バルマーCEO、名物の三連呼を向ける先

Microsoftのスティーブ・バルマーCEOが開発者の質問に直接答える機会が「マイクロソフト デベロッパー フォーラム」で実現した。キャリアの育て方やIT産業とのかかわり方といったテーマにバルマー氏はどういった答えを示したのか。

» 2007年11月09日 15時08分 公開
[ITmedia]

 11月9日、ソフトウェア開発に携わる開発者との意見交換を目的とした「マイクロソフト デベロッパー フォーラム」が都内で開催された。「開発者としてのキャリアの育て方」「今後の技術革新の方向性」「国内IT産業の発展とそのかかわり方」という3つをテーマを基に、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOが回答を示した。

image 「わたしが“Developer”と連呼する有名な動画があるが、あれはいとしい開発者に対するわたしの本音」とスティーブ・バルマーCEO

 冒頭のプレゼンテーションでは、ソフトウェア+サービスのプラットフォームがもたらす世界を紹介しながら、「開発者はこれからより高いセマンティックレベルで仕事をする必要がある」と述べた。同フォーラムの骨子であるこの考えを基に質疑応答が繰り広げられた。

 より高いセマンティックレベルとは何を指すか。バルマー氏は、卑近な例に出張を挙げる。「出張する際、秘書にその用意を依頼するというのが現実のアクション。しかし、プログラムの世界では、『どこそこにある書類をまとめ』『それらをスーツケースに入れて』という断片化したプロセスで進めていく。これを現実のアクションと変わらないものにしていく必要がある」と説明する。

 技術のブラックボックス化が進む中、それは本当に可能なのか。また、ブラックボックスと化した技術の進化に依存しすぎて、人間の能力が低下するのではないかという質問が寄せられた。質問を投げかけたのは、Imagine Cup 2007で日本代表としてソフトウェアデザイン部門に参加した坂本大憲さんなど。

 バルマー氏は、「ユーザーも開発者も現時点では一点の複雑性にしか対応できていない」と話す。続けて、自身が育ったデトロイトの自動車産業を例に挙げ、「かつては多くの人が自動車を構成する各パーツの機能を熟知していたが、今はそれらがブラックボックス化している」と説明。その一方で、ブラックボックス化による高度な抽象化はより高いレベルでの仕事を可能にしたのではないかとも話した。ソフトウェアの世界においても、開発者は緊張関係を維持し、思考停止することなく、別のフロンティアへと思考を向けることで、高いセマンティックレベルが実現するという。

 今後のソフトウェア開発においては、ツールなどの進化がそれを示しているように、確実に分業化が進むであろうとバルマー氏。開発者一般の傾向について、物事の詳細を理解したいと考える人であると定義する。

 「仕事でとある大学を訪ねた時に、研究者の多くが使っていたのは、Windowsでもわたしが気に入らないOSでもなく、MS-DOSだった。各コンポーネントの挙動が詳細に分かるから、というのがその理由だ」(バルマー氏)

 加えて、「偉大な開発者は詳細をよく理解している。さらに優秀な開発者は、全体も見据えている」と述べ、こうした分業化の時代にあっても大局を見る目が開発者に必要であると説いた。

 「もっとも、わたしは大学の最初のプログラムの講義で、自分は(詳細の理解を求める)開発者ではないと気づいたのだが(笑)」(バルマー氏)。

 「とにかく、一番重要なのは開発者! 開発者! 開発者なんだ!」――バルマー氏は開発者への期待をいつもの調子で熱く連呼してフォーラムを締めくくった。

image フォーラムの様子

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