INAXの製品たちを支える650台のhTc Z日本企業のためのスマートフォン導入術(3/4 ページ)

» 2008年03月17日 12時30分 公開
[岡田靖,ITmedia]

相反する要求に応えて

 こうして開発されたhTc Zと新FORCEによる構成は、使い勝手の細かい部分も含めて数々の工夫を凝らし、以前の構成よりも洗練されたものになった。hatch Zにはフルキーボードが搭載されているが、PCに慣れた若いCEたちからは、キーボードでも入力操作ができる点について「扱いやすくなった」と評価している。

hTC Z上でのFORCEの操作画面。スタイラスを使った操作とキーボード入力に対応して、年配と若年の双方のCEの操作ニーズに応えた

 また、コールセンターからの作業依頼のショートメッセージを受信すると、常駐プログラムが自動的に作業情報をダウンロードする仕組みにした。従来は、メールを確認してCEがPDAを起動し、ダウンロード操作をしていた。このような機能もスマートフォンならではものだという。作業報告のデータは、端末のカメラで撮影した現場写真を含めて自動的にアップロードされる。

 さらに、現場で利用する携帯型プリンタではA6サイズに対応した新型モデルを導入した。従来のモデルではA7サイズまでしか対応せず、領収書を印刷するだけだったが、新モデルではコンビニエンスストア用の振込用紙も印刷できるようになった。hatch ZとBluetoothを介してワイヤレスで接続し、印刷時の取り扱いが簡単になった。「鞄の中に入れたままでも印刷できる」(間瀬氏)

 アプリケーションを更新する際には、アプリケーション起動時にインストール済みバージョンと更新データを自動的に確認するようにしており、更新がある場合にはボタン操作一つで必要なモジュールだけをダウンロードする。CEが簡単な操作でシステムを最新状態にできるようにした。セキュリティ機能ではデータ暗号化やリモートワイプ機能を利用している。また、無線LANやUSB接続の機能を使えないように設定を変更し、これらのルートからデータが漏えいしないようにした。

 INAXメンテナンスでは今後、CEの支援機能の充実などを進める計画で、例えば顧客の住所データから端末に地図を表示させたり、二次元バーコードを活用して製品のデータベースと個々の修理情報に紐付けし、製品ごとの修理ノウハウを蓄積していきたいという。

 さらに、間瀬氏は他の部門へのスマートフォン導入も考えているといい、「生活回りのサービスも提供しており、セールス担当者が案件の管理や見積書作成などの利用できるよう営業支援端末としても活用したい」(同氏)という。

要求をどう乗り越える?

 スマートフォン導入によって、以前のシステムよりも機能や操作性が向上したが、同社は完全に満足してはいないといい、ベンダー各社にさらなる改善を求める。

 例えば、OSのバージョンアップには手間が掛かるという。同社では昨年末から今年の始めにOSをWindows Mobile 5の最新バージョンに更新した。「導入時は1つ前の世代に安定性に不安があった」(間瀬氏)と言う。端末は全国に散らばっているので、地域単位でCEが集まる月例ミーティングの場を使い、OSの一斉バージョンアップをした。作業にはNTTドコモなどからも応援を得たが、作業を完了するまでに相当な手間が費やした。

 改善を求める声では、各氏はスマートフォン端末に関する内容を挙げた。

 間瀬氏は、「PDAよりも画面が小さく図面データが見づらい。大画面にしたいが、PCにしてしまってはスマートフォンの意味がない」と言う。画面が大型化して携帯性が損なわれれば、意味がないということだ。島田氏は「外部ディスプレイに出力する機能があるので、持ち運びできる小型ディスプレイがあるとうれしい」と語る。

 また、「通話と業務アプリケーションを1台に集約したため、バッテリを酷使するようになり、動作時間が短い」(間瀬氏)、「データ処理のパフォーマンスを高めてほしい」(島田氏)という機能面の向上を期待する声に加えて、「小型になりつつあるとうはいえ、一般的な携帯電話端末に比べればまだ大きい」(葛谷氏)という。

 操作性はCEごとに嗜好が異なるため、端末の選択肢を広がることを期待する。だが、「端末ごとにアプリケーションを用意するなど、情報システム部門に負担がかかるようでは意味がない」(間瀬氏)と、運用性の画一化を期待する。機種ごとに依存する部分をできる限り払拭して、PCのように異なる機種でも利用できる共通のアプリケーション環境を望んでいる。

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