ネットワークスイッチのスループットを調査せよ【前編】計る測る量るスペック調査隊(2/3 ページ)

» 2008年03月24日 00時00分 公開
[有地博幸、渡邊義康ほか(東陽テクニカ),ITmedia]

ネットワーク機器の基本性能を測る

 ネットワーク機器の性能を表す指標の中で、最も一般的なものがスループットだろう。スループットの測定方法はRFC 2544*「Benchmarking Methodology for Network Interconnect Devices」で定められている。

 RFC 2544で規定されている測定手法自体は非常に簡単であるが、デバイスそのものが持つフレーム転送の基本能力を見極めることができるため、非常に重要な試験といえよう。ここで測定できるその基本能力が、インターネット上のすべての上位アプリケーション(音声や画像など)に大きく影響を及ぼすといっても過言ではない。

 なお、RFC 2544はその前身であるRFC 1944を改定したものであり、RFC 1944も含めると10年も前に規格化された測定手法である。しかし、それがいまもなお基本性能を測る指標となっている点からも、この試験がどれほど重要であるかがうかがえる。

 まずはこのRFC 2544テストにより、現在における一般的なL3スイッチの基本的な性能を調べてみよう。

RFC 2544テストによるベンチマーク

 RFC 2544ではスイッチやルータなど、ネットワークを構成する装置について、表1の性能を測定する方法が詳細に規定されている。その中で、今回はスループットとレイテンシについて測定を行った。この2つは機器が正常動作している場合の処理能力を表すものであり、機器の基本的な性能を表している。

対象 説明
スループット 対象機器の最大転送能力
レイテンシ フレームが機器に入力されてから出力されるまでの時間
フレーム損失率 スループットを超えた状況での転送能力
連続フレーム 連続してフレームが入力された場合に正しく処理できる限界フレーム数
システム回復 過負荷状態からの復帰に必要な時間
リセット 対象機器がハードウェア/ソフトウェアリセットされてから復帰するまでの時間
表1 RFC 2544中で規定されている性能測定対象

 なお、RFC 2544では64、128、256、512、1024、1280、1518バイトという7つのフレームサイズでそれぞれ試験を行うことを推奨しているが、今回の試験では最小の64、最大の1518、中間の512バイトという3つのフレームサイズで試験を行った。

スループット試験

 対象機器に入力されたフレームをロスなく転送できる最大レート(スループット)を求める試験である。あるレートでフレームを入力してロスなく転送できた場合はレートを上げ、ロスが発生した場合はレートを下げて試験を行い、二分探索アルゴリズムによってロスのない最大レートを測定する(図1)

図1 図1 RFC 2544に基づくスループット試験

 テスト対象ポートは24ポートすべてを対象とし、通信速度は100Mbps(100BASE-TX)、1回の試行時間は60秒で、3回の試行の平均を測定結果とした。フレーム長は前述のとおり64/512/1518バイトの3通りを使用している。

測定結果

 表2が試験対象L3スイッチ3台のスループット試験結果である。3台とも、24ポートすべてにおいて理論上のスループット*を問題なく示した。このクラスのボックス型スイッチは、フレーム転送をハードウェア処理で行っているため、十分な転送能力を有していることが試験によって実証できた。

フレームサイズ 理論値 CentreCOM 8624EL SF-4024FL Apresia 3124GT
64バイト 148809.5 148809.5 148809.5 148809.5
512バイト 23496.23 23496.23 23496.23 23496.23
1518バイト 8127.433 8127.433 8127.433 8127.433
表2 スループット試験結果

このページで出てきた専門用語

RFC 2544

RFCとはインターネットに関する各種技術的情報のこと。インターネット上のさまざまなプロトコルなどが記述されている。RFC 2544ならば、その2544番目。

理論上のスループット

理論上の最大レートのこと。イーサネットの通信速度100Mbpbpsを、フレームサイズ+プリアンプル(フレームの前につけられるヘッダ情報)64ビッビット+フレームギャップ(フレーム間隔)96ビッビットで割ったもの1秒間に最大で送信できるフレーム数、つまり理論上のスループットとなる。


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