SaaSの潮流と普及のための条件(後編)ERPで変える情報化弱体企業の未来(3/5 ページ)

» 2008年02月14日 07時00分 公開
[赤城知子(IDC Japan),ITmedia]

SAPジャパンの中堅企業向けビジネス戦略

 SAPは全世界においてグローバルなチームを編成してSMB市場でビジネスを展開している。国内においては「SAPは大企業向けERPパッケージ」というイメージが定着しつつある中、SAPジャパンでは中堅企業向けのERPビジネスで国産系ERPパッケージと激しい競合を繰り広げつつも、ビジネスの裾野拡大の主戦場をミッドマーケットに見据えている。また、生産管理系の国産パッケージソリューションとSAPの中堅企業向けERPであるBusiness All in Oneの連携ソリューションも増えてきているようだ。

 SAPジャパンでは、SMB向けのビジネスに営業、SE、マーケティング担当など総勢70名を配し、パートナーとのCo-Marketingを実施しているという。SMB市場におけるビジネスは、大手企業向けのビジネスに比べると案件が小規模であることから、とにかく多くの案件を回す必要があり、ユーザー企業を増やしていくことが何よりも先決であるとする。

 また、中堅企業ではIT投資額に余裕がなく、導入の長期化などは即時に顧客企業の経営にダメージとして跳ね返る。そのためSAPでは、独自のSMB向けビジネスの工夫として「実現機能確認シート」を用意している。ERPの導入においては販売管理や購買管理、生産管理といった要件決めに議論が必要である。このベースとして、確認シートを使って機能がない部分がどのような追加コストになるのかなど、事前検討段階でシステムのすべてをユーザー企業が把握できるようにしている。

 従来からのRFPでは要件の内容が緩かったりして、実際の導入時に役に立たないケースもあったが、この確認シートでは個々の要件をピックアップして解決方法とそれに要する期間や価格が明確化される。そのため、導入中の追加コストの発生といった不測の事態による顧客満足度の損失を防ぐことができる。これはSAPにとって有効であるのみならず、パートナーのソリューションベンダーにとっても大きな資産となっている。

 SAPジャパンでは現時点でBusiness ByDesignによるSMBマーケット向けの戦略を語ることができないとしながらも、エンタープライズアプリケーションにおけるオンデマンド化については、「ERP領域でここ1〜2年でダイナミックにオンデマンド化が加速することはないだろう。そのような時間軸を無視すれば、将来的にはERPもオンデマンドデリバリーが当たり前の時代になっていく。地球上にある情報システムの9割は機能単位で見れば標準化されたものであり、オンデマンドデリバリーで不都合はなくなっているはずだ」と取材へのコメントを発した。

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