1960年代にIBMが最初のメインフレームをユーティリティコンピュータとして活用したことを踏まえ、なぜ今になってこうした動きが顕著になっているのかを考えてみよう。
カー氏は、大量に電力を消費する新たなアプリケーションが登場し、複数のオペレーティングシステムを1台の物理マシン上で動作させる仮想化技術がそれらの利用を可能にしたことにより、ユーティリティコンピューティングシステムが発達したと説明する。
例えばGoogleは、Linuxを使ってサーバを運用するのに加え、オープンソースの「Xen」ソフトウェアによって同社の「MapReduce」および「File System」インフラストラクチャを仮想化しているという。
さらにカー氏は、Googleのエリック・シュミット氏がSun Microsystemsで最高技術責任者を務めていた1993年に予想した通り、ネットワークコンピューティングが大きな影響をおよぼしていると述べた。すなわち、ネットワークのキャパシティが、コンピュータの処理能力に追いついてきたのである。
今日では、IT管理者がある一個所(データセンターなど)からグリッドを介し、何千何万という人々にコンピュータ処理能力やデータストレージ、アプリケーションなどを配信することが可能だ。まさしく、「ネットワークこそコンピュータ」というSunのスローガンそのものだと、カー氏は述べている。
Web2.0におけるグリッドの個人化が進むにつれ、Salesforceや、SaaSコラボレーションプロバイダーのWorkday、Amazonといった、Web経由のコンピューティングおよびストレージサービスを月極料金で顧客に提供しているアプリケーションベンダーは、さまざまなビジネスチャンスに恵まれるようになった。
3月17日には、Hewlett-Packardも独自のクラウドコンピューティングプロジェクトを発表している。
結局のところ、今日のコンピュータグリッドと配電網にはどういった共通点があるのだろうか。カー氏によれば、それは経済モデルだという。両者とも用途の広いテクノロジーで、これを基にした新しいアイディアや応用は無限と言ってよいほど存在する。
グリッドを主軸とするこうしたネットワーク技術は、きわめてスケーラビリティが高く、コスト削減に大いに貢献する。電気料金と同じく、コンピュータシステムコストも大幅に下落するだろうと、カー氏は語った。
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