レジ市場に新風を吹き込むネット対応型レジスターカシオとNTTドコモの新しい力

カシオ計算機が新たに発売した「ネットレジ」は、ネットワーク接続やクレジットカード処理などにも対応しながら、思い切った普及価格の製品となっている。そのネットレジを武器に、特に中小規模の企業のチェーン店をターゲットとして新たなサービスを始めたのが、カシオとNTTドコモの合弁で設立されたCXDネクストだ。

» 2007年11月26日 10時00分 公開
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photo 株式会社CXDネクスト 代表取締役社長 尾平泰一氏

 レジスターは、店舗の店頭に欠かせない機器であり、古くから機能とコストのバランスを取りつつ発展を続けてきた。近年ではレジのIT化が進み、複雑かつ高度な機能を備え、センターのサーバにデータを集約できるPOSレジが、コンビニやファストフード店など大手フランチャイズチェーンを中心として広く使われるようになってきた。

 その一方で、レジにあまりコストをかけられない中小規模の企業のチェーン店では、スタンドアロンの電子レジスターがほとんどだ。CXDネクスト代表取締役社長の尾平泰一氏は、「大手と中小とでは、レジや関連システムにおいて非常に大きなギャップがある」と指摘している。

 CXDネクストは、2007年7月にカシオ計算機とNTTドコモが合弁で設立した、まだ新しい会社だ。中小規模の小売・流通事業者に対し、電子マネー決済代行および販売管理支援サービスを提供するのが、同社の主なビジネスである。社名には、クレジットの「C」とデータサービスの「D」を掛ける(X)という意味と、カシオおよびドコモの協業という意味が込められているという。

大手と中小の間のギャップを埋めたい

 尾平氏は、もともとカシオの開発本部システム統轄部に所属しており、主に企業向けのソリューション企画を担当していた。その後は事業開発室長となり、そこでCXDネクストに繋がる事業計画を立案したという。

 「カシオは、電子レジ市場で約40%のシェアを持っています。中でも普及モデルが中心で、価格競争力のノウハウには自信があります。その強みを生かし、事業を立ち上げようと考えたのです」

 普及価格帯のレジは、もっぱら中小規模の企業の店舗で使われる。システムインテグレーションなどは必要とせず、代理店から購入して、商品データなどを入力すれば使えるような製品がほとんどだ。

 「きちんとシステム部門を持ち、集中管理できるシステムを導入して運用していけるような大手とは違い、中小ではネットワーク化も難しい。従って、ブロードバンド時代の今でも、スタンドアロンのレジを使わざるを得ない現状です」(尾平氏)

 レジの高度なシステム化を実現した大手では、売り上げなどの情報をセンターに集約し、その分析結果を経営の効率化に役立てている。しかし、スタンドアロンでは、集計するだけでも大変な作業が必要となる。大手と中小のギャップは、レジの見た目以上に大きなものとなっているのだ。

 「カシオとしても反省があります。大手に対しては手厚いシステムインテグレーションサービスなどを提供してきましたが、中小に対しては足りていないのではないかと」(尾平氏)

 電子レジ業界の中では低価格な製品を中心に扱ってきたカシオだが、売りっぱなしに近い形になっていたという反省だ。そこで、低価格レジと組み合わせて付加価値のあるサービスを提供し、大手と中小のギャップを埋めていきたいという考えが生まれた。この考えが、CXDネクストやネットレジの誕生のきっかけとなった。

一体化されたクレジット決済機能

 ネットレジの機能やCXDネクストのサービスを、具体的にみてみよう。

photo ネットレジ「TE-2500」と電子決済端末「KT-10」
※写真をクリックすると拡大表示します

 ネットレジは、レジ自体の外見や使い方をみれば、他の機種とあまり違わない。しかし、名前の通りネット接続の機能を備えている。カシオの低価格レジでは初の搭載だ。ブロードバンドのインターネット接続を経由して、CXDネクストが管理するセンターと通信することができる。

 CXDネクストでは、ネットレジの管理やデータ集計・分析などを行う「店舗支援サービス」と、クレジット処理を代行する「電子決済サービス」の2つのサービスを提供している。クレジット処理のために、ネットレジには専用オプションとして電子決済端末「KT-10」が用意されており、磁気ストライプの読み取りはもちろん、NTTドコモのクレジットサービス「iD」対応の非接触決済も可能だ。CXDネクストの設立にドコモが関わり、40%の資本を出しているのは、そのためである。

 こうしたクレジット処理には、レジと別の端末を使うのが一般的だった。しかし、レジとクレジット端末の連動ができておらず、両方に同じ数字を入力する手間がかかる。また、入力ミスの可能性もある。これに対し、ネットレジではクレジット決済機能を一体化したため、手間もミスもなくせるのだ。もちろん、設置スペースも小さくて済む。

