スマートフォンに関する2008年の予測 後編Symbian副社長が斬る!(2/3 ページ)

» 2008年02月10日 05時30分 公開
[David Wood,Executive Vice President,Symbian]

14.電子財布としてのスマートフォン

 現在、ロンドンでは「London Oysterカード(ロンドン市内の鉄道、地下鉄、バスなどで現金の代わりに使用できるICカード)」に使われている技術を経由してデジタルキャッシュをやり取りできるノキアの携帯電話端末を使い、500人の通勤客モニターによる「mobile wallet(お財布携帯)」の利用が試みられています。

 非接触型ICの支払い端末は、市内の特定店や施設でも利用できます。この技術は、英国ではまだまだ未発達ですが、日本や韓国では、すでに決済手段の一つとして受け入れられています(おサイフケータイ)。英国でも、2008年末にはお財布携帯の利用がより広まるようになると予想されています。

 携帯電話はユーザーが必ず持って外出するアイテムの一つになると――家に財布を忘れた時よりも、携帯電話を忘れたときの方が取りに戻る割合が高いという研究結果があります――財布と携帯電話を一つに統合することでいろいろなメリットが得られるようになるでしょう。乗車券や飛行機の搭乗券、割引券やお店のポイントカードなど、スマートフォンがさまざまな用途で使えるようになるからです。

15.スマートフォンが新興経済を刺激

 アナリスト達は、携帯電話サービスの新規契約数が今後3年間で10億に上るだろうと予測しています。そのうちの87%は新興経済国での契約になるとされています。この期間中、最も多くの新規契約を獲得するのはインドとされますが、現在成長著しい中国を合わせても、新規10億のユーザーの35%を占めるに過ぎません。

 スマートフォンの増加がこれらの新興経済に及ぼしている影響は、ビジネス分野においてみられます。発展途上国の経済の大部分は、小規模ビジネスから成り立っています。スマートフォンは、こうした起業家たちに顧客やパートナーとのより良いコミュニケーションおよびコラボレーションツールを提供することで、ビジネスの成功を可能にしてくれるのです。

  • マイクロビジネス(小規模ビジネス)は、モバイルベースの注文システムや配達依頼、またより信頼性の高いビジネス処理能力を利用することで、ロジスティック上の問題を解決できる
  • スマートフォンおよびモバイルネットワークは、バンキングサービスが利用できない地域でのマイクロペイメント(小額の電子決済)を促進するためにも利用できる(例えばケニアで開始された携帯電話利用の送金サービス「M-PESA」)
  • 村によっては、起業家が「地域の通信事業者」となり、少額のコミッションと引き換えにコミュニティー全体と電話使用時間をシェアしている所がある。より多くの人々が携帯電話を持つようになるにつれ、こうした地域オペレーターは、他の収入源を見つけるために、データベースサービスに目を向けるようになる
  • インドのケララに住む漁師は、漁獲物の最高値を見つけるために携帯電話を使い始めた結果、利益を8%向上できた。一方、漁獲物の廃棄による損失が減ったことで消費者価格は4%減少した
  • 中国のような国では、多くの人がスマートフォンを使い、余暇時間に携帯電話による株取引している

16.スマートフォンが健康管理を向上

 米国や英国でのモバイルヘルス(モバイル技術を利用した健康管理)の増加によって、最近、同分野でのスマートフォン利用に対して非常に多くの関心が寄せられるようになりました。薬を飲む時間や病院の予約日を通知してくれるテキストメッセージサービス、また、特定の食品が高濃度に毒素汚染されていないかといった医学的質問にテキストメッセージですぐに回答をしてくれるサービスなど、さまざまなアプリケーションが利用できます。

 さらに、「3G Doctor(第3世代携帯電話のビデオ電話機能を使い、医師による診察が受けられるサービス)」のような携帯電話向けマルチメディアアプリケーションは、この分野のエンドユーザーにとって非常に利便性の高いものです。このアプリケーションは、ユーザー経験を向上させるだけでなく、限られたリソースで高水準のサービスを提供するために健康サービス分野が置かれている困難を取り除いてくれる可能性があるのです。

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