Sun、500TFLOPSスーパーコンピュータを発表

Sunの新しいスーパーコンピュータ「Ranger」は、最大パフォーマンス504TFLOPS、現在世界最速のIBM製Blue Geneよりも速い。

» 2008年02月25日 10時25分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 何でもよそより大きいのがテキサス州だとすれば、Texas Advanced Computing Center(TACC)の新しいSunのスーパーコンピュータは、まさにその通りだ。

 米Sun Microsystemsと、TACCの拠点となっている米テキサス大学は2月22日、オースティンで式典を開き、新スーパーコンピュータシステムの「Sun Constellation System」を披露した。「Ranger」とも呼ばれるこのシステムは、全米科学財団からの助成金5900万ドルを受けて実現した。

 Rangerは最大で504テラFLOPS(TFLOPS:毎秒504兆回の浮動小数点演算処理)を実現する。ちなみに、世界最速スーパーコンピュータのTop500リストで現在首位に立っている米エネルギー省ローレンスリバモア国立研究所のIBM製Blue Gene/Lは、最大パフォーマンス478.2TFLOPSだ。

 すべての機能がそろった後、Rangerは物理学、天文学、地理、生物学の重要な課題に取り組むことになる。

 米アリゾナ大学物理学教授のダグ・トゥーサン氏は、量子色力学研究チームの一員だ。量子色力学とは、物質を構成する基礎単位であるクォークと、クォーク同士の相互作用を可能にしている素粒子のグルオンとの強力な相互作用について説明する理論。

 トゥーサン教授のチームが現時点でRangerシステムを使って行える実験はまだ限られているが、いずれこのスーパーコンピュータでシミュレーションを行い、例えばさまざまな種類のクォークの集合体判別といった、素粒子物理学の根本的な疑問の幾つかに答えを出したい考えだ。

 トゥーサン教授のチームが優れたデータを生成するためには、現在よりはるかに強力なコンピュータ処理能力を持った高性能マシンを利用する必要がある。

 「限られた統計からは常にある程度の誤差が生じる。そして一般的に、こうした誤差の規模は、生成できるサンプル数の平方根に比例する。従って、こうした統計上の誤差すべてにおいて、以前の4倍のコンピューティングパワーが利用できれば(データの誤差の数は)2分の1に減る。これは非常にエキサイティングだ」と同教授。

 同教授のチームにとって次のステップは、違うコンパイラをテストして、プロセッサの組み合わせを変えた場合のRangerの性能を調べ、その後数週間以内に実運用データアプリケーションをこのスーパーコンピュータに対応させることだ。

 Sunは今回のお披露目によって、スーパーコンピュータとHPC(高性能コンピューティング)の分野に力強く復帰することになる。この市場は何年もの間IBMと、Blue Gene/LなどIBM製コンピュータの独壇場だった。今ではSun、IBMとも、ペタFLOPS(PFLOPS:毎秒1000兆回の浮動小数点演算処理)を突破するマシンの開発を目指している。Constellationはこれに向けたSunの第1歩となる。

 完成版のConstellationはSun Fireブレードサーバラック82台で構成、4000近いモジュールを収容する。Sun Magnum超高密度スイッチを2基採用、288ポートのInfiniBandホストインタフェースと次世代Mellanox Technologies HCA(High Contrast Addressing)を備える。Rangerは最大で123Tバイトのメモリ、1.7Pバイトのストレージに対応する。

 このお披露目は、IT業界がAMDのクアッドコアOpteronプロセッサを間近で見るチャンスでもある。Opteronは2007年の登場以来、問題続きだった。2月22日のイベントは、ほかのメーカーがクアッドコアOpteronを搭載した汎用サーバを発売する前に、大型システムに搭載されたOpteronをプレビューするチャンスとなる。

 TACCのシステムは計1万5744基のOpteronプロセッサをサポートする。

 SunとTACCがRangerに使っているAMDプロセッサには、AMDが12月に公表したバグがまだ存在する。このバグは変換索引バッファにまつわるもので、2次キャッシュから3次キャッシュへのデータ転送に問題が起きる。BIOSパッチで問題は修正できるとAMDは説明しており、Sunと大学のエンジニアは、システムが確実に機能するようRangerにパッチを適用した。

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