさんの手厚いサポートもあり、オンスケジュールで本番稼動を迎えることができました」(小西氏)

 M&Cでは、これまでNonStopサーバを使ってきた経験から、NonStopサーバのソフトウェア開発には慣れていた。また、通信系機能などは既存のソフトウェア資産を流用することができ、新規開発が必要な部分に絞って人的リソースを集中できたことも、短期開発を実現した秘訣と言える。

 「まれに一部のコンポーネントが、物理的に故障することはありますが、多重化されているので、業務には支障がありません。カードシステムの基幹に関わるため、当社のポリシーとして2システムで冗長構成としましたが、CPU増強作業による切替以外では、幸いなことにバックアップ機の出番はまだありません」(小西氏)

コールセンターが求める「止まらない」運用を実現するためのNonStopサーバ

 続いてACSアプリケーション、すなわちコールセンターでの債権回収業務におけるNonStopサーバの役割をみてみよう。

 ACSは、支払いが遅れているお客様に対し、エポスカード側から入金のご案内を行う際に用いられるアプリケーションで、M&Cが独自に開発したものだ。ACSはコール対象のお客様の情報(顧客属性、債権情報等)やお客様との交渉履歴等を管理しており、加えてカード基幹系システムから日々の入金データや新たにコール対象となったお客様の情報を受け取って、朝の業務開始前にデータベースに格納するバッチ処理を主な役割としている。

photo 株式会社エムアンドシーシステム ネットワーク開発本部 ネットワーク開発部 ネットワーク開発1担当
課長 森川英司氏

 ACSにNonStopサーバが必要とされる理由を、ネットワーク開発部 ネットワーク開発1担当の森川英司課長は、次のように説明する。

 「このオートコール業務は、丸井店舗における営業と同様にお客様との会話が重要な位置付けとなっております。ACS画面でお客様の情報を確認しながらお話をさせていただいておりますので、その最中にシステムがダウンしてしまっては大きな問題になります。その意味で『止まらない』ことを重視しています」

 ACSの前身となるアプリケーションは1984年にまで遡るという歴史の長いソフトだ。かつては一般的なクライアント/サーバ型システムとして構築されていたが、1999年に「止まらない」ようにとNonStopサーバ「HP NonStopサーバ S7000」(当時は「NonStop Himalaya」ブランド)を採用し、安定性を確保した。

 しかしその後、カード業務の拡大に伴って、新たな課題が持ち上がってきた。S7000の処理能力では対応が難しくなってきたのだという。

 「月に1・2回のピーク日に大量の新たなコール対象のお客様情報をACSサーバに送信し、業務開始前のバッチ処理でデータベースに格納する処理があります。S7000の処理能力ではバッチ処理に時間を要し、コールセンターの業務開始に影響することがありました。新たなコール対象顧客の発行日には、どれだけ多くのお客様にコールできるかが入金率に大きく影響しますので、ピーク日でも業務開始に影響が出ないようにバッチ処理においても処理能力の高いサーバを要望しておりました」(森川氏)

 そこで2007年7月、最新の「HP Integrity NonStopサーバ NS16000」へと移行した。NonStopサーバの中でも、NSシリーズはインテル Itanium 2プロセッサを搭載しており、従来のMIPSベースのCPUを用いたSシリーズより処理能力が格段に向上している。ACSでのニーズには、まさにうってつけのサーバということになる。

 新たなCPUとアーキテクチャを採用して性能を高めつつも、HP Integrity NonStopサーバはアプリケーションの互換性を非常に高いレベルで維持している。今回の移行作業に際しても、特に大きな問題はなかったという。

 「入れ替え作業は非常にスムースでした。大量のプログラムを書き直す必要もなく、そのまま移行することができました。とはいえ、もちろん慎重に作業を進めてまいりました。例えば、バッチ処理後の各テーブルの内容を旧サーバにおける処理結果と新サーバにおける処理結果を全量付け合せることで相違のないことを確認してきました。さらに、ACSのユーザーであるオペレーターなどにも参加してもらい、実業務レベルでの検証も行いました」(森川氏)

 今回のリプレースの際、業務やデータの検証に次いで大きな懸案だったのは、データそのものの移行作業だったそうだ。システム上には過去のやり取りの内容などが蓄積されており、膨大なデータ量になっていた。しかしエポスカードのコールセンター業務は1日たりとも止められない。

 「HPさんから仮想テープライブラリ『VTS』のサービスがあったので、データ移行も短時間で終えることができました。また、開発時にもいろいろとサポートを受けています。トラブルなく短期間で移行できたのは、こうした協力を得られたおかげですね」(森川氏)

 新サーバへの移行の結果、ACSの処理能力は飛躍的に向上した。懸案だったバッチ処理も、業務開始前に間に合う時間で終わるようになった。

 「新サーバでは、5分の1くらいにまで処理時間が短縮されています」と森川氏は言う。

 また、クライアント端末やプリンタなどの機器環境は以前のままだが、業務終了後に出力する請求書の印刷時間も3分の1ほどになり、画面展開処理などのレスポンスも早くなり、オペレーターの業務効率も向上したという。

今後も拡大する「カード業務システム」におけるNonStopサーバへの期待

 なお、ACSに関しては、処理能力の面からか、オープン系へ移行することを考えていた時期もあったという。

 「しかし、お客様との接点となるシステムですから、やはり『止まってはいけない』のです。結局、NonStopサーバを選び続けて正解だったと考えています。OSなどの環境が大きく変わったにもかかわらず、アプリケーションの互換性も高く、これまで開発したソフトウェア資産をそのまま活用することができたことは、コストや開発期間の面からみても良かったと思っています」と久田氏は言う。

 森川氏も、「NonStopサーバでなかったら、このような結果にならず、もっと苦労したことでしょう」と感想を漏らす。

 M&C 開発本部 ネットワーク開発部では、NonStopサーバ、特にNSシリーズに対し、多大な信頼を寄せていることが伺える。それは、長年の実績に裏打ちされたものだ。また、同時に、彼ら自身も高度に使いこなすノウハウを蓄積してきた。

 久田氏は次のように語っている。

 「NonStopサーバは1987年頃から使ってきて、日本企業の中でも使い込んでいる1社だと思っています。これまでの稼動実績で信頼感がありますし、我々には長年培ってきたノウハウが蓄積されています。今後、エポスカードをお客様のメインカード化させていくことを、マルイグループは常に考えていかねばなりません。そのシステムを構築していくのが、我々M&Cの責任。今後も新たな決済機能や外部との接続機能をはじめとしてNonStopサーバを前提としたシステムの開発に、これまでのノウハウを活かしつつ、効率的に進めていくことが必要です。NonStopサーバの果たすカード業務システムでの役割は、今後ますます大きくなっていくと考えています。」

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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年11月24日