国産サーバのふるさとに息づく熱き“職人魂”ものづくりニッポンの最前線(3/3 ページ)

» 2008年03月12日 00時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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ものづくりは“後ろから”

 FJITの生産ラインは、社員一人ひとりの品質向上への「こだわり」と「気付き」に、最先端の生産技術ときめの細かい確認作業を組み合わせることで高度な品質保証を実現している。

 同社では2003年から「カンバン」方式を導入して、後工程の状況から必要な部品の製造、調達をジャストインタイムで実施するようにしており、過剰な生産や生産プロセスにおける不必要な作業といった「無駄」をゼロに近づける取り組みが続けられている。

「かんばん」にはピンポン玉を利用。部品の製造や生産進捗の確認、応援の可否などさまざまな情報をやり取りし、構内にはピンポン玉を運ぶパイプラインが敷設されている

 完成した製品の品質確認は、レーザー光を利用して不具合を洗い出し、最終確認は人間の目でチェックする。「経験が豊富な人間の手を経ることで、機械には発見できないものを見つける」(現場責任者)。動作試験では気温40度以上の条件で数十時間連続稼働させて安定性を確認する。特に大型サーバやストレージでは、リードタイムに占める品質試験の割合が95%にもなるという。

検品は機械の目にだけに頼らず、人間の経験に拠るところが大きいという(左)。大型装置の動作試験では床下から冷気を送るデータセンターの環境も再現して稼働状態を徹底的に確認する

 始業前の朝礼では、製品ごとに生産プロセスの変更点を担当者全員で確認し合い、ライン脇に設置した「変化点管理ボード」のホワイトボードに「4M(マシン=設備、マテリアル=材料、メソッド=作業内容、マン=人員)」に基づく変更情報を細かく記載して、いつでも確認できるようにしている。変更情報はすべてデータベースに記録しており、不具合が発生した場合にプロセスの変更が原因となったのかどうかをすぐに確認できるようにしている。

担当者の腕にはバイブレータ付きのICタグリーダが装着され、間違った部品を手にするとセンサーが反応して振動で注意を促がす

 また、生産ライン脇には「VPS(Virtual Product Simulator)」と呼ばれる端末を設置する。VPSは作業方法を三次元のコンピュータグラフィック画像で確認できるもので、ネットワークで富士通グループ各地の端末を結んでいる。作業方法に課題が見つかった場合、すぐに現場担当者と開発担当者、評価担当者などがオンライン上で改善について検討でき、リアルタイムで生産体制の改善を実施できるようになっている。

 こうしたさまざまな取り組みによって、FJITでは2004年に比べて生産のリードタイムを平均50%短縮化し、製品によっては70%の短縮を実現した。また、水資源の再利用といった環境対策にも取り組んでおり、同社全体のコストを毎年10%ずつ削減しているという。

 品質向上の取り組みは同社単体だけでなく、富士通グループ全体のノウハウとして共有化を進めており、全国各地の拠点の担当者が集まる会合を毎月1回程度実施しているほか、ほかの拠点の視察などの活動を日常的にしている。

 高田氏によれば、FJITとしての目標、意思の統一は容易ではなく、設立後も全国から参集した社員の考え方が個々に違う点や旧拠点ごとに培われてきた「企業風土」に苦労したという。「文化や気候風土がまったく違う場で活動してきたリソースの統一は容易ではなかったが、これまでの取り組みによってさまざまな問題点が明るみになり、組織間、社員間の壁が確実に取り払われつつある」(同氏)

 今後の目標について、高田氏は「全業務のプロセスをできる限り平準化し、すべて社員が業務に精通している環境を目指したい」と話す。例えば、半期ごとに全社員(約530人)の10%をジョブローテーションする仕組みを検討しており、生産、間接部門の壁を作ることないよう、社員一人ひとりの総合力向上を目指すとしている。

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