ERPは何をもたらすのか?ERPで変える情報化弱体企業の未来(2/3 ページ)

» 2008年01月17日 09時30分 公開
[赤城知子(IDC Japan),ITmedia]

偽装の2007年、中堅中小企業で内部統制対応の強化が求められる

 J-SOX法への準拠を期に、大手企業を中心にコンプライアンスへの対応が基幹情報システムの構築においても必須となっている。しかし、本来国内法規制の多くは企業規模に関係なく同等レベルの対応を要求している。経営資源に限界のある中堅中小企業にとって、コンプライアンス対策は大きな課題である一方、バリューチェーンで連携する大手企業の法令順守にも関わることから、2008年は待ったなしで対応を迫られるとIDCではみている。2007年を振り返ると、老舗といわれる食料品メーカーにおける賞味期限の偽装など、不正にまつわる問題が散見され、コンプライアンスの対策と見直しがより一層の課題として認識された1年であった。

 IDCが2007年11月に発表した国内中堅中小企業におけるコンプライアンス市場規模予測では、2006年から2011年の中堅中小企業市場(従業員999人以下の企業)のコンプライアンス投資金額の年間平均成長率(CAGR)は39.6%で、2011年には3613億円に拡大する見込みである。

 中堅中小企業では全体的に財務報告に係る内部統制対策への取り組みが遅れているが、大規模情報企業の連結子会社や米国企業改革法(SOX法)の適用を受ける外資系企業は先行しており、コンプライアンス市場規模の成長を牽引している。

市場規模予測 図4 国内SMBコンプライアンス市場規模予測、2006年〜2011年(Source:IDC Japan November 2007)

 中堅中小企業におけるコンプライアンスの取り組みにおいても、ERPによる導入効果は期待できるだろう。今から10年以上前、オフコンマーケットとしてにぎわった中堅中小企業では、財務会計システムや人事給与システムにパッケージソフトを活用している企業が多いが、販売管理や生産管理においてはオフコン時代に自社開発したシステムをそのまま利用している企業も少なくない。法令順守、コンプライアンス、セキュリティといったさまざまな視点から基幹システムを再構築する際には、これらの要素を鑑みた構築が必須である。安全なシステムを短期で低/定コストで導入しようとする際、経営者によるERPパッケージの選択は拡大するとIDCではみている。特に、中堅中小企業では財務報告に係る内部統制対策への取り組みの遅れが指摘されており、ガバナンス/リスク/コンプライアンス(GRC)管理ソリューションの機能をERPソリューションに付加する動きが活発である。

 財務コンプライアンス管理ソリューションでは、オープンペイジス、オラクル、SAPジャパンなど、主要海外ベンダーが提供するソリューションの導入プロジェクトが、日本のグローバル企業でも進行している。中堅中小企業向けのGRCソリューションビジネスにおいても、米国企業改革法(SOX法)適用対象企業向けプロジェクトなどでの経験やノウハウを生かしたソリューションを提供するベンダーが登場しているほか、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行のように、同業種の中堅中小金融機関向けにコンプライアンス管理システムを提供するユーザー企業が現われている。

 また、財務連結/報告ソリューションでは、国際会計基準や新会社法への対応を目的とした導入が、海外に連結子会社を抱える大企業から中堅企業へと広がりつつある。ただし、日本企業の場合、予算計画を策定する経営企画部門と連結会計業を担う経理財務部門が連携していないケースがあり、シミュレーションや報告の機能を予実管理に生かしきれていないのが現状である。

 中堅中小企業がコンプライアンスを鑑みた基幹システムの再構築においてERPパッケージが有効であるとする理由は、上記のような課題を抱えていることに加えて、それらの課題を解決するために、自社開発型で構築するほど十分な経営資源がない点も大きい。また、法令順守の視点では、基幹システム導入時点での最適化が何年維持できるか分からず、法令が改定されるたびに個別に開発を加えるよりは、監査システムやログといったコンプライアンス機能を備えたERPパッケージを選択することが現実解である。

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