総務省秋本氏、日本のICT投資やSaaS市場の現状を説明

2008年度に導入されるASP・SaaS事業者認定制度に先駆けて、日本はICT投資やASP・SaaS市場の拡大にどう取り組んできたのか。総務省の秋本芳徳氏が説明した。

» 2007年11月28日 20時45分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 11月28日から29日まで東京ミッドタウンで「SaaS World 2007」が開催されている。28日の基調講演「世界を先導するASP・SaaS市場の実現に向けて」では、総務省情報通信政策局の秋本芳徳情報通信政策課長が登壇。日本におけるICT(Information and Communication Technology)投資やASP(Application Service Provider)・SaaS(Software as a Service)市場の現状を振り返るとともに、今後の取り組みや展望を説明した。

image 「世界を先導する市場を作り、ユーザーに使いやすいサービスを提供できれば」と秋本氏

 2004年度の情報化白書によると、GDPに対するICT投資額の割合は米国が3.5%であるのに対し、日本は2.0%。世界平均の2.8%を下回る結果となった。「日本のICT利用産業側は投資額が低い。また部門ごとの投資が多く、独自でカスタマイズを行うため、結果として部分最適しかできていない」(秋本氏)。

 また、「2001年からブロードバンドが普及し、国連でもブロードバンドの先進国として評価されていた日本だが、最近ではインフラ部分の発展に加え、その上に乗るプラットフォーム部分にブレイクスルーが必要」(秋本氏)とされている。ICTによる生産性向上のポテンシャルは高いが、十分に活用していないため生産性が低いサービス産業と、後者は投資余力や利用ノウハウが不十分の中小企業のICT投資を活性化させることが必要と秋本氏は指摘する。

 では日本ではどのような取り組みがなされているか――2007年4月に総務省が発表した「ICT改革促進プログラム」では、日本経済の新たな成長要因として、ICT産業の国際競争力強化やICT分野の構造改革などを掲げている。その具体例としてASP・SaaSやネットワークサービス普及のための環境整備などが挙がっている。

 ICTに詳しい人材が少ないとされる自治体や中小企業、学校などにどれだけICTを普及させるかにASP・SaaS市場の拡大はかかっている。だがこれらの多くは、ASP・SaaSの意味や役割、どういう事業者が提供しているのか、評価や選択はどうすればいいかについて明確な回答を持っていない。

 一般の利用者によるASP・SaaSの評価・選択を支援するため、総務省は「ASP・SaaSの安全・信頼性に係る情報開示指針」第1版を策定し、指針を満たす事業者の認定制度の整備を行う。また2008年1月をめどに、総務省研究会をふまえ第2版を公表、来春には「ASP・SaaS安全・信頼性認定制度」の創設を目指す。

 「幾つかのASPやSaaSのサービスを実際に確認して感じた感覚は、インターネットの商用サービスが始まったときに“これで(日本は)変わる”と感じたものに似ている。多くのサービスや機能が端末側からネットワーク側へ移行しているのは画期的なこと。これを一般のユーザーにも分かりやすく使ってもらうための普及活動を進めるのがわれわれの役目」と秋本氏は締めくくった。

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