 「我々としては、学生街の小さな定食屋でも『おサイフケータイ』を使えるようになったら良いなという考えがあります」と尾平氏は言う。

 おサイフケータイは既に広く普及しており、学生でも『DCMX』や『DCMX mini』を使っている人は少なくないはず。もちろん、他のiD対応クレジットも利用できる。電子マネー決済を手軽に実現できることは、店にとっても大きなポイントとなるだろう。

 「さらに、売上高の集計に際しては、クレジット決済分もきちんと管理できるようになっています。既存のカード端末を使う場合には、カード会社からの払い込みを待たねば分からなかった部分です。こうしたメリットが評価され、従来のカード端末とレジの組み合わせから乗り換えたいという小売店、飲食店も多いようです」(尾平氏)

ほぼリアルタイムで売上高の把握が可能

 一方、ネットレジの通信機能を活用して店舗経営を支援するのが店舗支援サービスだ。

 ネットレジはインターネットを介してCXDネクストのデータセンターに接続しており、30分おき(簡易売上データ)および閉店処理の際に売上データを送っている。店舗のオーナーは、CXDネクストのサイトからログインし、その情報を随時把握できるようになっている。データはブラウザ上で閲覧するだけでなく、CSV形式でダウンロードし、Excelで加工することもできる。また、既定の帳票やグラフはPDF形式でのダウンロードも可能だ。大手小売店チェーンがPOSレジを通じて自前のデータセンターで売上高を集計しているのと似たような形を、手軽に実現できる。

 「データ通信は自動的に行われるので、店では特に意識することなく、レジを打つだけです。むしろ、閉店時のジャーナル出力なども不要になりましたから、店舗スタッフにとっては楽になるはずです。データ集計に関しては、現在のところ17種類の帳票、11種類のグラフを提供しています」と尾平氏は言う。

 データ集計に加え、オーナーと各店舗の店長との連絡手段も用意されている。あらかじめ各店長の携帯電話メールアドレスを登録しておき、そこにオーナーからのメッセージを送信できるほか、設定された売上目標に対する遅れが見られた場合には警報を送るなどの機能もある。

 「店長も忙しことでしょうから、いちいち店でPCを立ち上げて売上高をチェックする必要がないよう、携帯電話を活用するようにしたのです。日報も、閉店処理の際に自動作成されるようになっており、オーナーへの申し送り事項などがある場合には携帯電話からでもメモを入力できるようにしてあります」(尾平氏)

 レジ設定の配信機能も、店舗支援サービスの大きな機能だ。商品情報の登録やキーへの割り付けなどは、PC上で設定を作ってCXDネクストのサーバに登録しておくだけでいい。次の開店処理と同時に、その設定が自動的に読み込まれる。

 レシートへの印字内容に、各店舗のメッセージを加えることもできる。現状ではテキストのみの仕様だが、時刻に応じた設定も可能となっており、時間帯によってメッセージを変えるなどの活用が考えられる。

 レジでのデータ入力を減らす工夫としては、オプションの「スキャニングサービス」もある。別途バーコードリーダーが必要となるが、事前に商品登録を行うことなく、商品名をレシートに印字することができるようになる。

 「CXDネクストでは、流通システム開発センターが持つJANコードデータベースを毎月購入しています。レジでコードを読み取ると、自動的にデータベースと照合され、商品情報がレジにダウンロードされるという仕組みになっているため、データベースに登録されている商品であれば、ほとんど手許に登録されたデータと変わらぬ感覚で使うことができます。今のところ、データベースの網羅率などの特性から、残念ながらアパレル系などには向かないのですが、酒や文房具などの販売店には適しているようです。また、ミニCVS店などにも便利だと思います」(尾平氏)

 設置を容易にする工夫もある。ネットレジは、事前に設定が行われており、店に設置してインターネットに接続すれば自動的にセンターとの通信を開始するようになっている。センター側では、接続されたレジを把握し、店ごとの設定情報を送信するなどの処理を行う。

 一方、クレジット情報も、売上高などの情報も、CXDネクストのサービスではインターネット上を経由することになる。そのため、ネットレジには強固なセキュリティも備わっている。NTTPCコミュニケーションズが開発したVPN機能「IP-WARP」を搭載し、トンネリング通信が可能となっている。

photo インターネット上に設けられた安全なトンネル内で、データ通信を行う

 「VPNルータを別に導入するとなれば、導入コストも設置スペースも必要となって本末転倒。そこでVPNソフトウェアを組み込むことにしたのです。ハンディターミナル開発を行っていた時代に付き合いがあったNTTPCが手頃なVPNソフトを持っていたので、それを採用しました」

