ギョーザ事件はシステマチックに防げるのか?食の安全とITを考える(3/4 ページ)

» 2008年03月08日 06時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

食品トレーサビリティの現状

 「トレーサビリティで安全を100%確保するのは難しい」

 日立製作所のトレーサビリティソリューション本部 ソリューション第一部の寺田修司部長は断言する。ITシステムを使えば物流情報などを正確かつ大量に収集したり、データを細かく管理したりできる。しかし、業務フローの中でどうしても人の手が加わる部分がある。例えば、産地での箱詰め作業などがそれに当たる。

寺田修司部長(右)と山田徳三技師 寺田修司部長(右)と山田徳三技師

 同社のトレーサビリティは、農家から消費者までサプライチェーン全体を網羅する仕組みになっており、生産者の特定は可能だ。「しかしITでは、生産、加工、流通などの情報履歴による安全の確保までで、業務に関わる人間の逸脱行為までは管理できない」(同部の山田徳三技師)という。

 導入・運用コストもトレーサビリティの大きな課題になる。トレーサビリティで必須なのが「バーコード」あるいは「電子タグ(RFID)」というタグである。日立はこのRFIDにおいて国内でも有数の企業で、経済産業省の研究委託事業「UHF帯電子タグの製造技術および実装技術の開発」(響プロジェクト)を受託したほか、電子タグ「μ-Chip」が「愛・地球博」の入場券に内蔵されるなど、多くの実績を持つ。バーコードと比べてRFIDの利点は、複数の情報を同時に読み込めることで、物流においては大きな効率化が図れる。

日立が提供する食品トレーサビリティの概要 日立が提供する食品トレーサビリティの概要

 ところが、このRFIDが食品トレーサビリティではネックになる。バーコードを印刷した紙は1枚1円以下なのに対し、電子タグは1個50〜100円程度となる。「食品は単価が安く薄利な上、小規模の食品会社が多いのでこれ以上コストは掛けられない」(山田氏)という背景もあり、普及に際し大きな障壁になっている。同社では、響プロジェクトで1個5円程度のICタグを開発するなどコストに対する取り組みを進めている。

 「(農林水産省の)牛肉トレーサビリティのように、法律化するなど国が主導で取り組まないと、業界への浸透は難しい」(寺田氏)

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