「和」の文化をグループウェアで世界に届ける日本のインターネット企業 変革の旗手たち(2/2 ページ)

» 2008年01月01日 00時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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米国企業のまねではない「長期視点」の企業に

「わたしが社長を退いた後の企業に対して何ができるのかを考えたい」と青野氏

ITmedia では、GoogleやMicrosoftに勝つために、どういった戦略を考えているのでしょうか。

青野 われわれが今目指しているのは、トヨタ自動車や松下電器産業のような永続的に成長していけるメーカーになることです。日本のIT企業というと、どちらかといえば米国のネットサービスを後追いするようなものも少なくないですが、彼らと同じ戦略やマネジメント手法が必要だと思っていましたが、自動車産業におけるトヨタ自動車の今のポジションを見るに、必ずしもそれが正解ではないようです。

 「長期視点」というのが一番ふさわしい言葉であると思いますが、短期視点ではなく、じっくりと腰を据えて「いいソフトウェアをつくる」、そしてそれを広めていく。この2つをコツコツと積み重ねていくことで生き残っていけると考えます。わたしが社長の間にどれだけこの企業を変えられるか、ということではないのです。わたしが社長を退いた後の企業に対して、今わたしに何ができるのか、ということなのです。

 また、よくIT業界はドックイヤーと呼ばれ、IT企業にはスピードが必要である、という考えがあります。もちろん社会が変化を続けている以上、企業も変化し続けていく必要がありますが、そのスピードが合っていること、つまりは時代に合わせて変化していける企業であることが重要だと思います。

会社は「集団」、そこに集う「分かりません」と言える人

ITmedia 青野さんにとって、会社とはどういった定義なのでしょう。

青野 会社は「集団」であると考えています。つまり、同じビジョンを共有する人の集まりです。会社が人の集まりであるということは、そもそも「会社は誰のものか」という議論が立脚しません。人は人に隷属するわけではありませんので。

 

ITmedia つまりは集団を構成する「人」こそが重要であるということですね。その考えに至ってから、採用方針などに変化が出てきたのでしょうか。

青野 従来はベンチャー気質も強く、即戦力となる中途採用を中心に行っていましたが、長期の成長を考えるなら、会社を担う次の世代を育てるという考えが必要となります。昨年は19人の新卒を採用し、この4月に入社してきました。もちろん即戦力にはなり得ませんが、これは長期の成長を考える上では必要なことです。

ITmedia サイボウズは今、どういった人材を欲していますか。

青野 サイボウズでは採用面接で、物事の真理を問うような質問をすることがあります。優秀な人はそうした質問に対して見事な答えを返してきますが、必ずしもそうした人だけで会社を作りたいとも思っていません。むしろ、そうした質問に対して素直に「分かりません」といえる方と一緒に仕事をしたいと思います。分からないときに分からないといえることは1つの才能で、素直にこうべを垂れることができる人はコツコツと伸びていくと考えるからです。

ITmedia 近い将来、導入しただけでチームワークが生まれてしまうようなグループウェアをサイボウズが出してくれることを期待したいところです。

青野 おっしゃるとおりですね。トヨタ自動車の現社長である渡辺捷昭さんは、「どんな運転の仕方をしても故障しない車を作れ」といったビジョンを掲げておられます。自動車は運転次第では危険なものにもなりますが、メーカーからすればそこはドライバーの問題であると考えたくなるものです。しかしそれすらも内包しようとする。ここは大いに共感するところです。

 ユーザーが何も意識せずとも、導入しただけでチームワークが生まれてしまうグループウェアを作ること、言い換えれば、「世界にチームワークをもたらすのはサイボウズである」という使命感を持ち、グループウェアで実現できることがある限り、グループウェアをこれからも深掘りしていきます。

4月には開発拠点を愛媛県松山市に置く予定。「長期でいい物を作り上げていくためには山にこもれ」と笑う青野氏
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