現状の出願済みLinux特許に対する一考察Trend Insight(1/2 ページ)

Red HatとNovellが特許権侵害で提訴されたことでLinux業界は色めき立っている。ところで、この種の特許侵害訴訟はLinux全体にとってどの程度の危険性を秘めているのだろうか?

» 2007年11月08日 08時30分 公開
[Danny-R.-Graves,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 Acacia Technologies Groupが同グループの有する3件の特許をRed HatおよびNovell版Linuxが侵害したとして起こした特許侵害訴訟以降、Linux業界は色めき立っている。ところで、この種の特許侵害訴訟はLinux全体にとってどの程度の危険性を秘めているのだろうか? 本稿ではその1つの指標として、Linuxに関連する米国特許公報の現状について考察してみることにする。

 一般にコンピュータプログラムの多くは著作権や企業秘密という形態で保護されているが、信号処理やハードウェア制御などの有形な用途に供されていない限り、特許(パテント)として直接申請することはできない。逆に言えばOSも、ビジネスモデルまたはコンピュータのハードウェア制御に関してのものとすることで、その特許を申請することは可能なのである。よってオープンソースないしフリーウェアの形態を取っているLinuxであっても不特定の企業がその関連する特許を出願でき、われわれ第三者がLinuxを特定の用途に使用した結果そうした権利が侵害されたと見なされる危険性を秘めていることになる。

 1つの特許は、要約(抄録)、明細書、請求範囲などで構成されている。特許の要約とは明細書の内容を簡潔にまとめたものであり、特許の明細書とは申請内容のすべてを詳しく書き記したものである。特許の請求範囲については、難解な法律用語が多用されるため、通常は専門家以外には読みこなすことすら困難なものとなっている。

 法律的な観点からは特許の請求範囲が最も重要な意味を有しているが、それは考案内容の何が特許として申請されていて法的な保護対象となるのかが、ここに記されているからである。一方の技術的な観点からは特許の明細書が最も有用であり、それは考案内容についての技術的な説明がここに記されているからだが、請求範囲に見られる専門的な法律用語がそれほど使用されていないからでもある。請求範囲に記されている機能は必然的に明細書にも記されているはずであるが、機能に関する議論は請求範囲ではなく明細書の方で行われることもある。

リサーチに用いた検索の基準と注意事項

 特定テクノロジーに関連する考案内容は特許のタイトルを検索することで見つかることもあるが、逆に考案内容がどのようなものであるかがすぐ分かるようなタイトル(および該当する請求範囲の記載)をつけていない申請者も存在している。これは例えば鉛筆を特許申請するとして、その際のタイトルを「黒鉛を用いた通信器具」としているようなものである。とは言うものの、関心のある内容に関連する特許のタイトル、要約、請求範囲、明細書を検索することは、それなりに有用な結果を得られる場合があるはずである。

 ここではごく単純に、米国国内で取得ないし出願された特許(特許公報にあるもの)を対象にして、“Linux”という用語の使われている、タイトル、要約、請求範囲、明細書を検索してみた。その際の検索用語としては、GNU、Red Hat、オープンソース、フリーオペレーティングシステムなどは指定しておらず、直接的にLinuxという用語が使用されている特許の案件や出願だけをピックアップするようにした。これにより現在の米国におけるLinuxを取り巻く特許の概要がつかめるはずである。

 交付済み特許のデータベースに登録された考案内容については、特許公報のデータベースにも登録されている可能性が高い。これは正式な特許取得後もその申請書は特許公報データベースに残されるため、双方のデータベース間で重複が生じるからである。また特許申請書が公開されるのは(2000年11月29日以降に出願されたものに関しては)出願日の18カ月後になるので、以下の検索を行った本年10月22日時点においては、2006年から2007年の出願物の多くはいまだ特許公報データベースに登録されていないと考えなければならない。

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