Microsoftは、SOAへの参入が遅かったものの、着々と歩みを進めているようだ。
ワシントン州レドモンド発――サービス指向アーキテクチャ(SOA)分野に他社より遅く参入し、いまだ頭角を現していないMicrosoftだが、戦略は着々と練られているようだ。
Microsoftは、現地でSOAおよびビジネスプロセス関連のカンファレンスを開催し、現行のビジネスアプリケーションモデリングを大胆に変更して、顧客がSOAをより有効に活用できるようにしたいと話した。
同社は手始めに、サーバ、サービス、フレームワーク、ツール、リポジトリという5つの中核的な既存製品分野を拡張し、性能および機能を強化したSOAを提供していくという。
しかし、同社のSOA戦略を成り立たせる、「Oslo」のコードネームで呼ばれるコア技術はまだ大部分が公開されていない。批評家の中には、Microsoftのプロプライエタリ的なアプローチのせいで、顧客がSOAの利用を拡大させていく可能性が制限されてしまっていると指摘する者もいる。
SOAは、ソフトウェア開発者が既存のコードを再利用して新たなアプリケーションを製作するのを可能にし、ひいては企業の時間と資金を節約する技術だ。MicrosoftはSOAのこうした利点を、「Microsoft Dynamic IT」のモデル駆動型およびサービス化対応原則に基づいて、社内全体は言うに及ばず、ファイアウォールを超えた社外にまで波及させようとしている。
コネクテッドシステムズ部門の製品マネジメント担当ディレクター、スティーブン・マーティン氏によれば、Osloは、モデルがアプリケーションを定義する枠組みから、モデル自体がアプリケーションとなる枠組みへ、モデリングを変えるためのものだという。
「モデルそのものがアプリケーションにならなければいけない。社内でしか利用できないモデリングツールには、根本的な欠陥があると考えている」(マーティン氏)
そうした考えの下、Microsoftは同社のモデル駆動型開発ツールとWCF(Windows Communication Foundation)およびWF(Windows Workflow Foundation)を統合し、「モデリングに対して総合的なアプローチを試みている」(マーティン氏)のだという。
このアプローチがモデリングの使用を平等化し、Microsoftの「Software plus Service」戦略を実現すると、マーティン氏は説明している。
「あらゆる企業において、任意の2人の人物が協力して1つのソリューションを開発し、それを内外に提供できるようになるまで、われわれは歩みを止めないつもりだ」(マーティン氏)
開発者が社内向けおよび社外向けプロジェクトをうまく連係させられるよう、アプリケーションプラットフォームを拡張する革新的なOsloは、MicrosoftのSoftware plus Service戦略をさらに加速させるだろう。
同社のアーキテクトであるジョン・シューチャック氏はeWEEKに、「世界初の連携アクセスコントロールシステム」をデモンストレーションして見せ、Webサービスを介して、それぞれの企業のファイアウォール越しにアプリケーションを連動させる方法を示した。「すべてをポリシー駆動式にした」と、同氏はその仕組みを説明している。
またMicrosoftは、「.Net Framework 4」とともに、WCFおよびWFのモデル駆動型開発に関する成果物もリリースする予定だ。ツールのサポートには、「Visual Studio 10」に搭載する新技術を用いる。この新技術は、分散アプリケーションのモデル駆動型設計用の新たなツールを介した、エンド・ツー・エンドのアプリケーションライフサイクル管理を改善する目的で、Visual Studioに搭載されるものだ。さらに、「Server and Tools」製品セット全般でメタデータリポジトリを連係させるため、投資も行っていくつもりだという。
Microsoftによるデモンストレーションでは、インタオペラビリティ、Web 2.0サービス、ID規格、ワークフローの追加的なサポートなどを実装した、「Microsoft BizTalk Services」のコミュニティー技術プレビュー版も紹介された。
同製品のバージョン6は従来通り、分散化され、スケーラビリティに優れたSOAおよびビジネスプロセス管理(BPM)ソリューションの基盤となり、コンポジットアプリケーションを開発、管理、配置する機能を提供するものになる。
「Microsoft System Center 5」とVisual Studio 10およびBizTalk Server 6は、モデルの管理やバージョンニング、配置などに、リポジトリ技術を利用する予定だ。
Microsoftは、.Net Framework 4やVisual Studio 10といった技術の正確なリリース期日は明らかにしていない。そもそも、.Net Framework 3.5もまだ出荷されていない。
ZapThinkのアナリスト、ジェイソン・ブルームバーグ氏は、MicrosoftのOsloが実現する、アプリケーション開発に対するモデル駆動型アプローチを高く評価している。モデル駆動型アプローチを採用した複数の製品で、アプリケーション開発法を一本化することにより、同社はSOAの重要なベストプラクティスを生かせるようになるのだ。
ブルームバーグ氏はその一方で、Microsoftのプロプライエタリ的な姿勢は企業顧客に利益をもたらさないと述べ、厳しく批判している。「Oslo戦略は、基本的に標準に基づいていない。モデリングのフォーマットもリポジトリのインタフェースも、すべてプロプライエタリだ。Microsoftは正しい方向を目指しているが、Osloは企業のSOAに対する取り組みには本質的に適していない。同社は、主要な顧客ベースに自社ソリューションの価値を説くことに力を入れると同時に、企業から大きなチャンスを奪おうとしているのだ」(ブルームバーグ氏)
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