定年間近の“サーバごころ”女性システム管理者の憂鬱(4/4 ページ)

» 2007年11月15日 07時00分 公開
[高橋美樹,ITmedia]
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 この間までは、たくさんの社員で活気付くオフィスにあって、自分も頼りにされていることを実感していただろう。それが急にみんな引っ越してしまい、机も椅子もないガラ空きの暗い場所に取り残されたのだ。それでも、新システムの移行までは頑張ろう――けなげにそう気持ちを切り替えた矢先に、今度は回線が切断された。

 わたしがそのサーバやルータの立場だったら、どんなにがっかりしただろう。「やっぱり要らないんだ、自分なんて……」。天気が悪くなったりすると気持ちも余計に落ち込み、外の世界との通信もシャットアウトしたくなる。通信不能になれば、誰かしらは駆けつけて相手をしてくれる。そこで、自分が必要とされていることを再確認するのだ。そこまで想像すると、もうすっかり自分がサーバになった気分で、完全にブルーになっていた。

 それから新システムの移行まで2週間近くあったが、その間、やはりそのシステムは2度ほど使用不能となった。そのたびに、わたしかA君がその場に駆けつけ応急処置を施した。もうそのころには周囲も心得たもので、メールのやり取りで用事を済ませることがほとんどだった。

 こうして、いよいよそのシステムを撤去する日が訪れた。総務担当者とともに搬出用の台車持参で営業車に乗り旧拠点へと向かう。そして、暗いオフィス内でインジケータがチカチカしているルータとサーバを終了させる。両方とも新拠点に持ち帰った後に、廃棄されることが決まっている。サーバの方はモニタと本体を外して総務担当者に台車で運んでもらった。ルータは抱えられる程度の大きさだったため、簡易な紙袋に入れてわたしが運び出した。

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 車中、わたしはひざの上にルータを置いた。紙袋を通して機械らしい固さが伝わってくる。しかし、それは同時に、さっきまで動いていたことを主張するかのように、じんわりとしたぬくもりも放っていた。体温といってもいい温かさだ。わたしは思わず「お疲れ様でした」とつぶやいていた。

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