Sambaプロジェクトがすべてのオープンソース開発者にWindowsプロトコル文書を提供へ(2/3 ページ)

» 2008年01月09日 08時00分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

契約の要点

 Sambaプロジェクトは、PDF形式の契約書本文と、Microsoftの当初の文面と最終的な契約内容との相違点を示した注釈付きの版とを公開した。契約書の法律用語文章は読む気がしないという人には、トリジェル氏によるまとめも用意されている。アリソン氏は取材に対して「基本的にはこれはNDA(秘密保持契約)だ」と説明した。

 契約書ではFile/Print(ファイル/印刷)、User and Group(ユーザーとグループ)、General Networking(ネットワーク一般)に分類されたプロトコルが20ページに渡ってリストアップされている。この契約の下では、ライセンシーは申し込み日から10日以内に希望する文書を受け取ることができることになっている。また、サービスパックのリリース時には最初のβ版のリリース時(あるいは最終版のリリース時の15日以上前)までにアップデートを受け取ることができる。さらにMicrosoftは、文書内の誤りや脱落の修正を提供することについても同意している。特に解約がなければ契約は5年間有効であり、その後は契約を延長することもできる。契約の満了後、契約に署名した人は文書を最後に利用してから3カ月間は情報について秘密を保持する義務がある。

 契約には、フリーソフトウェア開発者にとって興味深い点が幾つかある。1つには、これはやや余談になるが、第7節において、文書を使用することによって起こるかもしれない、第三者からのいわゆる知的所有権の訴えからライセンシーを保護することにMicrosoftが同意しているということがある。この条項はMicrosoft自身がフリーソフトウェアに対して特許を行使すると脅迫していることを考えると、皮肉な気がする。

 より重大なこととしては、第5節によって、ライセンシーはこの契約を結んだことを公表できるが、Microsoftが公表することはできないということがある。この規定は、Microsoftが自らの目的のためにライセンシーを利用できないということをより確実にするものだ。つまり例えばMicrosoftがこの契約をもって、独占状態が存在しないことの証拠としたり、ライセンシーが特定の技術や方針を支持していると主張したりはできないことになる。また第10節第5条項(a)によるとライセンシーは、この契約を結んだことで、Microsoftの主張する特許に異議を唱えたりMicrosoftの行動について欧州委員会に申し立てたりすることを禁じられることはないとのことだ。

 もう1つの重要な点は、第5節第8条項において、ソースコードのコメントやコード内の変数については秘密保持契約が適用されないということが明示的に規定されていることだ。この規定がなければ、文書を利用してWindowsのプロトコルと相互運用可能なコードを書くことが困難になったり、元の開発者以外の人によるコードの変更がほとんど不可能になったりするだろう。

 しかしおそらく契約書の中で最も重要な点は、第2節第1条項(b)において、別紙Bに記述されている条件を満たす者――要するに、法人格を有する正式な法人やそれと同等のものか、あるいは個人である場合には現住所が記載されている、役所発行の身分証明書を提出できる者――に対して、ライセンシーがプロトコル文書の利用を二次ライセンスすることが許可されていることだ。SambaプロジェクトがPFIFを設立してフリーソフトウェア開発者が文書を利用できるようにすることを実現できるのは、まさにこの規定があるためだ。実質的にはこの規定は、Sambaプロジェクトの望むところである、文書に対する無制限のアクセスにはおよばないものの、Microsoftが望むよりは多くのアクセスを与えている、妥協の産物だといえるだろう。

 妥協点はもう1つある。それは、ライセンシーやサブライセンシーに対して特許保護が与えられていないとはいえ、添付書類4で、特定のプロトコルにかかわる恐れのある特許が明記されていることだ。アリソン氏によると「Sambaは特許侵害をしていないとわれわれは考えているので、特許についてのリスクはないと思う」とのことなので、特許を明記することに実質的な意味はないのかもしれない。しかしそれでもなお、自分自身で判断したいという人にとっては少なくとも、どのようなリスクを負うことがあり得るのかについての感覚をつかむことができるだろう。またアリソン氏も述べているように、「この契約がわれわれにとって良かった点は、特許のリストを得ることができたということだ。そのリストを確認することで、今後も特許のリスクはないことの確信を得ることができる」ということもある。

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