米Red HatのCEOに就任したジム・ホワイトハースト氏は、事業戦略の重要課題に日本での取り組みを挙げる。「ユーザー視点を常に考え、経営に臨む」と所信を表明した。
2008年1月1日に米Red HatのCEOに就任したジム・ホワイトハースト氏の来日に伴い、1月24日に都内で記者会見が開催された。同氏はレッドハットのグローバル戦略や日本市場への取り組みを説明した。
事業戦略について、ミドルウェア製品群に軸足を置く構えを崩さないという。具体的には、仮想化の管理ツールの改善、ミドルウェアを対象にしたサービスの強化などを挙げる。その理由は顧客に対して戦略を分かりやすく訴求することにある。
レッドハットは2007年、企業向けにOS「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL) を広めるための新戦略「Linux Automation」を発表した。仮想化能力を強化したRHEL 5.1の提供や、RHELのオンデマンド方式による利用に取り組んだ。
ホワイトハースト氏によると、幅広い戦略だったため顧客にコンセプトを伝えきれなかったという。戦略の中心に掲げている「アプリケーションがいつでもどこでも動くようなITインフラを提供する」考えを崩さずに、得意のビジネスを強化する。「アプリケーションの根底にある実装という作業を解放したい」――同氏は意気込む。
IT業界には卓越したサービスがない、とホワイトハースト氏は続ける。ボストンコンサルティンググループ時代にIT戦略を担当し、前職のデルタ航空では最高業務責任者(COO)として現場の改善を実施してきた同氏は、顧客サービスに余念がない。顧客は何を求めているかを常に考える経営を目指すという。
特に日本の顧客を重視する。日本が巨大なIT市場であること、サポートに対する顧客の要求の水準が高いことが理由だ。「日本の顧客を満足させられれば、ほかの地域のニーズも満たせる。世界的にもビジネスを拡大できる」とホワイトハースト氏は力を込めた。
「日本では、レッドハット、パートナー企業、OEMの誰が顧客をサポートをするのかあいまいになっている。各企業の言い分が違う、といったことにならないように改善を進める」(ホワイトハースト氏)
経営のテコ入れも進める見通しだ。レッドハットは内部のシステムに比べて急成長したことで、社内の受注システムや更新システムを必要に応じて拡張できなくなっている。システムの改善を進め、社員の訓練も強化する。
Sun MicrosystemsがMySQLを買収した件については、2社のM&Aが持つ影響は詳しく触れず、「必要なのは顧客を常に考えること、企業の拡大が顧客のためになるならM&Aも考える」との見方を示した。
CEOの交代で社内のまとまりがなくなるといった動きは今のところ見られないという。藤田祐治代表取締役社長は「(前CEOの)マットはCEOをジムになら任せられると判断した。ジムは当面、マットの経営を踏襲して社内をまとめる。新たなビジョン作りはこれから」と説明した。
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