トラブルコールよりバーゲンを優先。でも許して。悲しき女子ヘルプデスク物語(2/5 ページ)

» 2008年01月23日 08時00分 公開
[鐙貴絵,ITmedia]

 「ネットにつながらないって、具体的にどういうことですか?」

相手 「具体的にも何も、ネットにつなげないんです。」

 「いえ、ですから、例えばインターネット(Webページ)が見えないとかですか?」

 余談だが、近頃はWebブラウザでWebページを閲覧することを「インターネットする」と表現することが多いようだ。私自身は、その表現は適切でないと考えているが、初心者を相手にする時は、表現の妥当性よりも「意味が伝わること」を優先している。仕方ないのだ。初心者にとっては「インターネットとメール」という表現が、すなわち「Webページの閲覧と電子メールの送受信」という意味なんだから。これは、マイクロソフトにも責任があるんじゃないか? だって、Windows XPの「スタート」メニューの左上には、Internet Explorerのアイコンに堂々と「インターネット」って書いてあるのだから。

相手 「いえ、それは見えています。さっきGoogleで調べものをしました。」

 え!? 今、「ネットにつながらない」って言ったばかりじゃん。やっぱりユーザーの言葉って信用できない……(不謹慎だけど)。

 とにかくWebブラウズできるのなら、ネットワークの不具合ではなさそうだ。少しホッとした。

 「では、どのネットがつながらないんですか?」

 このあたりから、私の日本語も壊れはじめる。

相手 「だから、メールが送れないんですっ!」

 悲痛な叫び声。同時に、原因が絞り込めた。ネットワークの不具合ではなく、メールサーバがおかしいか、または彼のPCの設定がおかしいかである。でも、メールサーバがおかしいという報告は受けてないぞ。電話でのサポートは見切りを付けたほうが良さそうだという結論に達した私は、「分かりました。今からそちらに行きますから、しばらくお待ちください」と相手に伝え、せっかく持ちかけたバッグを椅子の上に置いて、エレベータに乗った。

 電話に出てしまったことを、エレベータの中で心から後悔する私。今日のバーゲンはお預けか、と覚悟を決めて行ってみれば……。

 何のことはない。「メールが送れない」のではなく「メールの送り方が分からない」だったのだ。メールにExcelファイルを添付する方法が分からなかったらしい。WordやExcelは、[ファイル]−[送信]メニューを選択して新しい電子メールを開き、ファイルを添付して送ることができるのだが、そのメニューがなぜか使えなくなっていたのだ。しかも彼は、「エクスプローラを使ってファイルをメール本文にドラッグ&ドロップする」という方法を知らなかったらしい。

 ほっとするやら、あきれるやら。私はファイルをドラッグ&ドロップして添付する方法を彼に教え「ほら、こうすればできるようになるわよっ」と言い残し、出遅れた時間を取り戻そうと、急いでバーゲンへと向かった。[送信]メニューが使えなくなった原因を究明することなく。あの時の彼、ごめんなさい。解決策へリンクしておくから、許してください。

 ちなみにその彼は、新卒1年目のニューフェイス君。最近では義務教育からPC操作について教えているので、全員がそこそこ使えるように……なっていない。結局、再教育が必要だ。しかし、仕事は待ってくれない。学校で習い、研修も受けているはずなのに、覚えている操作はほとんどないというユーザーもいる。渡されたマニュアルをひっくり返しても専門用語が山のように出てくる。結局、ユーザーたちは自力での解決をあきらめ(あきらめるのが早すぎない? と思うこともあるが)、わらにもすがる思いで、私に電話をかけてくるのだろう。

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