簡易的なLinux用仮想化プラットフォームとしてのLguestLinux Hacks(3/3 ページ)

» 2008年03月05日 00時00分 公開
[M.-Shuaib-Khan,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
前のページへ 1|2|3       

lguestの細部を解説したドキュメント

 drivers/lguest/ディレクトリに用意されているのはREADMEファイルだけだ。ただしこのREADMEファイルの末尾には、上級ユーザーを対象としたlguestを使いこなすためのヒントが記載されている。このファイルの最終2行を注意深く読み進めると「make Preparation!」という記述があるのに気付くだろうが、実はこの場合、まさしくこの文面どおりにmakeのターゲットとして “Preparation”が用意されているのである。すなわちこのディレクトリにて「make Preparation」を実行すると、lguestソースファイルからのドキュメント作成が行われて、その内容がコンソール出力にダンプされるようになっており、このドキュメントこそがlguestの初心者ユーザーをその詳細な動作原理へと導くガイドとして機能するのである。

 業務ないし研究的なニーズを満たすのに適した仮想化プラットフォームというのは、lguestの有用性を示すごく一部でしかない。確かに各種機能の欠落を始め、複数ゲストプラットフォームの未サポートなど、拡張の余地はまだまだ残されている。しかしながらlguestは、ハイパーバイザを試用してみたいというユーザーに対して、過剰な負担を強いることなく実際に動作する仮想化環境を提供できる格好の素材なのである。あるいはそれなりの力量のあるユーザーであれば、lguestを自力でフォーキングさせて、1つの完成されたハイパーバイザに仕上げるというのもよいのではないだろうか。

XenおよびKVMに対するlguestの相違点

 現行リリースのLinuxカーネルにはXenおよびKVMというハイパーバイザも取り込まれている。このうちKVMの実態は、Intel (VT:Virtualization Technology)およびAMD(AMD-V:AMD Virtualization)プロセッサで新規に実装されたハードウェア仮想化テクノロジーにLinuxカーネルを対応させるためのパッチである。これは完全な仮想化に属するため、KVM上で使用するゲストOSについては事前の変更が不要であり、またLinux以外のゲストOSをホストインストレーション上で実行させることもできる。ただしVTないしAMD-V対応プロセッサを用いた仮想化を前提としているため、lguestとは異なりそれらに対応するハードウェアが必要となる。

 一方のXenはlguestと同様の準仮想化モデルを採用しているため、ホスト上で実行させるゲストOSにはパッチを適用しなくてはならない。Xenはハードウェア上で直接動作する関係上、OSの全インスタンスをゲストとしてロードするようになっているが、その中にはホストOSも含まれるため、パフォーマンスがある程度低下する場合がある。なお最近リリースされたXenでは、VTないしAMD-V対応の新型プロセッサ搭載マシンという制限付きで、ゲストを変更不要でロードできるようになっている。この意味においてXenは、準仮想化と完全な仮想化の双方をカバーした混成型のハイパーバイザであるということもできる。


関連キーワード

仮想化 | カーネル | Linux | Xen | Linux Hacks


前のページへ 1|2|3       

Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.

注目のテーマ