次に生まれたのは「続きはWebで」というパターンだ。もともと商品名やキャッチコピーをそのまま検索にかけてもらうという行為につなげる手法で、代表的なものはオダギリジョーを起用したライフカードのCMだろう。このパターンの登場は、トラフィックの起点がドメインから検索キーワードへ変化した兆しの1つといえよう。ただ、この時期の広告には、消費者がこのキーワードで検索するに違いないという広告提供側の思い込みや過度な期待でキーワードを選定していたため、多くの企業でこの手法は失敗に終わった。
それを踏まえたのか、最近の広告は「○○というキーワードで検索して」というダイレクトな表現に変わり始めている。しかも、検索するという行為を視覚的に伝えるために、検索ボックスとキーワードを広告に表示するようになった。
ただこの形式においても、キーワードを検索ボックスにタイプする絵や音などを取り入れたCMとそうでないCMでは、前者の方が高い検索回数を獲得するなど、成果に差が生じるという。こうした点に配慮するという基本的な考え方がSEM(Search Engine Marketing)には重要となってくる。
このように、消費者だけでなく広告代理店を含む企業側にも検索エンジンを利用する動きが広がったことを受け、今後は検索エンジン利用の多角化がより進み、検索の進化は過去の10年と比べてさらに大きく加速すると考えられる。
今後出てくるであろう検索方法で筆者が特に注目しているものに、AjaxによるWeb2.0的なユーザーインタフェースを持つサービスや、構造的でありながらファイルとして相互リンクをあまり持たないフォーマットを効率よく検索するRSSフィードを用いて検索する方法がある。
前者は、現時点の主要な検索エンジンがJavaScriptを検索対象としていないことから、SEO的には不利な状態に置かれているという実情がある。Ajaxは利便性の観点では非常に有用だが、検索対象になりにくいことやSEO対策が施されにくいという欠点をはらむ。
後者は、GoogleのPageRankのようなファイル同士のリンク情報を重要視する現状の検索のアルゴリズムでは、検索結果の上位にくることはまずないという問題を抱えている。また、ユーザーがRSSフィードを見つけるにはWebサイトを経由することがほとんどで、RSSフィード自体を検索するケースはほぼないということも課題に挙がる。
ここで述べたのはあくまで検索方法の可能性にすぎないが、このような検索ツールが生まれれば、SEO的に敬遠される傾向のあるAjaxでのサイト構築に弾みがつくし、RSSのような構造的データを使って情報配信する試みの商用化がより進むと考えられる。現にRSSフィードは、巨額の資金を投じてCMを放映し、キーワードを検索させた消費者をリピーターにするために継続的に情報を提供するための最適な手法の1つとして考えられている。
いずれにしても、検索エンジンがトラフィックの起点であると同時に、ATLとBTLを行き来するビジネスモデルのプラットフォームになったという事実は、検索エンジン自体の進化の方向性を占う上で非常に重要なトピックだ。検索エンジンはもはや単なるWeb上の情報を調べるためツールではなくなっているといえる。
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