NGNは情報通信革命のジャンヌダルクではない「次世代」は幻想か(3/4 ページ)

» 2008年03月25日 08時00分 公開
[エリック 松永,ITmedia]

130年来の革命は大型ダムの再建設?

 NGNの改革には成功事例がある。1999年の第三世代携帯の周波数免許獲得で多額の費用を投入し、巨額の負債を抱え、経営難に陥っていた英BT(ブリティッシュテレコム)である。BTは、2004年にNGN戦略そのものである「21st Century Network Program(21CN)」を発表した。

NGNは大型ダム建設?

 21CNは、回線交換網を中心とした音声通信やSDH網、ATM網などの既存のバックボーン回線を、2010年までにIP通信網に置き換えるという計画だ。成果としてBTでは、毎年20%以上のコストを削減し、2010年には10億ポンド(約2000億円)のコスト削減を見込んでいる。

 通信に馴染みの無い方に簡単に大枠を説明する場合、古くなった大型ダムをコンピュータ制御の最新ダムに作り変えることがNGNと思っていただいて構わない。中心をつかさどるダムに最新の技術を採り入れることによって、望ましい貯水量を維持したり、保守要員の確保といった業務を効率化したりできる。すなわち、国民に安定的に水を供給するためのインフラを構築するイメージだ。

 もちろん水の活用法の方が派手な話かもしれないが、水の供給を安定化する意味は大きい。ダムを再構築して、いきなり水道の蛇口からおいしいカフェオレが出てくることを期待されても困る。

 われわれがまずNGNを考える時に重要なのは、NGNの目的には老朽化した設備の改修によるコスト削減への要請が背景にある点を理解する必要がある。加えて、音声を中心とした基幹通信機器をIP化によって、データ中心の通信インフラへ再構築するものである点も頭に入れておきたい。

古い音声機器はこんなにある

 ここを見失うとNGNに過度な期待をかけてしまい、NGNの今後の発展に支障をきたす恐れがある。さらにNGNは通信インフラの再構築であり、まずは冷静に基幹系のIP化がNGNなんだというイメージを持っていただければ幸いだ。この知識を持っていれば、NTTのニュースリリースの内容も納得できるはずだ。

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