 なお、サービスを受けるために各店舗でブロードバンド通信環境が必要という仕様は、通信するデータ量の多さによるものだ。iD決済の場合、1万円未満の決済にはオーソリ(購入時与信)が不要で、端末だけで処理できる。反面、iDを採用したため、FeliCaのネガティブ情報を開店処理ごとに読み込まねばならないが、これがかなりのデータ量となるという。素早くデータを取り込むために、ブロードバンドを必須としたというわけだ。

とにかく安価に、使いやすいサービスを

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 こうしたサービスを、かなり安価に利用できるという点も、CXDネクストの大きな特徴だ。サービス価格はCXDネクストのサイトに明確に示されている。ネットレジ自体はオープン価格となっているが、実勢価格は7〜8万円程度。既存の普及価格帯レジを使っている店なら、容易に乗り換えられるはずだ。

 尾平氏は、CXDネクストがターゲットとする店舗について、次のように説明している。

 「300万にのぼるといわれる小売・飲食・サービスの店舗のうち、大手とされるのは100万店ほど。これら大手には情報システム部門があり、システムインテグレーターが入り、きちんとしたシステムを構築しています。一方、我々が考えているのは、残る200万もの大きな市場です。自前のシステム構築が不可能な店舗ですが、レジの市場としては非常に大きな部分を占めます」

 情報システム部門を持てない、それどころかオーナー社長自身が店に立つような小規模店舗までをターゲットにしているのだ。価格を徹底的に抑え込んだのも、そのためである。

 「システムインテグレーターに頼めば、オーバースペックなシステムで工賃や保守料金も高くついてしまいます。大手チェーンのために作られたシステムを中小に落とし込もうとするのが普通だから、致し方ありません。しかし、それでは街の中華料理屋さんなどでは導入できないでしょう。我々がネットレジを買ってもらいたいのは、そういう店なのです。だから、ネットレジの価格も、低価格が売りのカシオのレジ製品群の中でさえ際立っていますよ(笑)」(尾平氏)

 ちなみにカシオとしては今後、中上級価格帯の電子レジもネットレジ化を進めていく方針だという。

 レジの機能やサービス内容についても、そのターゲットを対象に絞り込んだ。特に、導入時のみならず導入後にも手間がかからぬよう工夫しているという。

 「店舗支援サービスでは、特に5店舗くらいまでの小規模チェーンのオーナーを念頭に置いて、サービスを設計しています。このくらいの規模では、オーナー自身が1号店のプレーヤーであったりするのが一般的です。そういう多忙なオーナーを支援したい、というのが、サービスのコンセプトになっています」と尾平氏は言う。

 例えば売上集計に関しても、もっと多彩な集計・分析が可能ではあるが、当初は多忙な小規模チェーンのオーナーにとって最も重要な情報をと考えて、あえて内容を絞り込んだのだという。

 「具体的に言えば、『昨日と今日』『先週と今週』『先月と今月』といった形で売上高の比較をするような内容が中心で、基本的には店舗オーナーの機動力を重視したものとなっています」

 その情報を元に、オーナー自身の経験や勘を加え、例えば明日に向けた仕入れやスタッフへの指示などをより的確に行えるようになるのが、CXDネクストの狙いというわけだ。

 しかし実際、蓋を開けてみれば、狙っていたような小規模な店はもちろん、これまでPOSレジを使ってきたような、100店以上のチェーン店を持つオーナーからも引き合いがあるとのこと。

 「大きめのチェーン展開をしているところでは、パン屋やケーキ屋、総菜屋など、食品の加工販売を手掛ける店に興味を持たれることが多いですね。商品も素材も保存が利かないわけですから、ほぼリアルタイムの売上集計が大いに役立つのだと思います。一方で、専門店的なチェーンですから、店あたりのコストはできるだけ抑えたいという考えもあるでしょう。そこに、ちょうど合ったのですね。現在では、こうしたチェーン店でより使いやすいよう、帳票やグラフの種類を増やしたり、フランチャイズ本部とオーナーの管理画面を作るなどといった機能向上を計画しているところです。とはいえ、我々はフロントエンドに特化していきたいと考えているので、バックヤードとの連携が必要な場合には、そちらの分野で強みを持つベンダーさんとアライアンスを組むことになるでしょう」(尾平氏)

 予想を上回る反響もあったが、今後もCXDネクストの方向性は明確なようだ。尾平氏は、最後に次のように語った。

 「毎日頑張っている中小小売業オーナーさんのために開発を進めてきましたから、ぜひ自信を持って使っていただきたいですね。今後も、『さすがだね』と言われるようなサービス・製品を打ち出していこうと考えています」

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提供:カシオ計算機株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年12月9日